相続財産として売れない土地を相続する際に考えるべきことをチェック
ざっくりポイント
  • 売れない土地を相続したら考えなければならないこと
  • 売れない土地を相続した場合の対策
目次

【Cross Talk】バブルの頃に買った山奥の土地の相続ってどうすれば良い?

先日父が亡くなり、母・兄・私で相続をすることになりました。父はバブルの頃に考えもなく不動産を購入していて、誰も使わないような山奥の土地を購入していました。バブルが崩壊し買い手がつかなくなってそのままになっていたのですが、相続の話し合いで私はこの土地を相続することになりそうなんです。

山奥の土地ともなると形式上は資産ではあっても、利用もできなければ固定資産税や管理が大変そうですね。かかるコストなどの話をしながら再考してもらうのが良いと思います。

詳しく相談させてください。

絶対に買い手がつかなさそうな、売れない土地を相続するときに何を考えれば良い?

住宅に適した土地は売却できることが多いですが、逆に山の中にあるような土地は売却できないことも少なくありませんこのような差があるにもかかわらず不動産を相続するという意味では同じであり、使いやすい土地も売れない土地も同じ資産として扱われます。 相続の話し合いをする際、相続人の一人に売れない土地だけを渡すような提案をすると、本件の相談者のようにトラブルになることもあります。どのようなことを考えて相続手続きをすすめると良いのでしょうか?

売れる土地・売れない土地

知っておきたい相続問題のポイント
  • 売れる土地とは
  • 売れない土地とは
  • 売れない土地の特徴

そもそも、どんな土地が売れるのでしょうか?逆に売れない土地の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。

売れる土地・売れない土地の特徴を確認しましょう。

どのような土地が売れるのか、逆に売れない土地にはどのような特徴があるのでしょうか。

売れる土地とは?

そもそも、土地の売買は需要に基づいて行われます。 住宅に適した土地、商業や工業に適した土地のように、何らかの需要がある土地については、売却活動を行えば買い手がつきます。

売れない土地とは?

逆に売れない土地とは、購入を希望している人の需要がないような土地です。 次のような特徴があります。

立地が悪い

立地が悪い土地は売れにくいです。 まず、交通の便が悪い場所にあるような場合、水道・電気・ガス等のインフラを整えることが難しい場合です。 また、周囲よりも低い土地は水はけや日当たりの問題、周囲の治安が悪かったり近くに墓地や風俗店があったりすると生活環境の問題が懸念されます。

法律上の制限がある

法律上の制限がある土地は売れにくいです。 例えば、建築基準法上の道路に設置していない土地は、建物を建てることができません。 また、農地法上の農地に関しては、農業以外の使用には一定の制限があります。 このような、法律上使用に制限のある土地は、売れにくいでしょう。

土地の形状がよくない

土地の形状が良くないような場合には売れにくいです。 例えば、細長い土地、三角形などの不整形地、傾斜地などは、用途が限られてしまうことになり、なかなか売れないことがあります。

土地の地盤に問題がある

土地の地盤に問題があり、自然災害が発生するような場合も売れにくいです。 盛土や埋立地のような場合はもちろん、最近では近くで森林伐採が行われて太陽光パネルが設置されることで地盤が緩みやすくなることもあります。

境界の確定がされていない

土地の境界が確定されていないような場合にも売れにくいです。 土地の境界が確定していない場合、隣人と土地の使用などについてトラブルとなる可能性があるからです。

生産緑地に注意

生産緑地であるような場合、売却が難しくなるため注意が必要です。 生産緑地とは、市街化区域内で生産緑地として指定された農地のことで、30年間農地・緑地として維持すると税制優遇を受けられる制度です。 生産緑地としての指定を受けると、相続税・贈与税の納税猶予や、固定資産税の軽減などのメリットがあります。一方、生産緑地法に基づく制限を受けるため、売却には条件があったり複雑な手続きが必要となります。

売れない土地を寄付することは可能か?

土地は不動産で、不動産を寄付、つまり贈与すること自体は可能です。しかし、寄付を受ける者としては、売れない用途のない土地をもらっても仕方がありません。そのため、寄付をしようとしても断られる可能性が非常に大きいでしょう。 被相続人や相続人が贈与をしようとしても、贈与契約は当事者の合意が必要で、相手方がこれを拒否すれば贈与契約は成立しません。 また、誰かに遺贈する場合も、特定の不動産の遺贈は、相手方は放棄をすることができます。 法律上も様々な形で断ることが可能となっており、相手方が土地を受け取ってくれる可能性は期待できないでしょう。

売れない土地の相続で考えるべきこと

知っておきたい相続問題のポイント
  • 売れない土地を相続する場合に何が不利益なのか

一見資産を均等に分けているように見えているのですが、やはり不平等だと思うんです。なので、他の相続人に「どう不平等なのか」ということを説明したいのですが…。

金のような利用ができないことと、管理コストがかかることを中心に考えてみましょう。

買い手がつかないような好まれない土地や、空き家になる実家や親族の誰かが使っているといった事情から売れない土地があるような場合には、相続ではどのようなことを考えておかなければならないでしょうか。

