遺言が偽造・変造された場合に、当事者としてどう争うかを解説いたします
ざっくりポイント
  • 偽造・変造された自筆証書遺言は無効である
  • 遺言の偽造・変造を防止するには、公正証書遺言がおすすめ
  • 遺言の無効を裁判で争う場合は、遺言無効確認訴訟を提起する
目次

【Cross Talk 】遺言の偽造・変造にはどう対処すればいいの?

遺言書を書こうと思うのですが、偽造・変造されないか心配です。

自筆証書遺言は自分で遺言書を作成できますが、偽造・変造されやすいのがデメリットです。偽造・変造を防止するにはいくつかの方法があるほか、遺言書の偽造・変造について裁判で争うこともできます。

遺言の偽造・変造への対策法や、裁判で争う方法などがあるのですね。それぞれ詳しく教えてください!

遺言の偽造・変造の防止法や、争い方について解説いたします。

せっかく遺言書を作成したのに、遺言の内容が気に入らなかった相続人などによって、遺言書が偽造・変造されないか心配になるかもしれません。 自分で遺言書を作成する自筆証書遺言の場合、遺言書の偽造・変造が行われやすいというデメリットがあります。 しかし、自筆証書遺言の保管制度を利用したり、裁判で遺言の無効を争ったりなど、遺言の偽造・変造に対抗する方法はいくつかあります。 そこで、遺言の偽造・変造への対策法や、裁判で争う方法などを解説いたします。

遺言が偽造・変造されるケース

知っておきたい相続問題のポイント
  • 偽造・変造された自筆証書遺言は無効である
  • 裁判所が遺言書を検認しても、それによって偽造・変造が有効になるわけではない

父親の押印のある遺言書が見つかったのですが、どうも怪しいのです。遺言が偽造・変造されることはありますか?

本人の印鑑を利用して偽の遺言書を偽造したり、本人が作成した遺言書の文章を勝手に変造したりなどのケースが考えられます。

遺言が偽造されるケース

遺言の偽造とは、遺言書を作成する権限のない者が、遺言書を作成することです。 遺言の偽造の例としては、同居人が印鑑などを利用して、本人が作成した遺言書であるかのように偽るケースが考えられます。

例えば、父親と同居している長男が、父親の実印を発見したので、父親が書いたかのように偽って遺言書を作成するなどです。 遺言の偽造は、主に自筆証書遺言において問題になります。

自筆証書遺言とは、遺言者(遺言をする)本人が自分で遺言書を作成する方式です。 自筆証書遺言においては、本人が全文・氏名・日付などを自書したうえで、本人が押印をしなければなりません(民法第968条)。 本人以外が本人の印鑑を使用したり、本人を偽って文章を作成したりした場合は、自筆証書遺言の要件を満たさないので、遺言の効力が認められないのです。

遺言が変造されるケース

遺言の変造とは、権限のない者が正しい遺言に変更を加えることで、偽りの遺言にしてしまうことです。

例えば、父親と長男が同居しているケースで考えてみましょう。 父親が作成した遺言書を長男が偶然発見したところ、内容が気に入らなかったことから、長男が遺言書の内容を勝手に書き換えてしまうなどです。 父親が作成した遺言書に変更を加える権限があるのは、遺言者である父親自身です。権限のある父親自身が、遺言書に変更を加えることは問題ありません。

しかし、長男は父親の遺言書を変更する権限がないので、長男が遺言書に勝手に変更を加えた場合は、遺言書の変造にあたり得ます。 偽造は、作成権限がないにもかかわらず遺言書を作成することなどをいいます。また、変造は、作成された遺言書に変更を加えることをいいます。ただ、遺言書の本質的な部分を超える改変で全く異なる価値を 作り出されたと評価される場合には偽造に該当します。

