相続時精算課税制度とはどのような制度か。
ざっくりポイント
  • 相続時精算課税制度の仕組み
  • 相続時精算課税制度の利用要件
  • 相続時精算課税制度のメリット・デメリット
  • 相続時精算課税制度の手続
目次

【Cross Talk】相続時精算課税制度って、どんな制度?

起業した孫のために金銭面で支援してあげたいと思っているのですが、この場合、孫は贈与税を納付しなければならないのでしょうか。

はい、金額によっては贈与税を納付する必要があります。

起業したばかりなので、少しでも負担を軽くしてあげたいと思っているのですが…。

それでしたら、相続時精算課税制度を利用してみてはいかがでしょうか。

暦年贈与との違いなどを理解し、相続時精算課税制度をうまく活用しよう!

生前贈与により一定の価値のある財産を譲り受ける場合、原則として、贈与税が課税されることになります。贈与税の金額は、贈与される財産の価値が上がれば上がるほど、高額になります。 このような場合に、税金の支払いを先送りにできる制度があるのをご存知でしょうか。それが「相続時精算課税制度」という制度です。 この記事では、相続時精算課税制度について、その仕組みや暦年贈与との違いなどを解説していきます。

相続時精算課税制度とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続時精算課税制度の仕組み
  • 相続時精算課税制度と暦年贈与の違い

相続時精算課税制度とは、どのような制度なのでしょうか。

具体例を使って、ご説明しますね。

相続時精算課税制度とは、簡単にいうと、税金の支払いを先延ばしにできる制度です。 以下で詳しく見ていきましょう。

相続時精算課税制度とはなにか

「相続時精算課税制度」とは、祖父母や父母から孫や子どもに財産を贈与する場合に、累積で2,500万円までの贈与価額については、贈与税を非課税とし、贈与した方が亡くなった際の相続税の課税価格の計算にあたり、同制度により生前に贈与された財産を加算して相続税を課税する制度です。すなわち、相続時精算課税制度は、本来贈与時に納めるべき贈与税の支払いを相続発生時にまで先延ばしにできる制度であるということがいえます。

相続時精算課税制度を利用した場合の具体例

例えば、父(60歳以上)が、起業する子ども(成人)に事業資金として2,000万円を支援(贈与)したケースについて考えてみましょう。この場合、相続時精算課税制度を利用すると、贈与時に課税されることなく、2,000万円を子どもに贈与することが可能になります。 なお、特定の贈与者からの贈与についていったん相続時精算課税制度を利用すると、同人からのその後の贈与についても、全て同制度を利用した贈与という扱いになります。 そのため、後に父が子どもに追加で300万円を贈与した場合であっても、この300万円は相続時精算課税制度を利用した贈与ということになります。

このケースにおいて、父が子どもに贈与した金額は合計で2,000万円+300万円=2,300万円です。贈与の金額が累積で2,500万円を超えていないため、贈与税が課税されることはありません。その分、父について相続が発生した時に、遺産に贈与額の合計(2,300万円)が加算されて、相続税が課税されることになります。

相続時精算課税制度と暦年贈与の違い

「暦年贈与」とは、1月1日~12月31日における贈与に対して課税する制度です。 具体的には、1月1日~12月31日における贈与額の合計から110万円を控除した贈与額に対して贈与税を算出し、課税するものです。そのため、年間の贈与額が110万円を下回る場合には、贈与税はかかりません。相続時精算課税制度を利用しない場合は、暦年贈与により贈与税を算出することになります。

相続時精算課税制度と暦年贈与には、主に3つの違いがあります。 1つ目として、利用条件が挙げられます。相続時精算課税制度は、その年の1月1日時点で贈与者が60歳以上の親・祖父母であり、その年の1月1日時点で受贈者が20歳以上の子であることが利用条件となっています。しかし、暦年贈与には、このような条件はなく、誰でも利用することができます。

2つ目は、非課税対象の違いです。 相続時精算課税制度では、贈与額が累積で2,500万円までは贈与税が非課税とされているのに対し、暦年贈与では、年間で110万円までの贈与にかかる贈与税が非課税となっています。

