代襲相続と相続放棄の間に、どのような関係性があるのかを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 代襲相続とは、本来の相続人が相続できない場合に、相続人の子どもなどが相続する制度
  • 相続放棄とは自分の相続権を放棄して、財産を一切相続しないとする制度
  • 相続放棄をした場合、代襲相続は発生しない。代襲相続人になった場合、相続放棄は可能
目次

【Cross Talk 】代襲相続と相続放棄はどんな関係があるの?

相続の手続きにおいて、代襲相続と相続放棄という制度があると聞きました。どのような関係がありますか?

少々ややこしいのですが、子どもが相続放棄をした場合、孫に代襲相続は発生しません。これに対し、代襲相続をする場合には、相続放棄をすることは可能です。

相続放棄と代襲相続は、それぞれ関係性があるんですね。それぞれの制度についても詳しく教えてください!

代襲相続と相続放棄の概要や、どのような関係にあるのかについて解説いたします。

相続に関する手続きとして、代襲相続相続放棄という2つの制度があります。 代襲相続をしても相続放棄はできる一方で、相続放棄をした場合は代襲相続の対象にならないなど、2つの制度は関連性があります。 そこで今回は、代襲相続と相続放棄の関係について解説いたします。

代襲相続・相続放棄の概要

知っておきたい相続問題のポイント
  • 代襲相続とは、本来の相続人が相続できない場合に、相続人の子どもなどが相続する制度である
  • 相続放棄とは相続権を放棄して、財産を一切相続しないとする制度である

代襲相続と相続放棄について、それぞれの概要を教えてください。

代襲相続とは、死亡などによって本来の相続人が相続できない場合に、その相続人の子どもなどが相続することです。相続放棄とは、相続権を放棄して一切相続しないことにする制度です。

代襲相続とは

まず、代襲相続とはどのようなものかを確認しましょう。

代襲相続とは

代襲相続とは、本来相続人となるはずの人が既に死亡していた場合などに、その子どもなどが相続人となる制度です(民法887条2項)。本来の相続人に代わって代襲相続する人を、代襲者または代襲相続人といいます。本来相続人となるはずであった人を、被代襲者といいます。

代襲相続が発生するのはどのような場合か

代襲相続が発生するのは、次の3つの場合です。
  • 相続人の死亡
  • 相続人が相続欠格に該当
  • 相続人が相続人の廃除をされた
例えば、父A・子B・孫Cがいるとしましょう。この場合、父Aが亡くなると相続するのは子Bで、孫Cは父Aの相続人ではありません。しかし、父Aが亡くなる前に子Bが死亡・相続欠格に該当・相続人の廃除をされた場合、子Bは父Aが後に亡くなった場合に相続人にはなれません。そこで、孫Cが子Bの分を代襲相続することになります。

なお、子Bが父Aの相続について相続放棄をした場合でも、同様に相続人とはなれないのですが、相続放棄の場合には代襲相続は発生しません。そのため、孫Cは父Aの財産を相続することはありません。

代襲相続人となる範囲

代襲相続人となる範囲については注意が必要です。

まず、代襲相続が子どもについて生じる場合、その範囲は限定されていません。そのため、子どもが亡くなった後に、その子ども(孫)も既に亡くなっているなどで相続人でない場合には、その子(ひ孫)も代襲相続をすることができます(民法887条3項:再代襲相続)。子どもの代襲相続について制限はないので、ひ孫が亡くなっている場合にはその子ども(玄孫)がも代襲相続ができます。

これに対して兄弟姉妹が相続人である場合、兄弟姉妹が先に亡くなった場合の甥・姪は代襲相続をすることができます(民法889条2項は、民法887条2項を準用している)。しかし、兄弟姉妹については再代襲相続に関する民法887条3項を準用していないので、再代襲相続については認めていません。そのため、甥・姪の子どもについては代襲相続によって相続することはありません。

代襲相続をするのに手続きは不要

代襲相続については、特に手続きは不要です。 そのため、死亡・相続欠格に該当・相続人の廃除があった段階で、代襲相続をする人が相続人となります。 もっとも、相続欠格に該当しているか争いがあるような場合には、裁判で確認請求訴訟を行う必要があります。また、相続人の廃除は家庭裁判所に申し立てて行う必要があります(遺言で行う場合には遺言書を作成している必要があります)。これらの前提となる死亡・相続欠格・相続人の廃除のために手続きが必要な場合もあるので注意をしましょう。

