死亡退職金と相続との関係について詳しく解説します!
ざっくりポイント
  • 死亡退職金は原則として相続財産に当たらない
  • 死亡退職金が相続財産に当たらない場合は相続放棄をしても受け取ることができる
  • 死亡退職金が特別受益に当たる場合がある
  • 死亡退職金も相続税の関係では相続財産とみなされる
目次

【Cross Talk】死亡退職金は相続財産に含まれるの?

会社員をしていた夫が急死しました。会社から死亡退職金が出るという連絡があったのですが、死亡退職金も相続人で分ける必要があるのでしょうか?

まず、退職金が支給される根拠を確認してください。退職金支給規定があり、そこで受給権者の範囲、順位が定められている場合、一般的には遺族の生活保障を目的とするものであり、受給権者固有の権利であって、相続財産には含まれないと考えられています。 したがって、ご主人の会社に退職金支給規定があり、配偶者に支給されることになっていれば、あなたが自分の権利として退職金を受給することになりますので、他の相続人に分ける必要はありません。

わかりました。さっそく確認してみます!

死亡退職金は相続放棄をしても受け取ることができる?

会社員として働いていた方が在職中に死亡した場合、遺族に死亡退職金が支給されることがあります。 親族の死亡により遺族が財産を取得するととらえると相続のようにもみえますが、相続だとすると相続放棄をしても受け取ることができるのか、他の相続人との間で不公平が生じないかといった問題があります。 そこで今回は、死亡退職金について、相続財産に含まれるのか、相続放棄や特別受益、相続税との関係はどうなっているのかなど網羅的に解説します。

相続財産とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 被相続人の財産のうち相続によって承継される財産をいう
  • 被相続人の一身に専属するものは相続財産にあたらない

相続財産という言葉はよく聞きますが、具体的にはどういうものが相続財産にあたるのですか?

被相続人の財産のうち相続や遺贈によって承継される財産を、相続財産といいます。

被相続人の財産のうち相続や遺贈によって相続人や受遺者(遺贈を受ける者)に承継される財産を、相続財産といいます。 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされているので(民法896条本文)、被相続人のプラスの財産だけでなくマイナスの財産も含めた一切の財産が、相続財産ということになります。 ただし、「被相続人の一身に属したもの」は、例外的に承継されません(民法896条ただし書き)。 「被相続人の一身に属した」権利義務とは、特定の人だけが使うことができる権利や、特定の人だけが負う債務です。 たとえば、評論家に講演を依頼したが講演会の前に死亡した場合、評論家の相続人が代わりに講演をし、講演料をもらうというわけにはいきません。また、離婚した前妻との間の子どもに養育費を支払っていた夫が死亡した場合、現在の妻が夫の養育費を支払う義務を相続することもないのです。

死亡退職金は相続財産に含まれる?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 死亡退職金は原則として相続財産に含まれない
  • 相続財産に含まれる場合もある

相続財産についてはわかりました。それでは死亡退職金は相続財産に含まれるのですか?

退職金規定が遺族の生活保障を目的としており、民法と別の立場で受給権者を定めたものである場合は、受給権者固有の権利であり、相続財産ではないとされています。死亡退職金は原則として相続財産には含まれないと言っていいでしょう。

原則として相続財産には含まれない

退職金には、一般的に給与の後払いとしての性格があると言われていますが、死亡退職金も給与の後払いであるとすると、もともとは死亡した人の権利であり、それを相続人が相続するのだと考えることもできます。

他方、死亡退職金規定で、死亡退職金の受給権者として内縁を含む配偶者が第1順位とされるなど、民法の相続のルールと異なる定めがされていることもあり、このような場合は相続ではないと考えることもできそうです。 この問題について、最高裁は、次のような判断を示しました。

日本貿易振興会事件(最判昭和55・11・27判時991・69) 死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であって、配偶者があるときは子は全く支給を受けないこと(中略)など、受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なった定め方がされているというのであり、これによってみれば、右規程は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得するものと解するのが相当であり、そうすると右死亡退職金の受給権は相続財産に属さず、受給権者である遺族が存在しない場合に相続財産として他の相続人による相続の対象となるものではないというべきである。

通常、死亡退職金は退職金規定等に基づいて支給されるものであり、退職金規定には受給権者が指定されていることが多いので、死亡退職金は原則として相続財産には含まれないと考えていいでしょう。

例外として相続財産に含まれる場合がある

先ほど紹介した最高裁の判例の趣旨からすると、退職金規定が遺族の生活保障のためのものではなく、民法と同じ立場で受給権者を定めたものといえる場合、受給権者固有の権利ではなく相続財産に含まれると考える余地があります。

死亡退職金と相続放棄の関係

知っておきたい相続問題のポイント
  • 死亡退職金が相続財産に含まれるかがポイント
  • 相続財産に含まれない場合は相続放棄しても死亡退職金を受け取ることができる

亡くなった夫には多額の借金があったので相続放棄を考えていたのですが、会社から死亡退職金が支給されるという連絡がありました。相続放棄をしても死亡退職金を受け取ることはできますか?