最後に、利用する制度の変更ができるかという点にも違いがあります。 相続時精算課税制度をいったん利用すると、その後、相続時精算課税制度の対象とした贈与者からの贈与を暦年贈与に変更することはできません。しかし、暦年贈与を利用した場合、その後相続時精算課税へ変更することはいつでも可能です。

相続時精算課税制度を利用するメリット

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続時精算課税制度を利用することのメリット

相続時精算課税制度を利用した方がいいのでしょうか。

利用することによるメリットを十分に理解したうえで、検討した方が良いでしょう。

相続時精算課税制度を利用すると、以下のようなメリットを受けられます。

税金の支払いを先延ばしにできる

相続時精算課税制度を利用すると、累積で2,500万円までの贈与であれば、贈与税を課税されることはありませんが、その分が相続発生時に相続税として課税されることになります。 このように、通常であれば贈与時に負担することとなる贈与税の支払いを相続発生時まで先延ばしにすることができます。

価値があがる見込みのある遺産の贈与を受けた時には節税になり得る可能性がある

相続時精算課税制度を利用すると、相続発生時に生前贈与の価額を遺産に加算して、相続税が課税されることになります。 ここでいう「生前贈与の価額」は、贈与があった当時の価額によるものとされています。 そのため、相続発生時において、贈与を受けた遺産の価値がその贈与時より増加していた場合でも、贈与時の価額が相続税の課税価格に含まれて相続税が計算されるため、相続税の節税にも繋がります。 このように、価値があがる見込みのある遺産の贈与を受けた場合には、節税に繋がる可能性があります。

相続時精算課税制度を利用するデメリット

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続時精算課税制度を利用することのデメリット

相続時精算課税制度を利用することによるデメリットはありますか。

制度を利用するかどうかを判断する際には、メリットだけでなくデメリットも十分に理解することが大切です。

相続時精算課税制度を利用する際、以下のようなデメリットがあります。

1度相続時精算課税制度を利用すると110万円の贈与税の基礎控除を利用できなくなる

いったん相続時精算課税制度を利用すると、その後同じ人からの贈与を暦年贈与に変更することはできなくなります。すなわち、贈与について年間110万円の基礎控除を受けられなくなります。

毎年贈与税の申告をする必要がある

相続時精算課税制度を利用する場合、累積2,500万円までの贈与であれば、贈与税が課税されることはありませんが、それでも毎年贈与税を申告する必要があります。

相続税の特例である小規模宅地等の特例が受けられなくなる

「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった方が自宅や店舗として使用していた宅地等を相続や遺贈により取得する場合、土地の評価額が限度面積の範囲まで最大80%減額される制度のことをいいます。 「小規模宅地等の特例」を適用するためには、対象となる土地を相続や遺贈により取得している必要があります。一方で、相続時精算課税制度を利用して対象となり得る土地を取得した場合、相続や遺贈により取得したのではなく、贈与によって取得したことになります。 したがって、相続時精算課税制度を利用する場合、この「小規模宅地等の特例」は使えなくなります。

例えば、相続時精算課税制度を利用して、父が長男に自宅の土地(時価2,000万円)を贈与したとしましょう。 この場合、小規模宅地等の特例を使うことはできませんので、父について相続が発生した時点で、贈与額である2,000万円を遺産に加算して相続税が課税されることになります。 仮に、相続時精算課税制度を利用しなければ、小規模宅地等の特例を使うことができるため、贈与対象となった土地の評価額は最大で、 2,000万円-(2,000万円×80%)=400万円まで減額されて評価されることになります。

このように、相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた土地は、小規模宅地等の特例を受けることができないため、後に支払う相続税は、贈与があった当時の価額を基準として課税されます。

基本的に税金対策になるわけではない

相続時精算課税制度は、贈与税の支払いを相続発生時に先延ばしにするだけの制度であるともいえます。 そのため、価値があがる見込みのある遺産が贈与対象となっているような場合を除き、基本的に税金対策になるわけではありません。pp

相続税が高額になる場合がある

贈与を受けた遺産の価値が、相続発生時には急落してしまうことがあります。 しかし、相続時精算課税制度では、あくまで「贈与があった当時の価額」が遺産に加算されることとされています。 そのため、相続発生時の遺産の価額とは見合わずに、相続税が高額になる可能性があります。

相続時精算課税制度を利用するための要件

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続時精算課税制度を利用する場合の贈与者の条件
  • 相続時精算課税制度を利用する場合の受贈者の条件

