遺言書が特に必要とされるケース、遺言書があっても問題のある事例を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 相続人以外で遺産を譲りたい方がいるケースなどでは遺言書が必要となる
  • 相続人の間で仲が悪い、疎遠、行方不明者がいる場合も遺言書を残しておくことでトラブル回避に繋がることが
  • 遺言書があっても遺留分を侵害している、法的に無効である際にはもめる可能性があるため注意
目次

【Cross Talk 】遺言書が特に必要とされるケースとは?

父が終活中なのですが、過去に離婚歴があり前妻との間に子どもがいます。私は後妻の子どもで会ったことがありませんが、相続時に揉めそうで不安です。遺言書を書いてもらった方が良いでしょうか?

はい。亡くなった方に離婚歴があり、前の配偶者との間に子どもがいる場合には相続の権利があります。相続時に他の相続人とトラブルとなる事例が多くなっています。

詳しく教えてください!

遺言書が必要とされるケースとトラブルになる事例とは

相続では相続人の間で仲が悪い、疎遠である場合、相続税がかかるケースなどでトラブルに発展してしまう可能性が高くなっています。また、遺言書があっても遺留分(親族の最低限の取り分)を侵害している、法的に無効であるなどの理由で揉めてしまう事例があります。 今回は遺言書が特に必要とされるケース4つ、遺言書があってもトラブルになる事例と対処法を解説いたします。

遺言書が特に必要なケース4つとは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 法定相続人以外に相続をさせたい、相続分を配慮したい方がいる場合などでは遺言書が必要となる
  • 遺産が相続税の基礎控除額「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるときにも注意を

遺言書が必要とされるケースを教えてください。

法定相続人以外に相続をさせたい、事業承継で承継させたい遺産があるケースなどでは遺言書が必要となります。相続税がかかると予想されるとき、共同相続人の仲が悪い・疎遠、行方不明者がいる際にも注意が必要です。

共同相続人の仲が悪い・疎遠、行方不明者がいる

遺言書が必要とされるケースの1つとして、共同相続人の仲が悪い、疎遠、行方不明者がいるという事例が挙げられます。

基本的に相続で遺言書がない場合は、遺産分割協議で相続人全員が合意する方法で遺産の分配割合や相続人などを決定します。 ただ、もともと相続人の間で仲が悪い、疎遠である場合は遺産分割協議でトラブルが起こりやすい傾向があります。

特に被相続人(亡くなった方)に離婚歴があり前の配偶者との間に子どもがいる、兄弟姉妹で半分血がつながっているケースなどでは共同相続人の間で感情的になり「争続」になってしまう事例も少なくありません。

相続人の中に行方不明者がいる場合、「不在者財産管理人」を選任または失踪宣告を行いますが、共同相続人が手続きを行わなくてはいけません。

よって、共同相続人の仲が悪いまたは疎遠、関係が複雑である、行方不明者がいる場合には遺言書を書くことでトラブルが避けられる可能性が高くなります。

共同相続で配慮をしておく共同相続人がいる

例えば長男が自身の事業を継ぎ、他の相続人は別の仕事をしていることから「長男に事業承継を行いたい」「事業のためにも多めに遺産を譲りたい」というケースでも遺言書を書いておいたほうが良いと言えます。

また、共同相続人のうち「被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与」した者には、法定相続分の他に寄与分が認められます。

裁判所の「寄与分を定める処分調停」によると、寄与分を申立てられる方は「被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人」と記載されています。

寄与分は、原則として共同相続人の協議によって定めることとされていますが、寄与分をめぐりトラブルとなる可能性があります。共同相続人のうち1人が介護・看護をしているケースでは遺言書があった方が良いでしょう。

相続人以外に死後に遺産を渡したい方がいる

民法による規定では、被相続人の配偶者は常に相続人となり、第一順位は子ども、第二順位は父母、第三順位は兄弟姉妹であり、第二順位の者は第一順位がいない場合に相続人となり第三順位の者は第一順位・第二順位の者がいないときに相続人となることが定められています。

また、第一順位の子どもが亡くなっている際には孫、第二順位である父母が亡くなっているときは祖父母、第三順位の兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪が相続人となります。 上記のように民法で定められた相続人を「法定相続人」と呼びます。

