預貯金の引き出しと相続との関係について詳しく解説します!
ざっくりポイント
  • 預貯金も遺産分割の対象になった
  • 銀行等に死亡の届出をすると口座が凍結される
  • 引き出した金銭を自分のために使うと犯罪に当たる
  • 遺産分割前に預貯金の払い戻しを受けられる制度ができた
目次

【Cross Talk】預貯金の相続はどんなことに気を付ければいい?

親が高齢になり一人で銀行に行くことが難しくなったので、私が親の預貯金を管理しています。ほかに兄弟もいるので、あとで相続でもめないようにしたいのですが、何か気を付けなければいけないことはありますか?

たしかに、死亡前に引き出したお金の使途によっては、相続で争いになってしまう可能性がありますね。 また、預貯金の相続については、最近になって最高裁が判例を変更したり、それを受けて民法が改正されたりしており、過去に相続を経験した方であっても、その際の知識が通用しなくなっているので注意が必要です。

そうなんですか。詳しく教えてください!

預貯金の相続で死亡前と死亡後の引き出しでは何が違う?

高齢の親に代わって子が親の預貯金を管理することは、珍しいことではありません。 親が亡くなって相続が開始すると、亡くなった後に預貯金を引き出すことができるか、預貯金を相続人間でどのように分けるかが問題になりますし、使途によっては生前に引き出したお金が問題になる可能性もあります。 そこで今回は、預貯金の相続について、死亡前、死亡後の引き出しを含めて解説します。

死亡した方の預貯金は相続財産になる?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 預貯金も相続財産
  • 預貯金も遺産分割の対象になった

預貯金をしていた人が亡くなったら、預貯金はどのような扱いになるのですか?

預貯金も亡くなった方の財産ですから、相続財産に含まれます。 以前は、預貯金は相続によって当然に分割されるとされていましたが、最高裁の判例が変更されたことで、預貯金も遺産分割の対象になりました。したがって、不動産など他の財産とあわせて、相続人間でどのように分割するかの協議をすることになります。

相続財産になる

相続によって相続人に承継される財産を、「相続財産」といいます。 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされているので(民法896条本文)、原則として被相続人の一切の権利義務が相続財産になります。 したがって、預貯金も相続財産に含まれます。

遺産分割対象財産になる

「相続財産になる」で解説したとおり、預貯金(正確に言えば、預貯金者の銀行に対する金銭債権)は相続財産に含まれます。

ただし、金銭債権のような可分債権(分けることのできる債権)は、相続開始によって法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものとされています(最判昭和29・4・8民集8・4・819)。当然に分割されるということは、可分債権については遺産分割協議の対象にならないということです。

かつては預貯金債権もこの原則に従い、法律上は各共同相続人が自己の相続分について単独で権利行使できるとされていました。 しかし、最近になって最高裁は次のように判例を変更し、共同相続された預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるとの判断を示しました(最決平成28・12・19民集70・8・2121)。 したがって、可分債権であっても預貯金債権は例外的に当然には分割されず、遺産分割の対象となりました。

ただし、この決定は預貯金債権の性質等を検討したうえで預貯金債権については遺産分割の対象になると判断したものであり、他の可分債権(たとえば貸金債権)についての従前の判断まで変更したものではありません。

死亡するとその人の預貯金口座は凍結される

知っておきたい相続問題のポイント
  • 預貯金者が死亡すると預貯金口座は凍結される
  • 凍結されるタイミングは金融機関に死亡の連絡をしたとき

親が亡くなると親名義の預貯金が引き出せなくなると聞いたのですが、本当ですか?葬儀代などが引き出せなくなると困るのですが…

金融機関は名義人が死亡したことを知れば口座を凍結しますので、以後は預貯金の引き出しができなくなります。口座が凍結されるのは、一般的には遺族が金融機関に名義人の届出をしたときでしょう。

預貯金口座の名義人が死亡したことを知った金融機関は、その預貯金口座を凍結してしまいます。そのため、以後はその預貯金を引き出すことはできなくなります。 これは、名義人の死亡後に相続人等が預貯金を引き出すと、後日、他の相続人との間でトラブルになったり、金融機関がそのトラブルに巻き込まれたりする可能性があるためです。

