自筆証書遺言に関する改正について確認しましょう
ざっくりポイント
  • 自筆証書遺言が利用しやすくなった改正について確認
  • 主な改正は、財産目録を自筆しなくてもよくなった、遺言書の保管の制度、遺留分に関する制度
  • 自筆証書遺言を作成する際の注意点
目次

【Cross Talk】自筆証書遺言が改正されて変わったと聞きました

自分の相続について準備をしているのですが、最近自筆証書遺言についての改正がなされたと聞いています。どのような改正がされたのでしょうか?

自筆証書遺言が使いやすくなるように法改正がされました。どのような改正があったか?また自筆証書遺言作成の注意点について確認しましょう。

自筆証書遺言が使いやすくなった改正内容と、なお自筆証書遺言に潜む危険について確認しよう。

自筆証書遺言については昨今の法改正により、財産目録を自書しなくて良くなる、遺言書の保管制度が新設されるなど、利用しやすいものになりました。 また、遺言に関連して、遺留分に関する規定も改正されました。 もっとも、財産目録を自書以外の方法で作成可能になったことを除き、自筆証書遺言の作成要件について大きな変更はございません。自筆証書遺言は、自分一人で作る場合には、作成要件を充たさずに無効となる恐れがありますので、無効にならないように注意が必要です。自筆証書遺言作成の注意点を改めて確認しましょう。

自筆証書遺言に関する法改正

知っておきたい相続問題のポイント
  • 自筆証書遺言に関する法改正

自筆証書遺言について、どのような改正がされたのですか?

財産目録を自筆しなくてもよくなった、遺言書保管の制度が新設されたなど、自筆証書遺言を利用しやすくなる改正がありました。また、遺言に関連して、遺留分に関する制度も改正されたので併せてご説明いたします。

昨今、市民関係を規律する根本の法律である民法全体が、時代にそぐわないなどを理由に改正されており、相続に関する規定もたくさん改正されています。 参考:相続に関する改正について「相続法が改正された!いつから?今までと何が変わった?」 自筆証書遺言に関してもいくつか重要な法改正がありました。また、自筆証書遺言を作成する際にも関係してくる遺留分に関する改正もありました。 以下、その概要について見てみましょう。

遺産目録についての法改正

自筆証書遺言は、全文を自書、すなわち手書きで筆記することが要件となっています。 遺産が少ない場合にはあまり負担にはならないでしょう。しかし、遺産が膨大な量になる場合には、財産目録を作成して、その目録中のどの財産を誰に相続する・遺贈する、という遺言を作成することになりますので、 一言一句記載漏れや誤記がないように遺言を作成するのは大変でした。

そこで、遺産目録についてのみパソコンなどで作成しても良いとする改正が行われました。ただし、作成した遺産目録には、各ページに署名・捺印が必要になります。 また、遺産目録を作るような場合には通常自筆証書遺言の最後に着けてホッチキス止めをすることになりますが、偽造・改ざんされたものではないことを示すために、割印をするようにしましょう。

遺言書の保管に関する法改正

自筆証書遺言を自分一人で作成した場合、一般的にはご自宅で保管される方が多いでしょう。そして、遺言書の改ざん・偽造を防止するために、できるだけ人目につかない場所に隠しておく方もいらっしゃるでしょう。 ただ、人目につかない場所に隠しておくと、死後誰にも見つけてもらえず、遺言をした意味がなくなってしまう恐れがあります。

このような恐れを軽減するために、自筆証書遺言書を法務局で保管してもらう制度が2020年7月1日からスタートします。概要としては、事前に被相続人が法務局に遺言書の保管を申請することで、法務局が遺言書を保管してくれる制度です。そして、被相続人の死後、相続人が法務局に問い合わせをすると、遺言書を見られることになり、他の相続人にも遺言書の存在が通知されます。これによって相続人全員が遺言書があること、その内容を確認することができ、法務局で保管しているため偽造・改ざんがされる恐れも軽減します。

