法定相続分・指定相続分・具体的相続分の言葉の意味は?
ざっくりポイント
  • 法定相続分指定相続分・具体的相続分の言葉の意味
  • 計算の仕方
  • 不動産がある場合の分割方法
目次

【Cross Talk】相続分という名前のいくつかの用語がわかりづらい

先日父が亡くなり、母と兄と私で相続をすることになりました。手続きについて調べて欲しいと任されているのですが、相続分について、法定相続分・指定相続分・具体的相続分と様々な「相続分」という言葉がありややこしくなっています。

そうですね。言葉にはなれていないと少し難しいかもしれません。順番に把握した上でどうやって計算するかについても見てみましょう。

法定相続分・指定相続分・具体的相続分の違いを確認しよう

誰がどのように相続をするかについて、「法定相続分」「指定相続分」「具体的相続分」という言葉があります。それぞれ「相続分」という言葉がついているのですが、シチュエーションによって使う言葉が異なってくるので把握しておきましょう。その上でそれぞれの計算をどのようにするか?ということも併せてみてみましょう。

法定相続分とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 法定相続分とは民法の規定に沿った相続分
  • 誰が相続人か、誰にどの程度の遺産を譲ることになるのかの目安になる

まず「法定相続分」とはどのようなものですか?

相続が発生したときに民法の規定にそって、誰にどの程度の相続分があるのか、誰にどの程度の遺産を譲るかの目安となる相続分です。

被相続人が亡くなると相続が発生します。 遺言がない場合には、民法の規定に沿った相続をすることになり、誰がどのような割合で相続をするのかが規定されています。 法定相続分は、相続人の遺産に対する割合を規定したものです。 遺言が無い場合の話をしているので、後述する遺言で指定する指定相続分とは異なる話になります。 また、法定相続分の計算があるからといって、遺産分割協議をするまでは、個々の財産に手を付けることは基本的にはできないという意味では、具体的相続分とも異なります。 誰が相続人になるのか、どのような割合で相続をするのかについては、「誰が相続人になる?相続人の範囲や優先順位について解説!」こちらの記事でお伝えしているので参考にしてください。

指定相続分とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 指定相続分とはどのようなものか
  • 指定の方法

次に「指定相続分」とはどのようなものなのでしょうか。

遺言で遺産分割の方法を指定することができ、指定によって決まった相続分のことを指定相続分といいます。

指定相続分とはどのようなものでしょうか。

指定相続分とは?

上述した法定相続分は、遺言なくして被相続人が死亡したときの相続分になります。 一方指定相続分は、遺言の中で遺言者が相続分を指定した際の相続分となります。 遺言者は遺言で、誰がどのような割合で相続をするか指定をすることができ、その指定がある場合には、民法の規定と異なる相続分で相続を行います。 相談者のケースでは、妻1/2・子がそれぞれ1/4ずつの法定相続分がありますが、遺言で妻が1/4・長男が1/2・長女が1/4と指定することも可能です。

指定相続分の決め方

指定については遺言でどのような割合にするかを指定することができます。 また、遺言の指定を特定の人に依頼しておいて、亡くなってから指定した人に相続分の指定をしてもらうこともできます。

相続分を指定する場合には遺留分を侵害する可能性があるので注意が必要

相続分の指定を自由にすることができるので、たとえば長男がすべて継ぐべきだと、遺言で指定相続分を10割長男にしてしまうことも可能です。 ただし、この場合には、妻・長女はこの相続の指定により遺留分を侵害されているため、長男に対して遺留分侵害額請求をすることができます。 遺留分を侵害しないような遺言を遺すのか、遺留分侵害額請求に対応することができるお金を用意するのか、いずれにせよ配慮はしておくべきでしょう。 遺留分については「遺言をした結果親族が紛争状態に?そうならないための遺留分の基本的な知識をチェック」こちらで詳しく解説しておりますので参照してください。

具体的相続分とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 具体的相続分とは?
  • どのような修正要素があるのか

次は「具体的相続分」について教えてください。

法定相続分はどのような家族でも適用されるものなのですが、家族の中には被相続人と生活を共にしていて介護などにつとめた人もいれば、一人だけ私立の医学部に行かせてもらった、住宅ローンの資金をもらった、というような事情もあります。このような具体的事情による修正をしたものが具体的相続分です。

