精神障害がある場合の遺産分割のポイントについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 精神疾患がある場合でも相続人から除外されるわけではない
  • 精神障害によって相続人が判断能力を欠く場合成年後見人を選任する
  • 本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合特別代理人の選任が必要
目次

【Cross Talk 】相続人に精神障害がある場合、遺産分割はどうなるの?

相続人にうつ病・双極性障害・統合失調症など精神障害がある場合、遺産分割はどうなりますか。相続人から除外されてしまうのでしょうか?

相続人に精神障害がある場合に、相続人から除外されるわけではありません。ただし、精神障害によって判断能力を欠く場合は、遺産分割において成年後見人の選任が必要な場合があります。

精神障害を理由に、相続人から除外されるわけではないんですね。成年後見人の選任についても詳しく教えてください!

相続人に精神障害がある場合の相続手続きについて解説いたします。

相続人にうつ病・双極性障害・統合失調症などの精神障害があっても、そのことを理由に相続人から除外されるわけではありません。 ただし相続人に精神障害がある場合は、特別代理人の選任など、一定の手続きが必要になる場合があります。 そこで今回は、相続人に精神障害がある場合の相続手続きについて解説いたします。

うつ病・双極性障害・統合失調症など精神疾患がある場合の相続について

知っておきたい相続問題のポイント
  • 精神疾患がある場合でも相続人から除外されるわけではない
  • 精神疾患によって相続分が減少するわけではない

私は精神疾患があるのですが、相続人から除外されてしまうのでしょうか?

うつ病などの精神疾患を理由に、相続人から除外されるわけではありません。また、精神疾患を理由に、相続分が減るわけでもありません。

相続人から除外されるわけではない

うつ病・双極性障害・統合失調症など精神疾患がある場合でも、相続人から除外されるわけではありません。 精神疾患がある相続人も、他の相続人と同様の相続権を有します。

例えば、被相続人が亡くなって1,000万円の遺産があり、相続人として長男と次男の2人がいるとしましょう。 法定相続分(民法が規定する相続の取り分)によれば、長男と次男の相続分はそれぞれ500万円ずつです。 仮に長男に精神疾患がある場合でも、遺産を相続できなくなったり、他の相続人に比べて遺産の取り分が減ったりなどはありません。

期限のある手続きでは起算点がずれることもある

相続人に精神障害がある場合では、期限のある手続きをする場合に、起算点がずれることがあります。 相続が発生すると相続税の課税対象になりますが、相続税には申告期限があるので、期限までに申告をしなければなりません。

相続税の申告期限は原則として、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。 一般的な場合であれば、被相続人が死亡したことを知った日とは、被相続人が亡くなった日になります(被相続人が亡くなった当日に相続人に連絡がいくのが一般的なため)。

例えば、被相続人が3月12日に亡くなり、当日に病院から連絡があって相続人である妻が夫の死亡を知った場合、相続税の申告期限は3月12日の翌日から10ヶ月以内です。 しかし、うつ病・双極性障害・統合失調症などの精神障害によって、相続人が判断能力を欠く状態にあると判断された場合は、相続税の申告期限の起算点がずれる場合があります。 相続税の申告期限の基準となるのは、被相続人が死亡したことを知ったかどうかですが、相続人が判断能力を欠く状態にある場合は、被相続人が死亡したことを認識できないからです。

詳しくは後述しますが、精神障害によって相続人が判断能力を欠く場合、相続人の後見役として相続手続きなどを行う人である、成年後見人を選任します。 精神障害によって成年後見人が選任される場合の相続税の申告期限は、「成年後見人が選任された日の翌日から10ヶ月以内」になります。 成年後見人が選任されることによってはじめて、相続人に代わって成年後見人が、被相続人の死亡を知ったといえるからです。

