
- 争いの解決方法は裁判(訴訟)だけではない
- 裁判(訴訟)以外の解決手段として、当事者による話し合い・調停・審判がある
- 相続争いごとにどのような解決の道筋をたどるかを確認
【Cross Talk 】相続に関する争いはどのようにまとめればいいですか?
先日父が亡くなり、母・私(長男)・妹(長女)で相続をすることになりました。遺産分割の話し合いをしているのですが妹がどうしても納得してくれません。このような場合には裁判(訴訟)しか解決方法はないのでしょうか。
裁判(訴訟)の他にも調停や審判などいくつかの解決方法があります。
詳しく教えてください。
相続について争いになってしまった場合には、裁判(訴訟)しかないのでしょうか。 相続については家族に関する問題ということもあって、紛争になった場合の解決方法として、調停・審判といった解決方法があります。相続に関する争いといっても、その争いを解決するために何を争わなければならないかによって解決手段も異なるので、相続の何で争っているかによってどのような解決方法があるかと一緒に確認しましょう。
相続にまつわる争いの解決方法について

- 相続争いを話し合うコツ
- 相続争いの紛争解決手段には調停・審判・裁判(訴訟)がある
相続争いの紛争解決手段にはどのようなものがありますか?
調停や審判などの裁判(訴訟)以外の手段も知っておきましょう。
相続において当事者の話し合いが上手くいかなくなった場合にはどのような解決手段があるのでしょうか。
弁護士を通しての話し合い
当事者の話し合いが上手くいかない場合ですので、法的な手段を考えるかと思います。 ただ、その場合に一度検討していただきたいのが、弁護士に依頼をして交渉をするという方法です。 相続争いが激しくなってくると、財産的な側面で既に折り合いがついていても、交渉において感情的になってしまって話し合いが上手くいかない場合があります。感情的な対立を抱えたまま、面と向かって交渉を続けても、感情的な対立が深まるだけですので、弁護士に代理人となってもらい、淡々と交渉を進めてもらうことは効果があります。
調停
話し合いをしても応じない場合には、法的な手続きによって紛争を解決せざるをえません。 裁判所で行う手続きに関しては、裁判(訴訟)以外にもいくつかあり、調停はそのうちの一つです。調停は裁判所で行う手続きで、裁判官と専門家からなる調停委員が間に入って当事者の意見をすり合わし、当事者に対して調停案を示して、これに当事者が合意する・しない、という方法で紛争を解決する方法をいいます。
手続は裁判所で行われますが、手続中は別々に意見を聞かれるので、面と向かって交渉をする、ということはありません。 なお、遺産分割事件は、法律上、調停手続を先に行わず、審判手続を申し立てることが可能ですが、特段の事情がない限り、裁判所は、調停を先行させます。審判
審判は、同じく裁判所で行う裁判手続きの一種ですが、当事者の主張に裁判所が拘束されず、裁判所が判断するものです。調停は民間の専門家が調停委員として紛争解決に加わりますが、審判は裁判官だけが行います。 調停のように別々に呼ばれて主張するのではなく、当事者双方が裁判官のいる部屋に呼ばれて手続きを行いますので、顔を合わせながら手続きを行います。
調停の場合には従わなければ効力が発生しませんが、審判の場合には不服申立ての手続きをとらなければ、審判内容に従うことになります。裁判(訴訟)
法的な紛争解決手段として、最もイメージできるのは裁判(訴訟)ではないでしょうか。 裁判(訴訟)は、公開の法廷での手続きになります。 裁判の最中に和解が試みられることもあり、和解をした場合にはその内容での紛争解決となります。 和解に至らない場合には最終的には裁判所が出す判決に従うことになります。不服申立て
以上の手続きで得られた内容に不服がある場合には、不服申立てを行います。 調停に関しては調停委員から示された調停案に合意しなければ何も効力が生じません。 審判の内容に不服であれば、即時抗告という手段によって、高等裁判所で審理をすることになります。相続の争いごとに解決方法を確認

- 相続の争いの内容ごとに解決方法を確認する
- 必ず調停から審判になるというわけではない
私の場合、遺産分割なので、調停をしてから審判ということになりますね。相続に関する争いは全て調停をして、それでもまとまらなかったら審判なのでしょうか。
全てそうであるとはいえません。相続に関する争いごとに、どのような解決方法を利用するか見てみましょう。
以上のような相続争いの解決方法があるのですが、争いの内容によって利用する手続きが異なります。 相続争いの内容ごとに確認しましょう。
遺産分割
遺産分割で話し合って争いになった場合にはどのように解決されるのでしょうか。 遺産分割は、まずは調停を利用して、それでも解決しない場合に審判に移行します。遺言無効確認の訴え
遺言の無効を争う場合にはどのように解決されるのでしょうか。 たとえば、相続人の一人が有利になる遺産分割の方法の指定があったとき、遺言者が高齢や認知症を患っていたなどで、遺言書を作成できるような状態ではなかった場合には、他の相続人はこの遺言が無効であると主張して争います。まず、当事者間で遺言は無効で、他の遺言書の内容による、もしくは遺産分割協議を行うという話し合いをします。 調停手続において、遺言が無効であることを前提に、遺産の分け方を話し合うことは可能ですが、家庭裁判所では、遺言が有効か無効かの判断はしないため、遺言の有効性が争われている場合には、最初から遺言無効確認の訴えを提起することが多いでしょう。
遺産確認
特定の財産が遺産に含まれるかどうかに争いがある場合があります。例えば、ある方が子供の名義の預金口座を預かって、そこに預貯金をしているようなケースがあります。 名義は子供なので遺産には形式上はあたらないものの、実質的には被相続人の遺産として扱うべきといえます。
どの財産を遺産として取り扱うべきかどうかについて争いになった場合には、遺産確認の訴えを提起することになります。相続人の確定
法律上相続人となっている人であっても、実は相続人ではないケースがあります。 婚姻が無効となる場合や相続欠格事由に該当する場合は、相続人ではなくなります。 養子縁組が無効となる場合も同様です。 この場合には、相続人の地位不存在の確認を求めて訴えを提起することになります。遺留分侵害額請求
相続人に最低限保障されている権利のことを遺留分と呼んでおり、遺留分を侵害するような遺言・生前贈与があった場合には、遺留分侵害額請求権を行使することができます。 遺留分侵害額請求に応じない場合には、遺留分侵害額調停をまず起こし、調停が不成立の場合には遺留分侵害額請求の訴訟を起こします。 遺留分に関する事件は、調停を先に行ってから裁判(訴訟)をすることになります。まとめ
このページでは、相続に関する争いが生じた場合の紛争解決方法についてお伝えしました。 相続問題は、金銭的な争いだけではなく、感情的な対立も生じますので、争いになった場合には上手に解決すべきです。 解決方法には裁判(訴訟)以外にも多数あることを知っていただいた上で、上手な解決方法を弁護士に相談してみましょう。

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