検認されたとしても有効となるものではない

裁判所によって検認されたとしても、偽造・変造された遺言が有効になるわけではありません。

検認とは、家庭裁判所が自筆証書遺言について公的に確認するための手続きです。 自筆証書遺言を発見した者は、遺言者が亡くなったことを知った後に遅滞なく、家庭裁判所に対して検認を申し立てなければならないと規定されています(民法第1004条第1項)。 家庭裁判所による検認は、相続人に対して遺言が存在することと、遺言の内容について知らせるために行われます。

また、検認の時点において遺言書がどのような状態であったかを確定することで、遺言書の偽造・変造を防止する役割もあります。 ただし、検認は遺言書の状態を明確にするために行われるものなので、検認が行われたとしても、それによって偽造・変造された遺言書が有効になるわけではありません。

遺言の偽造・変造が疑われる場合の対応方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 公正証書遺言であれば、遺言の偽造・変造を防止できる
  • 遺言の偽造・変造を裁判で争うには、遺言無効確認訴訟を提起する

遺言を作成しようと思うのですが、偽造されないかが心配です。防止に効果的な方法はありますか?

遺言の偽造・変造を防止するには、公正証書遺言がおすすめです。自筆証書遺言の場合は、保管制度を利用する方法もありますよ。

公正証書遺言は偽造・変造できない

遺言の偽造・変造を効果的に防ぐには、公正証書遺言を作成する方法があります。

公正証書遺言とは、民法が定める遺言を作成するための方式の一つで、公証役場という公的機関において、公証人という特別な専門家である公務員の立ち会いのもとで作成されます。 公正証書を作成するには公証役場での手続きが必要で、作成には費用がかかりますが、専門家によって作成されるだけでなく、原本が公証役場で保管されるので、偽造・変造のリスクが低いのがメリットです。

公正証書は原本以外に正本や謄本がありますが、正本や謄本を遺言者名義の印鑑などで訂正したとしても、原本としての効力が認められるわけではないので、偽造・変造の防止に役立ちます。

自筆証書遺言書保管制度を利用した場合も同様

自筆証書遺言の偽造・変造を防止する方法として、「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方法があります。

自筆証書遺言書保管制度とは、法務局が自筆証書遺言を保管する制度であり、2020年7月10日に施行されたものです。 自筆証書遺言は従来、遺言者の自宅などで保管されることが多く、遺言書の紛失や、遺言書が偽造・変造されたりなどのトラブルが少なくありませんでした。

自筆証書遺言書保管制度を利用すると、法務局によって本人確認が行われるほか、自筆証書遺言者の原本が法務局に保管されているので、遺言書の偽造・変造を防止しやすいのがメリットです。 また、制度を利用すると裁判所による検認が不要になります。

自筆証書遺言・秘密証書遺言の偽造・変造が疑われる場合には遺言無効確認

自筆証書遺言や秘密証書遺言において、偽造・変造が疑われる場合は、遺言無効確認訴訟を提起する方法があります。

遺言無効確認訴訟とは、偽造や変造などによって遺言の有効性に疑いがある場合に裁判を起こし、遺言が無効になるかどうかを裁判所に判断してもらう訴訟のことです。 ただし、遺言の有効性を争う場合は、原則として、まずは調停を申し立てることが必要になります。

調停とは、客観的・中立的な立場である調停員を交えて、話し合いでの解決を目指す手続きです。 調停が成立しなかった場合、遺言無効確認訴訟を提起して、遺言の有効性を裁判所に判断してもらいます。 裁判の結果、遺言が無効であるとの判決が確定すれば、無効とされた部分については、遺産分割協議(相続人が話し合い、遺産をどのように分割するかを決める手続き)をやり直さなければなりません。 遺言無効確認訴訟においては、筆跡鑑定などの専門性の高い主張・立証が重要になってくるので、相続問題の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

自筆証書遺言は自分で遺言書を作成できるのがメリットですが、偽造・変造されやすいデメリットもあります。 遺言書の偽造・変造を防止するには、公正証書遺言の作成や、自筆証書遺言書保管制度を利用したりなどの対策が重要です。 遺言書が偽造・変造された疑いがある場合は、相続の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

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