「遺贈」とは何か?相続・生前贈与・死因贈与といったものとどう違うのかを知ろう。
ざっくりポイント
  • 遺贈の基礎知識
  • 相続・生前贈与・死因贈与との違い
  • 遺贈についての注意点
目次

【Cross Talk】「遺贈」ってどんな制度?

今、子供たちへの相続をどうするか考えており、遺言について調べているのですが、その中で「遺贈」という言葉を目にします。どのようなものか教えてもらえますか?

遺贈は遺言によって死後に財産を譲ることをいいます。遺言をする際には必須の知識なので詳しく知っておくとよいでしょう。

遺言により遺産を譲る「遺贈」という制度について知ろう
相続というと相続人に法律上の規定によって遺産が受け継がれる、というイメージが強い方も多いと思うのですが、遺言を残しておくと相続の規定にとらわれず財産を残すことが可能になります。 遺言によって遺産を取得させることを「遺贈(いぞう)」と呼んでいます。 相続・生前贈与・死因贈与などの言葉の意味とそれぞれの違い、どのようにして遺贈をするか、遺贈をした場合の注意点などについて知っておきましょう。

遺贈とは

知っておきたい相続問題のポイント
  •  遺贈の基本的な仕組みを知る
  • 相続・生前贈与・死因贈与との違いを知る

遺贈ってどのような制度なのでしょうか?相続という言葉や他にも生前贈与とか死因贈与とかいろいろある言葉との違いってどのようなものですか?

いずれも相続人に財産が移転するものですが、遺贈は遺言の効力として財産が移転するものです。他の制度と併せて知っておきましょう。

遺贈とはどのような制度なのでしょうか?

遺贈の意味

「遺贈」とは、遺言によって自分の死後に特定の方に財産を譲り渡すことをいいます。 自宅を所有している、という状態は、法律上、ある方が自宅に対する所有権を有しているということと説明されます。 預貯金があるという状態は、ある方が銀行に預金してあるものを払ってくださいという、預金債権がある、ということと説明されます。 所有権や債権は人に帰属していますが、人はいずれ亡くなります。 亡くなった時に、何もなければ法律上の規定に従って相続が発生するのですが、自分の死後の遺産についても生前と同様に自由に処分をすることが認められています。 ただし、法形式としては遺言によって行うことになり、遺言によって行われる死後の財産移転のことを遺贈と呼んでいます。 遺贈の当事者については下記のような用語を用いますので確認しておいてください

用語

概要

遺言者 遺言をした方 亡くなった方
受遺者 遺言を受け取る方
遺贈義務者 遺贈があった場合に実際に財産を引き渡す義務を負う方(相続人など)
 

遺贈の種類

遺贈には次の特定遺贈と包括遺贈の2種類があるのを知っておきましょう。 特定遺贈というのは、財産を指定して遺贈をする方法で、例えば遺言で「死後にA不動産を遺贈する」という方法で行われるものです。
これに対して、遺産に対して割合を指定して遺贈する方法のことを包括遺贈と呼んでおり、例えば遺言で「死後にAに遺産のうち1/5を遺贈する」という方法で行われるものです。

遺贈と相続の違い

遺贈と「相続」というのはどのように違うのでしょうか。 相続は、民法の規定に従って行われる被相続人から相続人への財産の移転をいいます。 遺言がなく被相続人が亡くなった場合には民法の規定に従って相続がされることになりますので、遺言を前提として相続人又は相続人以外の人に特定の財産や割合を指定して財産を譲り渡す「遺贈」とは異なります。

遺贈と生前贈与の違い

遺贈は人の死後に財産の移転が行われるものですが、生前贈与は被相続人が生前に民法上の契約である贈与契約によって財産を譲り渡すことをいいます。
被相続人が亡くなってからの財産移転か、亡くなる前の財産移転かによって区別されることになります。 この2つの形式が違うことによって、遺贈の場合には相続税の対象となりますが、生前贈与は贈与税の対象になるといった違いがあります。

遺贈と死因贈与との違い

遺言という一方的な行為で亡くなった時に財産が移転する遺贈という方法に対し、財産を贈与する人の死亡を条件として契約の形式で行われるのが「死因贈与」となります。
いずれも、亡くなった段階で権利の移転があるのですが、前者は遺言による移転という民法の遺言の規定に基づくものであるのに対して、後者は贈与という契約に基づくものです。

そのため、遺贈における遺言のような形式的な行為がなくても、当事者の「あげます」「もらいます」の口頭で契約が成立するという違いがあります(ただし、実務上は契約書を作成するのが一般的です)。また、一方的に遺産を移転させる遺言に対して、死因贈与は当事者双方の合意が必要な点でも違いがあります。

特定遺贈とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 財産を特定して譲渡するのが特定遺贈
  • 特定遺贈をした場合の効果
  • 特定遺贈があった場合の注意点

特定遺贈とはどのような遺贈の形式ですか?

