生活保護受給者は、遺産相続や相続放棄をできるのか。
ざっくりポイント
  • 生活保護を受給するための条件
  • 生活保護受給者は遺産相続できるか
  • 生活保護受給者は相続放棄できるか
目次

【Cross Talk】生活保護を受給するための条件は?

リストラにあったことが原因で体調を崩し、現在無職です。働けるようになる時期の見通しもつかず、貯金も底をつき始めています。そこで、生活保護を申請しようと思うのですが、私のような者でも申請は通るのでしょうか。

生活保護を受けるためには、いくつか条件がありますので、詳しくみていきましょう。

生活保護を受給している人も無関係ではない。「相続」についてきちんと理解しよう!

「生活保護を受けているから、自分に相続は関係ない」と思っていませんか。生活保護を受けているからといって、相続権を失うわけではありません。もっとも、生活保護を受けている人が相続の局面に立つ場合には、その前提として知っておくべきことがあります。 この記事では、生活保護受給者と相続の関係について、注意点にも触れながら解説します。

生活保護受給資格要件

知っておきたい相続問題のポイント
  • 生活保護を受給するための要件

生活保護を受給するためには、どのような条件があるのでしょうか。

条件は3つあります。順にみていきましょう。

生活保護は、以下の3つの条件を満たしていないかぎり、受給することはできません。 また生活保護は、世帯を単位として支援を行う制度であるため、家族などがいる場合は家族全員が以下の条件を満たしていることが必要です。

生活に困窮する者であること

病気や怪我などにより働くことができない人は、収入を得る手段がないため生活していくことが困難です。このように、現に生活に困窮していることが一つ目の条件となります。

世帯全員が利用しうる資産・能力・その他あらゆるものを最低限度の生活の維持のために活用すること

預貯金や不動産(持ち家など)、自動車といった資産を持っているような場合には、最低限度の生活を維持するためにこれらの財産を活用しなければならないのが原則です。たとえば、自動車を持っている場合には、自動車を売却し、そこから得られた売却代金を生活費に充てるということです(なお、自動車が通院に必要である場合など、具体的な事情によっては、処分せずに保有することができる場合もあります)。

また、自分の能力を活用する必要があるので、働ける人は働いて収入を得なければなりません。当然ながら、働くことができるにもかかわらず働きたくないといった理由では生活保護を受給することはできません。 「その他あらゆるもの」には、年金や他の給付の制度も含まれるため、年金を受給している場合には、仮に働けないとしても、年金が収入とみなされるため、受給額によっては生活保護を受けられない可能性もあります。また、求職者支援などの他の制度を利用できる場合は、生活保護よりも優先してその制度を利用するように勧められる可能性もあります。

このように、最低限度の生活を維持するために活用できる資産や能力などをもってしても、なお生活に困窮する場合でないと生活保護を受給することはできません。

扶養義務者の扶養がある場合には、その扶養があっても生活に困窮すること

「扶養義務者」とは、お互いに扶養する義務を負っている人のことをいい、具体的には親や子、兄弟姉妹が扶養義務者にあたります。 扶養義務者から援助を受けられる場合には、その援助をもってしても、なお生活に困窮する場合でないと生活保護を受給することはできません。

生活保護受給者が遺産相続する場合

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産相続した場合とその後の生活保護の受給
  • 遺産相続をしたことを届け出ずに生活保護を受給し続けた場合

先月父が亡くなったのですが、生活保護を受けている私が父の遺産を相続することはできるのでしょうか。

生活保護を受けていても遺産を相続することはできます。ただし、遺産を相続することがその後の生活保護の受給にどう影響するかを知っておいた方がよいでしょう。

生活保護受給者であっても、遺産を相続することはできます。 ただ遺産を相続した場合、その後の生活保護の受給に影響することがありますので理解しておきましょう。

生活保護受給者でも遺産を相続することはできる

遺産を相続することができる権利は、相続人に認められている民法上の権利です。 このことは、相続人が生活保護受給者であっても変わりません。生活保護受給者であるか否かを問わず、相続人であれば、遺産を相続することができます。