固定資産税や管理について

不動産は持っているだけでお金がかかる資産です。 不動産の所有者には固定資産税が課されることになっています。 固定資産税は、固定資産税評価額に対して自治体が定めた税率(おおむね1.4%)をかけて端数調整を行った金額が課されます。 例えば固定資産評価額が3,000万円の土地の場合、年間42万円がかかることになります。 山奥で売れないような土地の場合、負担額が高額になることは少ないですが、不動産を相続する人は上記のような負担を強いられることになります。 また、不動産は所有者が管理をしなければなりません。 空き家や投資物件の場合には、周囲に迷惑をかけないようにする、第三者が使えるようにするなどの維持・管理の費用が必要です。 空き家を管理しないで放置していると、建物が崩れて他人に損害を与えてしまい、損害賠償責任を負う可能性もあります。 また、山奥の土地を相続した場合でも、ゴミを不法投棄されると、所有者が撤去費用を負担することにもなりかねません。

相続手続を放置するとどうなるか

では使えない土地があるからといって、相続の手続きを放置しておくとどうなるのでしょうか。 被相続人が亡くなった時から、そのような土地も含め相続財産については、法律上は相続分に応じた共有財産となります。 相続人が誰も欲しがっていない土地といっても、土地に関する責任は相続分に応じて発生します。 すなわち、登記をしなくても相続人は固定資産税を支払う義務がありますし、土地の管理に関する費用も同様に支払う義務があります。 相続を放置することは得策ではないといえるでしょう。

土地の崩落の危険

土地が斜面・崖であるような場合、適正な管理のために費用を費やすことになります。 適正な管理を怠ると、崩落を招いて他人に損害を与えたような場合には、損害賠償責任を負わなければなりません。

建物の老朽化

売れない不動産が古い建物である場合、建物の老朽化が問題になります。 老朽化が原因で損害を与えた場合には、上述した民法上の損害賠償責任を負いますし、老朽化すればするほど管理コストがかかり、さらに売却が難しくなります。

近隣住民に迷惑をかけて苦情がくる

不法投棄で悪臭を放っていたり、不法侵入のトラブルなどがあると、近隣に迷惑をかけることがあります。 そのような場合は近隣住民から苦情がきて、早急な対策を求められることがあります。

価格が下落してしまう

売れない土地がある場所でも、例えば新しく道路ができるなどで価格が上昇する可能性もあります。 他方、利便性が低下するような事情が生じた場合には、価格がどんどん下落してしまうおそれがあります。 このように考えると、価値が同じだからといって、現金を相続することと不動産を相続することは、同様に捉えることはできないといえます。

売れない土地の相続についての対策

知っておきたい相続問題のポイント
  • 売れない土地を相続した場合の対策
  • 売れない土地を遺贈された受遺者の対策

遺産に売れない土地があるような場合にはどうしたら良いでしょうか。

対策について確認しましょう。

では実際に売れない土地があるような場合の対策について見てみましょう。

売れない土地だけ相続放棄する…ということはできない

「売れない土地だけを相続放棄して、残りの財産を相続すればいいのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、制度上、そのようなことはできません。 相続放棄は、相続放棄の申立てをした人を、相続時に遡って相続人ではなかったものとして取り扱う制度です。 そのため、特定の不動産だけを相続して、特定の不動産だけを放棄することは認められません。

相続した場合の手続き

相続をした場合には、次のような手続きが必要です。 まず、遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成します。 遺産分割の話し合いで、不動産を単独で相続する場合には、上述したような実質的な不公平がないかをきちんと検討しましょう。 不公平といえるような場合では、将来の不動産管理コスト等を考慮して、現金をほかの相続人よりも多くもらうことができないか、といった話し合いをした方が良いでしょう。 仮に、不動産を共有する場合には、固定資産税の納付書を管理するための代表者の届出を市区町村に行い、共同で不動産の管理コスト等を負担することになります。

空き家になっているようなものがある場合には行政のサポートを受けることも

相続した不動産が空き家である場合、地方自治体によっては、空き家の売却・賃貸をサポートしてくれることがありますので、地方自地体に相談するのも良いでしょう。

遺贈をされて困っているような場合には遺贈の放棄も検討する

遺贈によって不動産を受け継ぐような場合もあります。 遺贈には、土地を指定して遺贈を行う特定遺贈というものと、遺産に対する割合で遺贈を行う包括遺贈というものがあります。 包括遺贈については、相続放棄と同じく原則3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをする必要があるので、売れない土地や使わない土地を包括遺贈で相続することになりそうな場合には,早めに手続きを行うようにしましょう。 なお、特定遺贈の場合には、遺贈を承認しない限り、いつでも放棄することができます。 5)相続土地国家帰属制度の利用 相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を国に譲渡して手放すことができる制度で、令和5年4月27日から開始した新しい制度です。 法務大臣に対して申請を行って承認をもらえれば、国に所有権を移すことが可能です。 しかし、下記に該当する場合には申請ができません(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律2条3項)。
  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 土壌汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
また、申請をしても次のような土地は法務大臣による承認を受けることができない場合があります(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律5条1項)。
  • 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  • 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
  • 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  • その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
以上のような土地に該当しない、いらない土地がある場合には相続土地国庫帰属制度の利用を検討しましょう。

まとめ

このページでは、売れない土地を相続する場合についてお伝えしました。 形式的には財産でも、所有していることでリスクを負うこともあるのが不動産です。 不動産を含む遺産分割協議がうまくいかないような場合には、弁護士に相談するのも良いでしょう。

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この記事の監修者

弁護士 西村 夏奈第一東京弁護士会
依頼者・関係者の皆様との対話を大切にし、日々研鑽を重ね、経験から得た知恵も活かして、最善の結果に向け奔走いたします。
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