ただし、金融機関は独自に名義人が生存しているか死亡したかを調べるわけではありません。また、役所に死亡届を出したとしても、役所が金融機関に通知するというような制度もありません。 ですから、金融機関が名義人の死亡を知るのは、一般的には遺族が金融機関に名義人が亡くなったことを連絡したときであり、そのタイミングで口座が凍結されることになります。

預貯金が死亡前に引き出されていた場合について

知っておきたい相続問題のポイント
  • 亡くなった方のために使った場合は相続財産にならない
  • 財産管理をしていた人のために使った場合、その人に対する不当利得返還請求権・不法行為に基づく損害賠償請求権が相続財産になる

長年親の預貯金を管理していたのですが、その親が亡くなった後、兄弟たちから私が引き出した預貯金について、何に使ったのか等としつこく聞かれます。 中には引き出したお金も含めて遺産分割をしろという者までいて、困っています。 私が引き出したお金はどのような扱いになるのですか?

亡くなった方のために使ったか、自分のために使ってしまったかによって、大きく結論が変わってしまいますね。 引き出したお金を亡くなった方のために使った場合は、基本的に相続の対象になりません。 しかし、自分のために使ってしまった場合、亡くなった方はその返還または賠償を請求することができ、その権利は相続によって相続人に引き継がれることになります。

財産を管理していた者が死亡した方のために使った場合

財産を管理していた者が預貯金を引き出し、亡くなった方のために使った場合(たとえば病院代や施設代などに充てた場合)、相続人の預貯金で相続人の債務を弁済したことになります。したがって、引き出した預貯金は相続財産にはなりません。

また、引き出した預貯金が現金から違う物に代わっていた場合(相続人名義で宝石や不動産、日用品等を購入していた場合など)、その代わった物が相続財産になります。

引き出した者が自己のために使った場合

財産の管理を任されていたとしても、あくまで亡くなった方のためにその方の財産を管理することが認められていたわけですから、亡くなった方の財産を自分のために使うことはできません。 もし財産の管理を任していた人が亡くなった方の預貯金を引き出し、自分のために使っていたとすれば、窃盗や横領などの犯罪に該当します。

この場合、財産の管理をしていた人が正当な理由なく亡くなった方の財産から利益を得て、亡くなった方が損失を被ることになるので、亡くなった方は財産の管理をしていた人に対し、不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。

これらの金銭債権も、被相続人の一切の権利義務に含まれますから、相続財産になります(可分債権ですから、相続開始によって相続分にしたがって各共同相続人に当然に分割されることになります)。

生前に引き出した財産を死亡した方が贈与していた場合

財産を管理していた人が、生前に引き出した預貯金を亡くなった方から贈与を受けることがあります。

ただ、このような場合、通常、財産を管理している方と亡くなった方との間には親子など親族関係があるので贈与契約書などが作られないことも多く、また、財産の管理を任せるのは亡くなった方が心身のいずれかあるいは双方に問題を抱えていることが多いことから、亡くなった方の真意に基づく贈与かが争いになることが少なくありません。

仮に亡くなった方の真意に基づく贈与であったとしても、相続財産の額及び贈与の額によっては、相続人の遺留分を侵害する可能性があります。 遺留分とは、贈与・遺贈があったとしても相続人が最小限得られる利益のことを言います。 贈与を受けた額が亡くなった方の財産の大半であった場合などは、その贈与は相続人の遺留分を侵害することになります。 そのため、相続開始後、相続人から遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。

死亡後に預貯金を引き出す方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割前に預貯金を引き出せる制度がある
  • 遺産分割協議成立後は遺産分割協議書等で預貯金の引き出しができる

預貯金口座が凍結され、預貯金も遺産分割の対象になると、遺産分割が終わるまで預貯金を引き出せないということですか?入所していた施設への支払や葬儀代は相続人が立て替えるしかないのでしょうか?