相続放棄とは

相続放棄とはどのようなものでしょうか。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続権を放棄して、財産を一切相続しないことにする制度です。 相続放棄をすると、被相続人の財産を一切相続しなくなる効果が生じるので、借金を相続したくない場合や、被相続人と疎遠だったので財産を受け継ぎたくない場合などに有効です。 相続放棄をした相続人は、最初から相続人ではなかったものとして法的に扱われます(民法939条)。 相続の対象となる財産を相続財産といいますが、相続財産は預貯金や不動産などのプラスとなる財産だけでなく、借金や負債などのマイナスとなる財産も含まれます。 相続放棄をすると、相続財産を一切相続できなくなるので、マイナスの財産を相続せずにすむだけでなく、プラスの財産も相続できなくなります。

どのような場合に相続放棄をするか

相続放棄は主に次の2つの場合で用いられます。
  • 借金や債務などのマイナスの財産が多い場合
  • 相続争いに巻き込まれたくないなどで相続人となりたくない場合
被相続人が多額の借金をしていた場合や、個人事業主で債務のほうが多く事業の継続が難しいような場合には、借金・債務を負わないために相続放棄をします。実際にはこの借金や債務などのマイナスの財産を相続しないために相続放棄をする人が圧倒的に多数です。

また、借金や債務などが多い場合以外で、相続人になりたくない場合でも相続放棄が用いられます。例えば、他の共同相続人が激しく対立しているような場合に、共同相続人である場合には相続争いに巻き込まれてしまうことになります。このような場合に相続放棄をすることで相続人ではなくなるので、相続争いから外れることが可能です。

相続放棄をするメリット・デメリット

相続放棄をするメリットとしては次の3つが挙げられます。
  • 被相続人の債務を相続しなくて良い
  • 相続争いに巻き込まれない
  • 相続人を整理することができる
まず相続放棄によって、相続人ではなくなるので、借金・債務を相続しなくて済むのは大きなメリットです。 また、相続人ではないので、相続争いに巻き込まれなくなるのも上述の通りで、こちらも大きなメリットといえます。 さらに、複数相続人がいる場合に、相続放棄をすることで相続人を整理することができ、相続する人を絞ることが可能です。これは特に一家で事業をしているような場合にメリットとなります。 一方でデメリットとしては次の3つが挙げられます。
  • 全ての遺産を取得できない
  • 手続きが必要
  • 期間制限がある
相続放棄をすると相続人ではなくなるので、遺産に対して権利を主張することができなくなります。そのため、実家があるような場合や、どうしても取得したい形見がある場合、少額でも金銭を相続したいという場合にでも、相続できません。

また、相続放棄をするためには、家庭裁判所での手続きが必要で、その手続きには3ヶ月の期間制限があるということも知っておきましょう。

相続放棄には期限がある

相続放棄には期限があります。 相続放棄は前述した通り、自己のために相続開始があったことを知ったとき時から3ヶ月以内に行う必要があります(民法915条)。

この3ヶ月の期間のことを熟慮期間と呼んでいます。 熟慮期間内に相続放棄の手続きができない場合には、熟慮期間の伸長という手続きによって期間を延ばすことが可能です。

また、債権者が3ヶ月を超えてから請求してくることもあり、このような相続放棄を3ヶ月以内にできないことがやむを得ないような場合には、3ヶ月を超えても相続放棄をすることができます。

相続放棄の手続き

相続放棄の手続きは次のような流れで行われます。
  • 相続放棄の申述(申述書・添付書類の提出)
  • 家庭裁判所から照会書・回答書が送られてくる
  • 回答書を家庭裁判所に返送
  • 問題なければ相続放棄が受理され相続放棄申述受理通知書が家庭裁判所から送られてくる
債権者から被相続人の借金・債務の請求を受けている場合には、相続放棄申述受理通知書をコピーして送付することになります。

代襲相続と相続放棄の関係

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  • 相続放棄をした場合は、代襲相続は発生しない
  • 代襲相続人になった場合も相続放棄は可能

代襲相続と相続放棄の関係について、簡潔に教えてください。

まず、相続放棄をした場合、代襲相続は発生しません。これに対し、代襲相続人になった場合には、通常の相続人と同様に、相続放棄をすることができます。

相続放棄をした場合には代襲相続は発生しない

相続放棄をした場合、代襲相続は発生しません。 例えば、被相続人である祖父が亡くなって、その子どもが相続人となる場合で見てみましょう。 被相続人の財産を受け継ぎたくないことから、子どもが相続放棄をした場合、相続放棄をした子どもに孫がいたとしても、孫は代襲相続人にはなりません。 相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったとみなされるので、相続放棄をした相続人には相続権自体が発生しないと考えることができます。 代襲相続は相続人の相続権が代襲相続人に移る制度といえますが、相続放棄をすると相続権を喪失するので、代襲相続人に引き継がれる相続権もなくなります。

