1.死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、自分の死後に発生する事務について委任をする契約のことをいいます。

人が亡くなると、相続の他に役所への届出など様々な事務処理が発生します。

人が亡くなって精神的負担が大きいところに、煩雑な手続きが必要となる負担もかかるため、死後事務委任契約を結び、手続きを行ってもらうことで、相続人を手続きの負担から解放することができます。

遺言執行との違い

死後に手続きを行ってもらう制度として、遺言執行というものがあります。

遺言執行は、遺言がある場合に、その遺言の内容を実現してもらうものです。


遺言の中で遺言執行者を指定しておくことで、その人が遺言に書かれている内容についての事務を行ってくれます。たとえば、不動産を長男Aに遺贈する内容の遺言を残しておき、遺言執行者を指定しておいた場合、遺言執行者は不動産の登記をAに変更する登記を行って、引き渡しのための事務を行ってくれます。


死後事務委任契約との違いは、遺言執行はあくまで遺言の内容を実現するためにあるので、遺言で効力を生じない事項については関わることができません。たとえば、葬儀についての希望がある場合で、遺言に葬儀についての記載をしても効力は生じないため、遺言執行者が葬儀について関与する権限がありません。


遺言で効力が生じないことについて、死後にお願いしたい場合には、死後事務委任契約を別途定めておくことになります。

後見人制度との違い

判断能力が不十分となった場合に本人の事務を行うなどのためにつける、後見人制度(成年後見制度)というものがあります。

これは、加齢・認知症などを原因として、正常な判断能力がなくなって、民法が規定する意思能力が無く契約ができなくなった場合などに、本人のために療養看護・財産管理を行う成年後見人を選任するものです。


死後事務委任契約と後見人制度の違いは、死後事務委任契約は死後についての事務を執り行うもので、後見人制度は生きているうちの事務処理と亡くなったあとの引き継ぎのための権限のみに限られる点にあります。


種類 効力が発生する時期 効力の範囲 手続き
死後事務委任契約 死後 契約により 契約により
遺言執行 死後 遺言の内容を実現する範囲 遺言による
後見人制度 生前 後見制度で定める範囲 家庭裁判所の審判による

2.死後事務委任契約のメリット・デメリットとは

死後事務委任契約をするメリット・デメリットには次のようなものが挙げられます

死後事務委任契約のメリット

死死後事務委任契約のメリットとしては、

●死後の事務処理に希望を反映することができる

●死後に親族が手続きの煩雑さから逃れられる

●身寄りがない場合に死後の整理をしてもらえる

といった点が挙げられます。

死後事務委任契約のデメリット

死後事務委任契約のデメリットとしては、

●専門家に依頼をすると費用がかかる

●書面を作成しないと依頼をしても事務を行えない

●解除を巡って委任者・遺族とトラブルになることがある

などがあります。

3.死後事務委任契約をお勧めする場合

死後事務委任契約をお勧めする場合には次のようなものがあります。

家族、親族に負担をかけたくない

死後には相続や行政手続きなど、非常に多岐にわたる手続きが発生します。

家族・親族は悲しみの中これらの事務作業をする必要があり、非常に負担が大きいです。

死後の手続きを依頼しておくと、家族・親族はこれらの作業から免れることが可能です。


特に、手続きを行う方が遠方にお住まいで手続きを行うために滞在するのに費用がかかってしまう場合や、資産や各種契約内容が多く手続きが多いような場合には、負担を軽くするためにも死後事務委任契約の利用をお勧めします。

家族、親族が高齢

配偶者・子や相続人などみんなが高齢であるという場合も珍しくありません。

手続きにあたっては、戸籍を取寄せたり、あちこちの役所を回ったりするので、高齢の方では難しい場合もあります。

また、デジタル遺産に代表されるように、パソコンやスマートフォン、SNSに関する知識がないと対応できないものもあります。

これらの場合には、死後事務委任契約を利用することをお勧めします。

身寄りがいない

身寄りがいない場合は自分の死後に手続きを行ってくれる人がいません。

火葬については公衆衛生の観点から行政が行ってくれますが、その他のことについては特に規定がなく、住んでいる場所の大家さんなどに迷惑をかけてしまうこともあります。

遺言で財産の分配については手配ができても、それ以外のことについては誰も手が出せない状態です。

身寄りがないような場合には、死後事務委任契約を利用することをお勧めします。

葬儀や埋葬方法の希望を叶えたい

遺言では葬儀や埋葬方法について記載をしても、遺言事項ではないことから法的効力が生じません。

同様にエンディングノートには法的効力がないので、葬儀や埋葬方法について記載をしても、法的な効力は生じません。

死後事務委任契約であれば、受任者は委任契約の内容として、本人が指定した葬儀や埋葬方法を執り行う法的義務が発生します。

音楽葬・特定の宗教の方式での葬儀・樹木葬・海洋散骨など、葬儀・埋葬方法に希望がある場合には死後事務委任を利用すると良いでしょう。

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死後事務委任に関するよくある質問

死後に発生する事務手続きを任せておけるので、独身の高齢者、子がおらず配偶者がお互いに高齢である方、子供が独立しており遠方で手続きが難しい方、などに向いています。
また、ご自身の用意した費用で、希望の方法でお手続きを行うため、相続人へ負担をかけたくない方にも向いております。
成年後見人の業務は本人が存命中のもので、本人が亡くなった後は相続人に引き継いで裁判所に報告する権限しかありません。この権限では死後事務の委任はできないので、別契約として死後事務委任契約を結ぶ必要があります。
死後事務委任契約は、当事者間で契約をする必要があります。そのため、本人が意思表示できる間に行う必要があります。
死後事務委任契約自体は死後に効力を発揮します。財産管理や認知症等の不安がある場合には任意後見契約も同時に結んでおきましょう。
身寄りの無い方について公衆衛生の観点から火葬のみが可能となっています。建物の退去のための費用や遺品整理などは含まれません。

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