今おっしゃったような需要にこたえるため、法改正によって、遺産分割が終わる前に預貯金を引き出せる制度が2種類設けられました。それぞれ要件や引き出せる範囲が異なりますので、要点をご説明しましょう。

一定額の預貯金払戻し制度

最高裁の判例変更によって、預貯金債権も遺産分割の対象となり、遺産分割前に相続人が単独で権利行使することはできなくなりました。 しかし、被相続人の生前の病院代や施設代、あるいは葬儀費用などを被相続人の預貯金で支払いたいと考える相続人は少なくありません。 そこで、一定の要件のもとで遺産分割前に一定の範囲の預貯金を引き出せる制度が新たに作られました。

まず、民法の改正によって新たに認められたのが、「遺産の分割前における預貯金債権の行使」です(民法909条の2)。 これによって各共同相続人は、預貯金債権の債権額の3分の1に相続分をかけた額については、単独で権利を行使することができることになりました。 たとえば、預貯金の額が750万円であり、Aという相続人の相続分が2分の1であった場合、Aは750万円の3分の1にあたる250万円に自身の相続分である2分の1をかけた125万円について、単独で権利行使することができます。

ただし、この権利行使は、債務者ごとに法務省令で定められた上限(現在は150万円)までしか認められません。ですから、上の例で預貯金の額が1500万円であった場合、Aの権利行使が認められるのは、その3分の1にAの相続分2分の1をかけた300万円ではなく、上限である150万円までということになります。

次に、家事事件手続法の改正によって、遺産分割前の預貯金債権の仮分割仮処分の制度が新設されました(家事事件手続法200条3項)。 この仮処分は、

・遺産分割の審判または調停の申立てがあった場合において、 ・相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときに、 ・他の共同相続人の利益を害しない限り、

預貯金債権の全部または一部を仮に取得させるというものです。 民法に定められた預貯金債権の行使と比較すると、

・裁判所の関与が必要である(審判または調停の申立てをしたうえで仮分割仮処分の申立てをし、裁判所の判断を仰ぐことになる)のに対し、民法上の預貯金債権行使は裁判外で(裁判所の関与なしで)単独で行使可能である(したがって、迅速に預貯金を引き出せる) ・預貯金債権行使の必要性が要件とされるのに対し、民法上の預貯金債権行使は必要性が要件とされていない ・事案によっては預貯金債権の全部を取得することも可能であるのに対し、民法上の預貯金債権行使には上限がある
などの違いがあります。

このような両者の違いからすると、相続財産である預貯金を引き出したい場合、まず民法上の預貯金債権の行使によって迅速に預貯金を引き出すことを検討し、それでも不足する事情がある場合には預貯金債権の仮分割の仮処分を利用するというのが一般的ではないかと考えられます。

遺産分割協議等に則った預貯金の引き出し方法

遺産分割協議等が成立した場合、おおむね次のような必要書類を金融機関に提出すれば、預貯金を引き出すことができます。
・遺産分割協議書(相続人全員の署名、押印のあるもの) ・被相続人の除籍謄本等(出生から死亡まで) ・相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書

これらの書類によって、被相続人が死亡した、相続人の範囲および相続人全員の協議によって預貯金の分割方法が明らかになるので、預貯金を引き出すことができるのです。

なお、相続人間の協議ではなく、家庭裁判所の調停または審判で遺産の分割方法を決めた場合、遺産分割協議書の代わりに家庭裁判所が作成する調停調書や審判書(及び確定証明書)を提出することになります。 この場合、被相続人の死亡の事実や相続人の範囲などは、調停または審判の手続において家庭裁判所がチェックしていますので、改めて金融機関から被相続人の除籍謄本や相続人全員の戸籍謄本を要求されることはないようです。

まとめ

預貯金の相続について解説しました。判例変更や法改正が多いので、過去に相続を経験したことがあるという方も、よく確認しておいてください。 預貯金の相続について何か不安があるという方には、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

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この記事の監修者

弁護士 水本 佑冬第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 消費者委員会幹事
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