相続時精算課税制度は誰でも利用できますか。

いいえ。利用するためには、贈与者と受贈者の双方が一定の条件を満たしていることが必要です。

相続時精算課税制度を利用するためには、贈与者と受贈者の双方が一定の条件を満たしていることが必要になります。

贈与をする父母または祖父母が60歳以上であること

遺産を贈与する側(贈与者)は、「60歳以上の父母または祖父母」でなければなりません。 ここでいう「60歳以上」とは、贈与をした年の1月1日時点で60歳になっていることが必要です。

贈与を受ける子どもまたは孫が20歳以上であること

贈与を受ける側(受贈者)は、「20歳以上の子どもまたは孫」でなければなりません。 ここでいう「20歳以上」という条件についても、贈与者の場合と同様、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳になっていることが必要です。

贈与を受ける子どもまたは孫が相続時精算課税制度の手続をすること

相続時精算課税制度を利用する場合、贈与を受ける子どもまたは孫(受贈者)が手続きを行う必要があり、贈与者が手続きを行うことはできません。

相続時精算課税制度を利用するための手続の流れ

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続時精算課税制度の手続

相続時精算課税制度を利用する場合、どのようにして手続きを行えばよろしいのでしょうか。

必要となる書類も含め、手続についてご説明いたします。

相続時精算課税制度を利用する場合、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に『相続時精算課税選択届出書』を、贈与税の申告書に添付して、自己の住所地の所轄税務署に提出する必要があります。 また、受贈者が贈与者の推定相続人であることを証明する必要があるため、戸籍謄本や住民票(贈与者と受贈者)なども併せて提出する必要があります。

利用する価値があるケース

知っておきたい相続問題のポイント
  • 値上がりする遺産がある場合には相続時精算課税制度の利用価値がある
  • 投資用不動産のように収益性のある遺産の生前贈与には相続時精算課税制度の利用価値がある
  • 事業承継があるような場合相続時精算課税制度の利用価値がある

相続時精算課税制度はどのような場合に利用すべきでしょうか。

将来値上がりすることが確実な遺産がある場合や、投資用不動産のように収益性のある資産については相続時精算課税制度に向いているとされます。

相続時精算課税制度を利用するのが向いているのは次のような場合です。

値上がりする遺産がある場合

相続時精算課税制度をつかって贈与をする場合、贈与の対象となる資産は贈与時の金額で計算します。 そのため、後に値上がりする遺産がある場合には、相続時精算課税制度を使って贈与するのに向いています。 例えば、今1,000万円の遺産が3年後に1,500万円になるような場合には、相続時精算課税制度を使って今生前贈与をしておけば、課税のときにその資産は1,000万円の評価にすることが可能です

投資用不動産のように収益性のある遺産

投資用不動産や配当のある株式のように、収益性のある遺産がある場合には、相続時精算課税制度を利用して生前贈与をしておくことにメリットがあります。 収益性のある資産はそのまま被相続人が持っていると、被相続人の資産が増えることになり、相続発生時にはその資産および増えた分が相続税の課税の対象として計算されます。 一方で生前贈与をしてしまえば、収益部分については受贈者が獲得することになるので、被相続人の遺産は増加しません。 そのため、収益性のある遺産は相続時精算課税制度を利用しての生前贈与に向いているといえます。

事業承継をする場合

会社のオーナーなどが事業承継をする場合に、通常は110万円の基礎控除の範囲内の贈与で株式の移転をするのは難しいでしょう。 株式は会社の状態によって価値が増減します。 株式の価値が低いと判断できる場合に一気に生前贈与で後継者に贈与してしまうことが望ましいこともあります。

まとめ

相続時精算課税制度は、利用者にとってメリット・デメリットとなることがあるため、制度を利用するにあたっては、その前提としてこれらの点を理解しておくことが必要です また、贈与対象となる遺産の評価など、慎重に対応しなければならないことも少なくありません。対応を誤ると、課税される相続税が高額になってしまう可能性もあります。 相続時精算課税制度を利用すべきかどうかを含め、弁護士や税理士に相談しながら進めていくことをおすすめします。

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この記事の監修者

弁護士 城田 喜朗神奈川県弁護士会
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