障害者として認定されている場合には相続税で障害者控除が受けられる

相続人が障害者として認定されている場合、相続税の計算において障害者控除の対象になります。

以下の要件を全て満たす場合は、障害者控除を受けることができます。

・相続によって遺産を取得した時点において、日本に住所があること(例外あり)
・相続によって遺産を取得した時点において、障害者であること(一定の障害等級の認定を受けていること)
・法定相続人(民法が規定する相続人)であること

障害者控除における障害者の区分は、一般障害者と特別障害者の2種類があります。特別障害者は障害の程度が重いことから、一般障害者よりも大きな控除が適用されます。 障害者控除が適用されるのは、相続人の年齢が満85歳までです。 相続人の年齢が低いほど、相続後の生活も一般に長くなることから、控除額が大きくなります。

具体的には、満85歳になるまでの年数につき、1年あたり(端数は切り上げ)10万円(特別障害者の場合は20万円)の控除が適用されます。 例えば、相続開始時の年齢が60歳5ヶ月の一般障害者の控除額は、25年 × 10万円 = 250万円です。

うつ病・双極性障害・統合失調症など精神疾患で遺産分割ができない場合の手続き

知っておきたい相続問題のポイント
  • 精神障害によって相続人が判断能力を欠く場合、成年後見人を選任する
  • 本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合、特別代理人の選任が必要

相続人にうつ病などの精神障害がある場合、相続手続においてどのような注意点がありますか?

精神障害によって相続人が判断能力を欠く場合は、裁判所に申立てをして成年後見人を選任します。本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合は、特別代理人を選任します。

成年後見人の選任

うつ病・双極性障害・統合失調症などの精神障害によって、相続人が判断能力を欠く場合には、成年後見人の選任手続きがあります。 成年後見人とは、精神障害などによって判断能力を欠く状態にある本人を保護する人です。 成年後見人の主な任務は、本人の財産に関する法律行為をしたり、本人の法律行為(契約など)を取り消したりすることです。

遺産分割協議によって遺産を分割する場合、相続人全員の同意が必要です。 ところが、判断能力を欠く相続人は、遺産分割協議に同意できないので、そのままでは相続の手続きを進めることができません。 そこで、本人の利益の保護を目的とする成年後見人を選任し、その成年後見人によって遺産分割協議が進められることになるのです。 成年後見人を選任するには、家庭裁判所に申立てが必要です。申立てが認められると、家庭裁判所が成年後見人を選任します。

成年後見人が利益相反取引になる場合には特別代理人を選任する

本人と成年後見人の間に利益相反がある場合は、特別代理人の選任が必要です。 特別代理人とは、本人と成年後見人が利益相反にある場合に、成年後見人に代わって本人のために手続きをする人です。

利益相反とは、本人にとっての利益と成年後見人にとっての利益が相反する(片方の利益が他方にとっては不利益になる)関係のことです。 相続における利益相反の典型は、本人と成年後見人の両方が相続人であり、遺産分割協議をする場合です。 ある相続人が別の相続人の成年後見人である場合、成年後見人が自分の取り分を優先してしまい、本人にとって不利益となる可能性があります。

例えば、被相続人である夫が亡くなって、相続人として妻と子どもの2人がいるとしましょう。 妻が精神障害によって判断能力を欠く状態にあるために、妻の成年後見人として子どもが選任されたとします。 遺産分割協議によって遺産を分ける場合、妻と子どもは利益相反の関係にあります。妻の取り分が増えれば、それだけ子どもの取り分が減ってしまうからです。 そこで、本人と成年後見人の両方が相続人として遺産分割協議をする場合は、家庭裁判所に申立てをして、特別代理人を選任する必要があります。

まとめ

相続人にうつ病・双極性障害・統合失調症などの精神障害があっても、相続人から除外されるわけではありません。 ただし、精神障害によって相続人が判断能力を欠く場合は、遺産分割を進めるために成年後見人の選任が必要な場合があります。 また、本人と成年後見人の間に利益相反が生じる場合については、特別代理人の選任が必要な場合があります。 成年後見人や特別代理人の選任について具体的な進め方がわからない場合には、専門家である弁護士に相談をしてみましょう。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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