遺産から控除できる債務と葬式費用について詳しく解説いたします!
ざっくりポイント
  • 相続開始時に現存する被相続人の債務と葬式費用は控除される
  • 香典返しなど「葬式費用」として認められないものがある
  • 保証債務など控除されない債務もある
目次

【Cross Talk 】相続にかかった費用は経費になる?

父が亡くなって相続の手続きをしているのですが、入院費の清算や葬儀などでかなりの支払いをしました。相続といえば遺産をもらえるものと思っていましたが、結構お金がかかるのですね。この先、まだ相続税を払わないといけないのですが…

確かにそうですね。ただ、今おっしゃった亡くなった方の入院費や葬式費用は、相続税を計算する際に遺産から控除してもらえるので、その分だけ相続税をおさえることができますよ。

そうなんですね!ほかにも経費になるものがないか教えてください!

相続にかかった費用のうち遺産から控除されるものとは?

相続をする際、さまざまな支出が必要になります。亡くなった方が病院や施設に入っていた場合には亡くなるまでの費用の清算をしなければなりませんし、葬儀にもいろいろなお金がかかります。相続人や遺産を調査するにも相応の費用がかかりますし、相続税の申告を税理士に依頼すれば税理士費用も必要になります。

これらの費用は、相続をするためにかかるものですから、いわば経費のようなものではないか、だとすれば遺産から控除してもらえないのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、相続に関連してかかった費用のうち遺産から控除してもらえるものはどんなものなのかについて、具体的に解説いたします。

遺産から控除してもらえるものとは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続開始の際に被相続人の債務で現に存するものと、葬式費用は控除される
  • 相続開始後に発生したものは控除されない

どういった費用が相続税の計算から控除してもらえるのですか?

相続税の計算上遺産から控除されるのは、被相続人の現に存在する債務や葬式費用です。それ以外の費用、たとえば相続人が他の相続人や遺産を調査するために要した費用、税理士に依頼した費用などは控除の対象になりません。

冒頭でも触れた通り、相続の手続きをする際には、いろいろな費用がかかります。 これらの費用を必要経費として遺産から控除することができれば、結果的に相続税を節税することができます。

この点について、法律では
  • 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
  • 被相続人に係る葬式費用
の二つを、遺産から控除することしています(相続税法13条)。

前者については、相続は死亡によって開始するので(民法882条)、被相続人の債務で被相続人の死亡の際に現に存するもの、ということになります。したがって、被相続人の死亡の際に現に存するといえないものや、被相続人自身の債務とはいえないものは、前者には該当せず、遺産からの控除は認められないということになります。

冒頭で挙げた例のうち、相続人が他の相続人や遺産を調査するために要した費用、相続税の申告のための税理士費用などは、被相続人の死後に発生したものであり、被相続人の債務でもありませんので、遺産からの控除の対象にはなりません。

葬式のためにかかった経費

知っておきたい相続問題のポイント
  • 葬式に関係する費用が全て葬式費用に含まれるわけではない
  • 香典返しや法事などにかかった費用は葬式費用に含まれない

葬式費用が経費として控除されると聞いて安心しました。

安心するのは少し早いかもしれません。葬式に関連していろいろな費用がかかりますが、なかにはここでいう葬式費用に含まれないとされているものがあるのです。たとえば、香典返しは葬式費用に含まれないとされています。

「遺産から控除してもらえるものとは?」で解説した通り、葬式費用は遺産から控除されます。

もっとも、葬儀に関連する費用には、斎場の使用料、遺体の運搬料、火葬にかかる費用、お寺への謝礼、会食(通夜ぶるまい、精進落とし)、香典返しなど、さまざまな種類、性質のものが含まれます。

ところが、法律(相続税法)ではたんに「葬式費用」と定めるだけで、葬儀に関連するどのような費用が「葬式費用」に含まれるかが、必ずしも明らかではありません。

そこで、解釈によって何が「葬式費用」に含まれるかを決める必要があるのですが、国税庁の運用では、次のようなものが「葬式費用」になると考えられています。

  • 葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用)
  • 遺体や遺骨の回送にかかった費用
  • 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(たとえばお通夜などにかかった費用)
  • 葬式にあたりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
  • 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用
これに対して、次のようなものは「葬式費用」に含まれないとされています。
  • 香典返しのためにかかった費用
  • 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
  • 初七日や法事などのためにかかった費用
香典返しは葬儀に関連する費用ではないかと疑問に思われるかもしれません。 しかし、香典は喪主(葬儀の主催者)に対する贈与であり、遺産ではないと考えるのが一般的です。 そうなると、香典に対する返礼である香典返しも遺産から切り離して考えるべきでしょう(香典が喪主の遺産になるのに香典返しを遺産から経費として差し引くのはおかしい、ということです)。

控除される債務

知っておきたい相続問題のポイント
  • 金融機関からの借入や公租公課など確実なものは控除される
  • 保証債務は原則として控除されないが例外的に控除される場合がある

亡くなった人に債務があれば、全て控除の対象になりますか?

控除の対象になるのは、相続開始時に確実に存在したといえる債務に限られます。代表的なものとしては、銀行からの借入金があげられます。これに対し、被相続人自身が借入をしたのではなく、第三者の債務を保証しているにすぎない場合、第三者が返済できればいいわけですから、原則として控除の対象になりません。

葬式費用のほかに遺産から控除されるものとして、被相続人の債務で相続開始の際、現に存するものがあげられます。現に存するものとは、相続開始時に確実に存在するといえるもの、ということです。 金融機関からの借入金、公租公課、入院・入所していた病院・施設の費用などがその代表的な例です。

これに対し、被相続人が負っていた債務でも、控除の対象にならないものもあります。 たとえば、被相続人が第三者の保証人になっていた場合(保証債務を負っていた場合)です。この場合、借入をした本人(主債務者といいます)が約定通りの弁済をすれば、保証人である被相続人が主債務者の代わりに弁済をする必要はありません。したがって、相続開始時に確実に存在するとはいえないので、保証債務は原則として控除の対象になりません。

ただし、相続開始時に主債務者が弁済不能の状態にあるため、保証人がその保証債務を履行しなければならない場合で、かつ、主債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主債務者が弁済不能の部分の金額を、保証債人の債務として控除することが認められています(相続税法基本通達14-3⑴但書)。

また、被相続人の生前に購入した墓地、墓碑、仏壇等の代金が未払いになっている場合でも、代金の支払 債務を控除することはできません(相続税法13条3項本文、相続税法基本通達13-6)。これらの遺産は、祭祀財産といって遺産とは異なる扱いをされており、相続税の課税価格に参入されません(相続税法12条1項2号)。そのため、これらの遺産の未払い代金のみを遺産から控除することはできないのです。

まとめ

遺産から控除される経費について解説しました。 控除されるもの、控除されないものを正しく理解して、適正な相続税の申告をするようにしてください。 判断に迷った場合は相続に詳しい弁護士または税理士にご相談するといいでしょう。

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