具体的相続分とはどのようなものでしょうか。 遺言がない場合には法定相続分の規定にそった遺産分割がされることになるのですが、具体的事情により相続を細かくみるべき場合「具体的相続分」が存在します。 一つは上述したように、被相続人と生活をともにしていて、被相続人の介護を行うなどしていたような場合、介護をしていた相続人と、その他の相続人が同じ相続分であるのは不公平です。 また、相続人の一人が、私立の医学部を卒業させてもらった、住宅購入のための資金を贈与してもらったなどの場合に、その人が他の相続人と同じであるのも同様に不公平です。 相続分に関する規定として、このような不公平を是正する機能があるので、その調整を行った相続分の事を具体的相続分といいます。

具体的相続分の計算方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 具体的相続分の計算方法

法定相続分の微調整をした後の相続分が具体的相続分というわけですね。具体的にはどのような制度があり、どう計算するのでしょう。

寄与分・特別受益といった制度とあわせて、最初からどうやって計算をしていくか確認しましょう。

具体的相続分の計算の方法をここまでの話と併せながら確認しましょう。

相続人の確定

まず相続人が誰であるかを確定します。 被相続人の、生まれてから亡くなるまでの戸籍を取り寄せて、相続人になる人が誰なのかを確定します。 戸籍の取り寄せ方については「相続したときに必要な戸籍謄本の取り方・見方・提出先について解説」こちらで詳しくお伝えしています。

法定相続分の確定

相続人が誰なのかを確認し、民法の規定に沿って法定相続分を確定します。

特別受益を確定

次に、特別受益について確定します。 特別受益とは、生前被相続人から利益を得ているような場合で、上述した私立の医学部を卒業するための費用、不動産を取得するための費用などが挙げられます。 このような費用がある場合には、特別受益分を遺産に足した上で、特別受益者の法定相続分から差し引きます。

寄与分を確定

次に、寄与分を確定します。 寄与分とは、生前被相続人の財産の形成に対する寄与があった場合、その分についてはその者に相続分を上乗せする制度です。 たとえば、被相続人が高齢になってから介護が必要な場合に、ヘルパーなどを利用せずに相続人がつきっきりになっていたような場合には、ヘルパーにかかったとみられる費用分の遺産が減らなかったといえます。 寄与分があるときには、遺産から寄与分を差し引いて、その分を相続人の具体的相続分に上乗せします。

計算する

下記の具体例で計算してみましょう。 遺産2,000万円 相続人:母・長男・長女 特別受益:長女が住宅取得資金として200万円 寄与分:長男が父の介護のために同居していて、100万円の費用支出をまぬがれた。 まず、遺産についての計算は 遺産 2,000万円 特別受益 200万円 寄与分 ▲100万円 合計 2100万円 と計算します。 そして、法定相続分は、母1,000万円・長男500万円・長女500万円となるところ 相続人 法定相続分 具体的相続分 母 1,000万円 1,050万円 長男 500万円 625万円 長女 500万円 325万円 となります。 遺産がすべて現金でない場合この通りに分割するのは難しいので、この金額に近づくように遺産分割協議を行うことになります。

具体的相続分が決まっても不動産がある場合には分割方法についても決めなければならない

知っておきたい相続問題のポイント
  • 不動産がある場合の処理

具体的相続分についてはわかったのですが、父の遺産はそのほとんどが不動産なんですが、この場合どう分ければ良いのでしょうか。

不動産がある場合の処理を確認しましょう。

具体的相続分が決まったとして、遺産の価値のほとんどが不動産であるような場合には、きっちり金額で分けられるわけではありません。 この場合、不動産についての処理について知っておきましょう。 一つは、共有とする方法ですが、たとえば母だけが使うというような場合には、不動産に対する持分を持っていても仕方がないと思う方もいらっしゃるでしょう。 不動産が土地であって、分筆ができるような場合には、最終的に合意した持分で分筆して登記をすることができます(現物分割)。 とはいえ、自宅があるような場合には分けるというわけにもいきませんので、売却をして代金を分割することもできます(換価分割)。 しかし、仮に母と長男で住みつづけたい、というような希望がある場合で、長女には持分に相当する金銭を支払って分割する方法もあります(代償分割)。

まとめ

このページでは、法定相続分・指定相続分・具体的相続分という言葉の意味についてお伝えしてきました。 実際には、特別受益・寄与分の細かい算定が必要となるため遺産分割がうまくいかないような場合もあります。具体的相続分の計算に迷ったときには、弁護士に相談するようにしてみましょう。

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