代襲相続人は相続放棄できる

代襲相続人になった場合でも、必ず財産を相続しなければならないわけではありません。代襲相続人は相続放棄をすることができます。 何らかの理由で財産を相続したくない場合は、代襲相続人も通常の相続人と同様に、相続放棄ができます。 例えば、被相続人である祖父が亡くなる前に、相続人である子どもが死亡していたので、孫が代襲相続をする場合で見てみましょう。 生前に祖父と仲が悪かったので財産を受け継ぎたくないなど、何らかの理由で代襲相続人が財産を相続したくない場合は、相続放棄をすることができます。 代襲相続人が相続放棄をした場合、通常の相続放棄と同様に、相続財産の一切を相続しなくなります。

父親の相続で相続放棄をしても祖父の代襲相続は可能

父親の財産を相続する際に相続放棄をしていたとしても、祖父の財産について代襲相続することは可能です。 被相続人である祖父が亡くなって相続が発生するよりも前に、祖父の子どもが亡くなっていた場合は、孫が代襲相続人となります。

祖父にとっての子どもは孫にとって父なので、子どもが亡くなった場合は、孫は父の財産の相続人になります。 もし、自分の父の財産を受け継ぎたくないとして、孫が父(祖父からみて子ども)の財産の相続放棄をした場合でも、その後に祖父が亡くなった場合は、孫は祖父の財産を代襲相続できます。

父親の相続で相続放棄をして代襲相続人も債務を負っている場合にはあらためて相続放棄が必要

父親の相続において相続放棄をしたとしても、代襲相続の際に債務を相続することになる場合は、あらためて相続放棄をする必要があります。 父親の債務を相続したくない場合は、父親が死亡して相続が発生した際に相続放棄をすれば、債務を相続せずにすみます。

しかし、祖父が亡くなって孫として代襲相続人になった際に、祖父の債務を相続することになる場合は、あらためて相続放棄をしなければなりません。 相続放棄は被相続人ごとに判断されるので、父親の相続の際に相続放棄をしたとしても、祖父の代襲相続には以前の相続放棄の効果が及ばないからです。

次の相続人が誰かをパターン別に確認

相続放棄をすると相続放棄をした人は最初から相続人とならなくなります。 この場合、他に法定相続人となる人がいる場合、次の順位の相続人が相続人となることがあるのでパターン別に確認しましょう。

子どもが全員相続放棄をして親などの直系尊属が相続人になる場合

被相続人の子どもが全員相続放棄をした場合で、まだ親が存命であれば、第二順位の相続人として親などの直系尊属が相続人となります。 配偶者が存命である場合には配偶者と共同相続人になります。

子どもが全員相続放棄をして兄弟姉妹が相続人になる場合

被相続人の子どもが全員相続放棄をした場合で、親は既に生存しておらず、兄弟姉妹がいる場合には、第三順位の相続人として兄弟姉妹が相続人となります。 配偶者がいる場合に共同相続人となるのは、親が相続人になる場合と同様です。

親・兄弟姉妹と相続人が順次移る場合

被相続人の子どもが全員相続放棄をして、親が相続人となった後に相続放棄をした場合、兄弟姉妹が居れば兄弟姉妹に相続人が順次移ることになります。

相続人が一人もいなくなるとどうなるか

相続人が一人も居なくなると、最終的に遺産は国庫に帰属することになります(民法959条)。 なお、例えば、内縁の妻のような、相続人ではないものの亡くなった人の療養介護に努めた者などに対して遺産を分け与えることができる、特別縁故者という制度もあります(民法958条の2)。

相続放棄をした連絡をしたほうが良い

相続放棄をした場合、他の相続人に連絡をしたほうが良いことを知っておいてください。 以上のように相続放棄をした場合で、他の法定相続人の立場に居る人がいる場合、その人が相続人になることがあります。 相続放棄をした事実は何もしなければ高順位の相続人には伝わりません。債権者がいる場合には、突然後順位の相続人に対して督促の連絡が来ることになり、場合によっては家族間の関係が悪化する原因にもなります。 相続放棄をして相続人となる人がいる場合には、連絡をしてトラブルになることを避けるようにしましょう。

まとめ

代襲相続とは、相続が発生する前に本来の相続人が死亡していた場合などに、相続人の孫などが相続人となる制度です。 相続放棄とは、相続権を放棄して財産を一切相続しないようにする制度です。 代襲相続をしても相続放棄することはできますが、相続放棄をした場合は代襲相続の対象になりません。 代襲相続や相続放棄など、相続に関する制度について悩みやトラブルがある場合は、相続問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。

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この記事の監修者

弁護士 田中 理莉子第二東京弁護士会
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