生活保護受給者が遺産を相続したら、生活保護の受給停止または廃止になる可能性がある

生活保護受給者が遺産を相続した場合、それ以降の生活保護の受給が停止または廃止になる可能性があります。なぜなら遺産を相続することにより、生活保護を受給するための条件「2)世帯全員が利用しうる資産・能力・その他あらゆるものを、最低限度の生活の維持のために活用すること」を満たさなくなる可能性があるためです。

具体的には、遺産として自分で使わない不動産や自動車、宝飾品などを相続した場合、その相続した資産を売却するなどして、最低限度の生活を維持できるようであれば、生活保護を受給するための条件2を満たさなくなるということです。このような場合には、生活保護の受給が停止または廃止になる可能性が高いと考えられます。

しかし、相続した資産のすべてが、最低限度の生活を維持するために活用できるものとは限りません。活用できる資産であるかどうかは、資産の価値や流動性の有無などを考慮したうえで判断されるため、活用できる資産でないと判断された場合には、受給の停止または廃止になりません。

たとえば、相続した遺産が不動産であったとしても、売却できる可能性が極めて低い不動産である場合には、現金化することができません。 そのため、不動産を活用して最低限度の生活を維持することはできないということになります。 このような場合には、生活保護が受給停止または廃止になる可能性は極めて低いと考えられます。

 

遺産を相続したのに届出せず、生活保護を受給し続けた場合

生活保護受給者において、収入や支出等の変動が生じたときには、その旨を福祉事務所に届け出なければなりません。 生活受給保護者の収入等の変動が、それ以降の生活保護の給付に影響するものかどうかを福祉事務所が判断するためです。 そのため、生活保護受給者が遺産を相続した場合にも、その旨を福祉事務所に届け出る必要があります。

仮に、遺産を相続したことを届け出ずに、生活保護を受給し続けると、場合によっては不正受給にあたる可能性があります。実際、遺産を相続したことで最低限度の生活を維持できるようになったにもかかわらず、このことを届け出ずに、生活保護を受給し続けることは、不正受給にあたります。 不正受給にあたると判断された場合、不正に受給した生活保護の金額を返還しなければなりません。

生活保護受給者は相続を放棄できるか

知っておきたい相続問題のポイント
  • 「相続放棄」の意味
  • 生活保護受給者は相続放棄できるか

遺産を相続して生活保護が打ち切られるのは困るので、相続放棄をしたいと思っているのですが可能でしょうか。

原則として相続放棄をすることはできませんが、例外的にできる場合もあります。

相続が発生した際、生活保護受給者が相続を放棄することはできるのでしょうか。

相続放棄とは?

「相続放棄」とは、亡くなった人(被相続人)の財産を相続する権利を放棄することをいいます。 相続の対象となる財産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。

たとえば、被相続人が保有していた不動産や預貯金などはプラスの財産にあたり、被相続人が抱えていた借金などはマイナスの財産にあたります。相続放棄をした場合、相続放棄をした人ははじめから相続人でなかったことになるため、プラス・マイナス両方の財産を相続しないこととなります。

生活保護受給者は原則相続放棄できない

生活保護受給者は、原則として相続を放棄することはできません。 たとえば、相続財産の中に、最低限の生活を維持するために活用できる財産が含まれていたとしましょう。このような場合に遺産相続をすると、生活保護を受給するための条件2を満たさなくなるため、生活保護の受給が停止または廃止になる可能性は高いです。

だからといって、生活保護を受け続けるために、あえて相続を放棄することを許してしまうと、生活保護を受給するための条件2を満たしていないにもかかわらず、生活保護を受給していることになってしまいます。

もっとも、現金化することが難しい財産やマイナスの財産が大きい場合には、例外的に相続放棄をすることも可能です。この点は、さまざまな要素を勘案して正しく判断する必要があるため、詳細は弁護士やケースワーカーに相談することをお勧めします。

まとめ

生活保護受給者であっても、遺産を相続することはできますが、その反面、相続放棄は原則として行うことができません。 遺産相続をする場合や例外的に相続放棄をする場合には、さまざまな要素を考慮する必要があるため、弁護士に相談しながら進めていくことをお勧めします。

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この記事の監修者

弁護士 鎌田 隆博東京弁護士会
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