死亡退職金が相続財産に含まれない場合は、相続放棄をしても死亡退職金を受け取ることができます。

相続放棄しても死亡退職金を受け取れる場合

相続放棄とは、自己に対する関係で不確定的にしか帰属していなかった相続の効果を確定的に消滅させる相続人の意思表示のことをいいます。相続放棄をすることで、初めから相続人ではなかったものとみなされます。

「相続財産とは」で解説したとおり、相続人は被相続人のマイナスの財産も承継するので、被相続人に多額の負債がある場合などは、相続放棄が利用されることが多いのです。

もっとも、相続放棄の効果はあくまではじめから相続人ではなかったと扱われるだけですから、相続と関係のない事柄については相続放棄をしたことによる影響はありません。 したがって、上記で解説したとおり死亡退職金の受取人が定められている場合には、相続放棄をしても死亡退職金を受け取ることができます。

相続放棄したら死亡退職金を受け取れない場合

「相続放棄しても死亡退職金を受け取れる場合」とは逆に、死亡退職金が例外的に相続財産に含まれる場合、相続放棄をすると初めから相続人ではなかったことになるので、死亡退職金を受け取ることもできなくなります。

死亡退職金と特別受益の関係

知っておきたい相続問題のポイント
  • 一部の相続人が贈与などで特別の利益を得ていた場合、特別受益として相続時に相続人間の公平を図る
  • 死亡退職金が特別受益に準じて扱われる可能性がある

死亡退職金が相続財産に含まれないのなら、死亡退職金をうけとったうえでさらに相続もできるということですよね?なんだか一人だけ得をしているみたいで不公平な気がするのですが…

そうなりますね。一部の相続人が被相続人から贈与などで特別の利益を得ていた場合、相続時にその贈与を考慮した計算をして、相続人間の公平を図っています。

この特別な利益のことを特別受益と言います。死亡退職金は、被相続人からの贈与ではありませんが、他の共同相続人との間の不公平が、特別受益を定めた民法の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、特別受益の規定が類推適用され、死亡退職金を受け取ったことが相続分の計算において考慮される可能性はあります。

亡くなった方の配偶者が、退職金規定にもとづいて固有の権利として死亡退職金を受給する場合、配偶者は別途、(遺言がなければ)相続財産の2分の1を相続できます。 これは他の相続人との関係で不公平とはいえないのでしょうか?

相続人間の不公平を是正する制度に、「特別受益」というものがあります(民法903条)。 特別受益とは、一部の相続人が被相続人から遺贈や贈与などで利益を受けたことをいいます。 特別受益がある場合、被相続人の相続時の財産に特別受益として得た遺贈や贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、各自の相続分を計算することになっています。 死亡退職金が支給される場合、死亡退職金を特別受益として扱い、相続人間の公平を図る必要があるでしょうか?

この点について、現時点で最高裁の判例はないようですが、次のような裁判例が参考になります。 まず、死亡退職金ではなく、養老保険契約に基づく死亡保険金についてですが、最高裁は次のような判断を示しています。なお、養老保険契約に基づく死亡保険金請求権も、保険金受取人が自らの固有の権利として取得するもので、これらの者の相続財産に属するものではないとされています(最高裁昭和40・2・2民集19・1・1)

最高裁平成16・10・29民集59・8・2243 養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。

もっとも、上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は、被相続人が生前保険者に支払ったものであり、保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。

※ここでは、持ち戻しの対象となる、とは、特別受益として相続分の計算を行う、という意味と考えてください。

最高裁が上記の判断を示した後、下級審レベルでは死亡退職金も特別受益に準じて持ち戻しの対象になるかが争われたものがあります。

たとえば、東京地裁平成25・10・28民集70・2・212では、「死亡退職金についても、生命保険金と同様に、受取人である相続人が自らの固有の権利として取得するものである場合において、他の共同相続人との間に民法903条の趣旨に照らして是認することができない特段の事情が存在するときは、同条の類推適用による持戻しの対象となると解するのが相当である。」としたうえで、本件においては「相続人間に生じる不公平が民法903条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存するとはいえない。」との結論を出しました。

この事件のように、裁判所の実務では「特段の事情」はなかなか認められません。 ですから、死亡退職金が特別受益に準じて扱われることは、理論的にはありえますが、実際にはそれほど多くないといえるでしょう。

死亡退職金と相続税との関係

知っておきたい相続問題のポイント
  • 被相続人の死亡後3年以内に確定した死亡退職金は相続財産とみなされ相続税の課税対象になる
  • 「500万円×法定相続人の数」までは課税されない

死亡退職金が相続財産に含まれない場合は、相続税も払わなくていいんですか?

いいえ、税法上、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金は、相続財産とみなされることになっています。ただし、死亡退職金の全額が課税対象になるわけではなく、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)以下の場合は課税されません。

死亡退職金が相続財産に含まれないとしても、相続税の関係で注意が必要です。 というのも、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金は、税法上、相続財産とみなされるからです(相続税法3条1項2号)。 このように、民法上相続財産ではないが、税法上相続財産とみなされる(相続財産として扱われる)ものを「みなし相続財産」といいます。死亡退職金以外には、生命保険金などもみなし相続財産とされています。

ただし、相続財産とみなされると言っても、死亡退職金の全額が課税対象になるわけではありません。 すべての相続人が受け取った死亡退職金の合計額が非課税限度額(500万円×法定相続人の数)以下であれば、相続税は課税されません。

いいかえれば、すべての相続人が受け取った死亡退職金の合計額が非課税限度額を超えるときの超える部分の金額や、相続人以外の者が受け取った死亡退職金の金額が相続税の課税対象になります。 たとえば、相続人が配偶者、長男、次男、長女の4人の場合、相続人が受け取った死亡退職金の合計額が2000万円以下であれば、相続税の課税対象にならないということです。 ただし、相続人の中に相続放棄をした人がいる場合や、相続放棄した人が死亡退職金を受け取った場合など、計算が複雑になる場合もあるので、ご注意ください。

まとめ

死亡退職金と相続との関係等について解説しました。死亡退職金が原則相続財産には含まれないと言っても、例外はありますし、相続財産に含まれないとしても特別受益や相続税など複雑な問題があります。 判断に迷われたときは相続に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

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この記事の監修者

弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
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