詳しくは:「【令和2年7月10日スタート】自筆証書遺言書保管制度ってどんな制度?」こちらのページで詳しくお伝えしておりますので、参照してください。

遺留分に関する法改正

自筆証書遺言に限らず、遺言書を作成する場合には、遺留分との調整が問題となります。 遺留分とは、遺産について、相続人に最低限認められている持ち分のことをいい、兄弟姉妹以外の相続人に認められています。生前贈与・遺言・遺贈によって自分が相続できるものが遺留分よりも少なくなったときには、相続をした人・遺贈を受けた人に金銭請求をすることができます。

遺留分が侵害された場合には、従来であれば、「遺留分減殺請求権」という、生前贈与・遺言・遺贈を取り消す権利が認められていました。をしかし、たとえば遺産に不動産が含まれていた場合、生前贈与・遺言・遺贈を取り消すと、他の相続人と不動産を共有することになるため、適当な解決にならないケースも少なくありませんでした。 そこで、遺留分を侵害する生前贈与や遺贈を取り消すのではなく、遺留分侵害された金額を請求できるように改正されました。

自筆証書遺言を自分一人で作成した場合、専門家が遺留分侵害の有無について判断していないため、従来は遺留分減殺請求をされた場合には、どのように対応するか苦慮をすることもありました。 しかし、法改正により、遺留分侵害額を金銭請求できるようになりましたので、ある程度紛争の解決がしやすくなりました。 遺留分を侵害するおそれのある自筆証書遺言を作成する場合、金銭請求に対応する現金を残しておく方が良いでしょう。

自筆証書遺言を作成する際の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 自筆証書作成をする際に無効とならないように注意が必要
  • 弁護士に相談をするメリット

自筆証書遺言に関する改正があったとのことなのですが、自筆証書遺言は無効になる可能性があるというデメリットも緩和されたのでしょうか。

自筆証書遺言の要件について若干緩和されたものの、たとえば日付を書かなければならない、署名捺印をしなければならない、といった作成要件については改正されていません。 無効となる場合の多くが、自書で遺言を作成していない、作成日を記載していない、署名押印を忘れているなどの様式に漏れが生じている場合です。できれば弁護士に相談するようにしたほうが良いでしょう。

遺言書の作成要件については、財産目録を自書以外の方法で作成可能になった点を除き、改正されていません。自筆証書遺言を作成する場合、できるだけ弁護士に相談した方が良いでしょう。

自筆証書遺言の作成要件については改正されていない

遺言は民法の遺言に関する法律に定めた様式に従って行う必要があります。 公正証書遺言は公証人が作成するので、様式をみたさずに無効になるといったことはまずありません。しかし、自筆証書遺言は、一人で作成する場合には、民法の規定に従った様式をみたしておらず無効となる危険性があります。

自筆証書遺言の作成要件は、①全文自書、②作成の日付が記載されていること、③署名押印があることの3つです。 改正によって、財産目録については自書である必要がなくなりましたが、そのほかの要件は変更されておりませんので、なお注意が必要です。

遺言書の保管や遺言執行を弁護士に依頼することも

自筆証書遺言の場合、上述のように、自分で保管していると、改ざん・偽造のおそれや、誰にも見つからないという恐れがあります。 法局による遺言書の保管制度もありますが、弁護士に依頼すれば自筆証書遺言を保管してくれることもあります。また、遺言書を作成しても、誰かが遺言書の内容通りに遺産を分配する必要があります。弁護士を遺言執行者(遺言の内容を実行する者)に指定しておけば、相続人の負担軽減にもなります。

まとめ

このページでは、主に自筆証書遺言に関する改正点についてお伝えしてきました。 自筆証書遺言の利用を促すために改正がされ、より利用しやすいものになりました。しかし、自筆証書遺言の作成要件については、財産目録を自書以外の方法で作成可能になった点以外は改正されておりませんので、様式をみたさなかった場合に無効になるおそれがございます。 自筆証書遺言を作成する場合、弁護士等の専門家に相談しながら作成した方が良いでしょう。

この記事の監修者

弁護士 水本 佑冬第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 消費者委員会幹事
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