110万円以下の贈与をする場合でも、契約書を作成すべき理由を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 生前贈与は贈与者が生きている間に、財産を無償で受贈者に譲ること
  • 年間110万円を超える贈与贈与税の対象になる
  • 110万円以下の贈与を証明するために、贈与契約書を作成しておくべき
目次

【Cross Talk 】110万円以下の贈与でも、贈与契約書は作成しておくべき?

年間110万円以下の贈与であれば、贈与税は課税されないと聞きました。贈与税が課税されないのであれば、贈与契約書は作成しなくても大丈夫ですよね?

法的には、贈与契約書を作成しなくても贈与は可能です。ただし、110万円以下の贈与だったことを証明するための証拠として、贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。

110万円以下の贈与でも、契約書は作成しておくべきなんですね。贈与契約書を作成すべき理由を、詳しく教えてください!

110万円以下の贈与であっても、契約書を作成しておくべき理由を解説

年間110万円以下の贈与の場合、原則として贈与税は課税されません。 贈与税が課税されないのであれば、贈与契約書は作成しなくてもいいと思われるかもしれません。 しかし、110万円以下の贈与であっても、贈与契約書は作成しておくべきです。 そこで今回は、110万円以下の贈与において、贈与契約書を作成すべき理由を解説いたします。

「生前贈与の基礎知識」(贈与税を抜く)

知っておきたい相続問題のポイント
  • 生前贈与は贈与者が生きている間に、財産を無償で受贈者に譲る行為
  • 贈与をする場合、法的には必須ではないが、贈与契約書は必ず作成しておくべき

生前贈与について教えてください。

生前贈与とは、贈与者が生きている間に、財産を他人に無償で与える行為です。贈与をする場合、法的には契約書は必須ではありませんが、様々な理由から、贈与契約書は必ず作成しておくべきです。

生前贈与は民法の贈与契約をするもの

生前贈与は、民法における贈与契約にあたります(民法第549条)。 贈与とは、自分の財産を相手に無償で譲ることです。財産を譲る側を贈与者といい、財産を受け取る側を受贈者といいます。 例えば、親が子に無償で自分の土地を譲った場合、贈与にあたります。土地を譲った側である親が贈与者で、土地を受け取った側の子が受贈者です。

贈与には様々な形態があり、生前贈与はその一つです。 生前贈与とは、贈与者が生きている間に、自分の財産を他人に無償で贈与することです。 例えば、祖父が生きている間に、結婚祝いとして孫に200万円を無償で与えることは、生前贈与に該当します。

生前贈与の特徴は、贈与者が生きている間に財産が移転することです。一方、贈与者が亡くなったことを原因として財産が移転する贈与を、死因贈与といいます。

贈与契約に書類は必要ではない

贈与契約をするにあたって、書類(贈与契約書)を作成することは必須ではありません。 贈与契約書の作成が必須ではない理由は、贈与契約は口頭だけで成立する諾成契約だからです。

諾成契約とは、当事者の合意のみで効果が発生する契約のことです。 贈与の場合、まず贈与者が、「自分の財産を無償であなたに譲る」という意思表示を受贈者にします。 次に、贈与者の意思表示を受けた受贈者が、「はい、受け取ります」という承諾の意思表示をすれば、贈与契約は成立します。

諾成契約の場合、当事者が合意すればそれだけで契約が成立するので、契約について書面(契約書)にする必要はありません。 贈与契約も諾成契約の一種なので、当事者である贈与者と受贈者が贈与について合意すれば、法的にはそれだけで契約が成立します。

そのため、贈与契約書を作成すること自体は重要ですが、法的には必須ではありません。

生前贈与をする場合に必ず贈与契約書を作るべき理由

生前贈与をする場合は、以下の理由により、必ず贈与契約書を作成しておくべきです。
・生前贈与をしたことの証拠になる
・生前贈与を勝手に撤回できなくなる

贈与は法的には当事者の合意だけで成立し、贈与契約書を作成することは必須ではありませんが、契約書を作成しておけば、贈与したことの証拠になります。 もし、贈与契約書を作成していなかった場合、贈与したことについて客観的に証明するのが難しくなってしまいます。

