
- 遺言によって相続分の指定ができる
- 遺言の内容に納得できない場合には、相続人全員の合意で遺言書の内容と異なる遺産分割協議をすることも可能
- 遺言執行者がいる場合には手続きが異なるので注意
【Cross Talk】遺言書がある場合に絶対にその通りにしないとダメなのか?
先日父が亡くなり、遺言書が見つかったのですが、遺産分割の内容を指定したもので、実はその内容に、相続人一同が納得できないのです。相続人全員が納得しているならば、遺言書の存在をなかったことにできませんか?
相続人全員が同意しているのであれば、遺言に反する遺産分割ができる場合もあります。
遺言者は、遺言において、相続分の指定をすることができます。 ただ、その相続分の指定が相続人全員の意に反する場合に、相続人が合意をしていても遺言書の内容を実現しなければならないとするのは、極めて不合理です。そのため、相続人全員が納得しているなどの要件を満たす場合には、遺言の内容とは異なる遺産分割も認められることになっています。 このページでは、遺言の内容に反する遺産分割についてお伝えします。
遺言が無効であるというためには

- 遺言が無効であるというためには
そもそも、今回の遺言は無効ではないか?という争い方はできませんか?
遺言が無効と評価される場合を知っておいてください。
遺言が無効であるという主張をするのは、どのような場合が想定されるでしょうか。
ほとんどのケースで遺言は書面でされることになる
まず、遺言というと、「遺言書」という形で、例えば家の奥から見つかる、被相続人の死後に弁護士を名乗る人が持ってくる、といったイメージがあると思いますが、遺言は意思表示の一種であり、その方法は民法の定める方法によらなければなりません。
そして、民法の規定の中には、書面にすることを要しないものもありますが、実際にはほとんどのケースで、書面によって作成されます。 特に実務上、公正証書遺言・自筆証書遺言のどちらかでされることがほとんどですので、これらの有効要件を満たしていないものは、無効になるといえます。
たとえば、遺言者が自署することが要件である自筆証書遺言において、一部をワープロで書いた、誰かと共同で遺言を作成した、など、民法の定める要件を備えているかどうか確認すべきです。
遺言をするための能力
遺言は意思表示なので、それを行うためには意思能力が必要です。 ここにいう意思能力とは、遺言をすることによってどのような効果が生じるかを判断する能力のことを指し、一般的には、おおむね12~13歳程度の者が有する判断能力であると考えられています。 そのため、認知症が進行しているなどで、遺言書を作成した時点でとても遺言をかける状態ではなかったと判断されるような場合には、遺言は無効と評価されます。遺言の無効を主張するための方法
遺言の無効はどのように主張すべきでしょうか。 まずは、相続人や、遺言の内容に利害関係を有する当事者と、遺言の有効性について話し合うことになります。 この話し合いに関しては、特に手続きに関する規定はありませんので、任意の方法で話し合います。
遺言書には必ず作成した日付が記載されていますので、その時点で遺言者が認知症を患っており、正常な判断ができる状態になかった事を示すために、医師の診断書を得るなどします。 遺言の内容に利害関係を有する当事者の誰かが、遺言のが無効であることを認めないような場合には、裁判所に遺言無効確認の訴えを提起して、裁判所に遺言が無効であることを確認する旨の判決を出してもらいます。
遺言書が有効だった場合の遺言と異なる遺産分割協議

- 遺言書が有効である場合のその内容と異なる遺産分割協議の可否
そもそも遺言がある場合に、その内容に反する遺産分割協議をすることはできるのでしょうか。
遺言で禁じていない、相続人が全員同意しているという事情があれば、可能である場合があります。
そもそも遺言がある場合に、その内容に反する遺産分割協議ができるのでしょうか。 以下の3つのケースに分けて考えてみましょう。
遺言執行者が選任されていない場合
遺言は、被相続人の最後の意思表示であり、基本的には尊重されるべきなのですが、その内容次第で相続人が逆に困ってしまうという事も有り得ます。 そのため、民法は第907条で、遺言で禁止をしていない限り、遺言があっても協議で遺産分割をすることができるとしています。
したがって、遺言で禁止をしていない、相続人全員が同意をしている、といった場合には、遺言の内容に反する遺産分割協議をすることができます。
遺言執行者が選任されている場合
遺言をする人の中には、相続財産が多岐にわたる方もいらっしゃいます。 相続財産が多岐にわたる場合には、死後に遺言に関する事務を行う「遺言執行者」を選任することがあります。 遺言執行者がついた場合には、遺言執行者の業務執行を相続人が妨げることはできないとされていますので(民法第1013条)、遺言執行者の同意がなければ、遺言の内容と異なる遺産分割はできません。遺贈がある場合
相続人以外の第三者に対して遺産を譲渡する旨の遺言をすることを、遺贈といいます。 遺贈には、特定の財産(不動産・自動車など)を指定して遺贈をする場合と(特定遺贈)、割合を指定して遺贈する方法(包括遺贈)があり、包括遺贈がされている場合には、受遺者も同意しなければ遺産分割をすることができません。まとめ
このページでは、遺言がある場合に、遺言書の内容に反した遺産分割協議ができるかどうかについてお伝えしてきました。 基本的には「関係者が全員同意していればできる」と考えていただいた上で、遺言の内容で遺言執行者が指定されている場合・遺贈がされている場合に、同意を得る対象が異なってくると考えておけばよいでしょう。

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