法定相続人ではなく、「子どもは生きているが孫に相続させたい」「お世話になった人に遺贈したい」「内縁の配偶者に遺産を譲りたい」というケースでは遺言書が必要です。

相続税がかかることが予想される

相続税は遺産総額が基礎控除額「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超えると、基本的に納付の義務が生じます。 相続開始の翌日から10ヶ月以内に申告・納税を行う必要があります。

相続税がかかる場合には「相続税が思ったより高く支払えない」「不動産など現物の遺産が多く現金納付が出来ない」等のトラブルが起こる可能性があります。延納・物納も可能ですが手続きが必要で相続人に負担となってしまう可能性があります。 相続税が課されることが予測されるときには、できれば遺言書を残しておきましょう。

遺言書があっても揉めるケースもある

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書があっても、遺留分を侵害している、遺言者が認知症であるケースでは問題が生じる
  • 遺言書の作成は相続に強い弁護士に相談を

遺言書があっても揉めることがあると聞きましたが、どのような場合でしょうか?

相続人の遺留分を侵害している、法的に無効であるなどのケースではトラブルに発展してしまう可能性があります。

遺留分を無視

相続では「遺留分」という被相続人の相続人に対して最低限の取り分が定められています。 遺留分は被相続人の配偶者・子ども(孫)・父母(祖父母)に権利があり、基本的に法定相続分の2/1とされています。 例えば「遺産を100%愛人に譲る」といった偏った遺言書が残っている場合に、残された遺族の取り分を確保するために、遺留分が規定されています。 遺留分を無視した相続分を指定すると、侵害された相続人が「遺留分侵害額請求調停」を申立てる可能性があります。 トラブルを回避するためにも、遺留分に配慮した遺言書作成を心がけましょう。

高齢・認知症なのに遺言書がある

遺言書が法的に有効であることの要件の1つとして「遺言能力がある」ことが挙げられます。
民法第963条
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
自身が書いた遺言書の内容を理解し、相続でどのような事が起こるかを理解して書いたものは遺言能力があると言えますが、遺言者が高齢・認知症であり判断能力が乏しい状態で書いた遺言書は法的な有効性を慎重に判断する必要があります。 遺言者が高齢・認知症の場合には、本人の意思を聞き公証人が作成する公正証書遺言を作成しましょう。

自筆証書遺言が無効となった

自筆証書遺言は、遺言者が全文(財産目録以外)、日付・氏名を自書し、押印したものという規定があります。

日付が「吉日」といった具体的な日付が分からないもの、押印していないなど要件を満たしていないものは無効となってしまいます。

自筆証書遺言を書くときには、要件を満たしていることを確認する必要があります。 また、自筆証書遺言は自宅といった身近な場所に保管した際に偽造・変造されてしまう可能性があります。 法務局の「自筆証書遺言保管制度」の利用、または公正証書遺言を作成し公証役場に保管することをおすすめします。

公正証書遺言を作成しておくメリット

公正証書遺言は、遺言者が公証人と証人2名の前で、遺言書の内容を口頭で告げ、公証人が意思を確認し、文章にまとめたものを定められた手順で作成する遺言書です。

公正証書遺言は法律の知識がある公証人が法律を鑑みた内容であることを確認したうえで作成するものというメリットがあります。また、公証人や証人が確認するため、方式の不備で遺言書が無効になる可能性が限りなく低い方法です。

自宅で保管された遺言書のように、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要がない、原本が公証役場に保管されるため破棄・隠匿・改ざんのおそれがないなどのメリットもあります。 ただ、手数料を支払う必要があります。

遺言書の作成を検討している方、家族と遺言書作成について相談している方は、まずは相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

法定相続人以外に相続させたい、特定の相続人に多く相続させたい場合には遺言書が必要です。相続人の間で仲が悪い、疎遠であるケースでも遺言書を作成しておいたほうが良いでしょう。 遺言書を作成しても、遺留分を侵害している、遺言者が高齢・認知症である際にはトラブルになってしまう可能性があります。遺言書の作成では、相続に強い弁護士に相談してみましょう。

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