例えば、贈与の約束をしたにもかかわらず、贈与者がきちんと贈与をしてくれなかった場合、贈与契約書がなければ、贈与の事実を証明することは非常に困難です。 贈与契約書を作成しておけば、贈与がきちんと行われなかった場合に、贈与があったことについて証明する証拠になります。

次に、贈与契約書を作成しておくと、贈与を勝手に撤回できなくなるメリットがあります。 口頭の贈与の場合(「書面によらない」場合)、当事者は贈与を撤回することができます(民法第550条)。 口頭で贈与の約束をした場合、もし贈与者の気が変わって贈与をしたくなくなれば、贈与者は贈与をしなくてもすみます。

受贈者にとっては、贈与がきちんと行われるかどうかわからない、不安定な立場に置かれてしまいます。 贈与契約書を作成しておけば、口頭の贈与ではないので、当事者は自由に撤回できなくなります。 そのため、贈与契約書を作成することで、贈与が勝手に撤回されることを防ぐ手段になります。

110万円以下の贈与をする場合でも契約書を作ったほうがいい?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 年間110万円を超える贈与は贈与税の対象になる
  • 110万円以下の贈与を証明するために贈与契約書を作成しておくべき

110万円以下の贈与をする場合でも、贈与契約書を作成しておくべきでしょうか?

年間110万円以下の贈与は、原則として贈与税の対象になりませんが、証明が必要になる可能性があります。110万円以下の贈与であることを証明するために、贈与契約書を作成しておくべきです。

年間110万円を超える贈与については贈与税の対象となる

年間110万円を超える贈与をした場合、贈与税の対象になります。 贈与税は年間110万円の基礎控除(課税額を計算する際に差し引かれる金額)があるので、贈与した金額が110万円以内であれば、贈与税は課税されません。 しかし、110万を超える金額を贈与した場合は、基礎控除を超えるので、超えた分の金額について贈与税が課税されます。

例えば、ある年に祖父が孫に200万円を贈与した場合、基礎控除を超える90万円について、贈与税の課税対象になります。 逆に言えば、年間に贈与した金額が110万円以内であれば、原則として贈与税は課税されません。 なお、贈与税が課税されるのは、贈与をした贈与者ではなく、贈与によって利益を得た受贈者です。

例えば、祖父が孫に贈与した場合、贈与税を支払うのは、贈与によって利益を得た受贈者である孫です。 注意点として、年間110万円の基礎控除は、その年に贈与を受けた合計で計算されます。

例えば、ある年に祖父が孫に100万円を贈与し、祖母も同じ孫に100万円を贈与した場合は、合計200万円の贈与を受けているので、基礎控除を超える90万円に対して贈与税が課されます。

110万円以下の贈与であることを証明するためにも契約書は必ず作る

110万円以下の贈与であることを証明するためにも、贈与契約書は必ず作成しておきましょう。

贈与契約書を作成しておけば、税務署が税務調査(納税が適正に行われているかの調査)を行った場合に、110万円以下の贈与が行われたことの証拠になるからです。 贈与契約書を作成しなかった場合、税金が発生しない範囲での贈与であることを証明できずに、贈与税の課税対象になってしまう可能性があります。

贈与契約書に決まった書式はありませんが、きちんと贈与が行われたことを証明するために、以下の情報については最低限記載しておきましょう。
・贈与者の氏名・住所・捺印
・受遺者の氏名・住所・捺印
・贈与について当事者が合意していること
・贈与される財産を特定する情報(贈与される金額など)
・贈与契約をした日付
・贈与が行われる日付

まとめ

以上、贈与をする場合に贈与契約書を作成しておくべき理由について説明してきました。 贈与契約書を作成しておけば、当事者の一方から勝手に撤回されるおそれもなく、年間110万円以下の贈与であれば、基礎控除の範囲内であることの証拠になるからです。 贈与契約書をきちんと作成できるか心配な場合は、契約書作成の知識・経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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