遺産のうち財産を指定して譲渡する遺贈のことをいいます。

特定遺贈とはどのようなものか確認をしましょう

特定遺贈とは

特定遺贈とは、遺贈のうち財産を指定して譲渡する遺贈のことをいいます。 例えば、

  • A不動産を甲に遺贈する
  • B銀行普通預金xxxxxxを乙に遺贈する
  • という内容です。

    財産を指定している点で、遺贈の内容が明確であるというメリットがある一方、事情が変わって生前に被相続人が対象物を処分したような場合は、受遺者は一切遺贈を受けられないというデメリットがあります。

    特定遺贈の効果

    特定遺贈が行われた場合には、遺言者が亡くなった時に所有権移転の効果が生じます。
    この遺贈に関してはいつでも放棄をすることができ、遺言者の債務を相続することはありません。

    特定遺贈の注意点

    特定遺贈の注意点としては、

  • 後述する包括遺贈と同様に遺留分侵害額請求の対象になる
  • 相続税の対象となる
  • 財産が不動産の場合、相続人以外の受遺者は不動産取得税がかかる
  • 遺言をした後、対象物を処分すると受遺者は遺産を取得できない
  • といった注意点があります。

    包括遺贈とは

    知っておきたい相続問題のポイント
    • 包括遺贈とは、遺産に対する割合を指定して行う遺贈
    • 包括遺贈をした場合の効果
    • 包括遺贈をした場合の注意点

    もう一つの方式の包括遺贈とはどのようなものでしょうか。

    遺産に対する割合を示して行う遺贈です。

    もう一つの遺贈の方式である包括遺贈について確認しましょう。

    包括遺贈とは

    包括遺贈とは、遺産に対する割合を示す方式の遺贈です。
    例えば、

  • 遺産のうち1/4を甲に与える
  • という内容です。
    特定遺贈のように遺贈後に目的物がなくなってしまった場合に相続できなくなるということはなく、亡くなったときの遺産に応じて遺贈ができるというメリットがあります。

    包括遺贈の効果

    包括遺贈がされた場合、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになります(民法990条)。
    そのため、

  • 具体的な遺産は他の相続人と遺産分割協議を行って取得
  • 債務も一緒に相続
  • 放棄をする場合には相続放棄に準じて原則3ヶ月以内に行う
  • といった効果が生じます。

    包括遺贈の注意点

    包括遺贈には

  • 債務があれば引き継ぐが、相続と同じように放棄には原則3ヶ月の期間制限があり、家庭裁判所での手続きが必要
  • 遺産分割協議をすることになるので争いになった場合には巻き込まれる
  • といった注意点があります。

    遺贈の方法

    知っておきたい相続問題のポイント
    • 遺贈は遺言でする
    • 遺言には主に3つの種類がある

    遺贈はどのようにして行うのですか?

    遺贈は遺言によって行うのですが、遺言には主に3つの種類があるので知っておきましょう。

    遺贈は遺言書を作成して行います。遺言書を作成する方法には3つの主な形式があるので知っておきましょう。

    自筆証書遺言

    遺言書を自筆で記載して作成する遺言です。 基本的には全文を自署することになるのですが、法改正で、遺産目録のみは自署ではなくても良いとされるようになりました。ただし、遺産目録の用紙ごとに署名押印をしなければなりません(遺産目録の用紙が両面の場合は両面それぞれに署名押印をしなければならなりません)。

    公正証書遺言

    公正証書の形式で遺言書を作成して行う遺言です。 相続開始後に検認という手続が不要であるなどのメリットがあり、また公証役場での手続ということもあり遺言に対する信頼が高いため、実務上一番多く使われています。

    秘密証書遺言

    遺言の内容を秘密にして、自分の遺言書であることを公証役場で確認して行う遺言です。
    遺言書の存在を証明することで、遺言書が発見されない場合を防ぎつつ、遺言の内容を秘密にする点に特徴がありますが、作成の手間や遺言の効果発生について確実性を欠くことがあるため、公正証書遺言・自筆証書遺言に比べて使用頻度は低いです。

    遺贈を受けた方は遺留分に注意する必要がある

    知っておきたい相続問題のポイント
    • 遺贈を受けた人は遺留分侵害額請求を受ける可能性があることに注意

    遺贈にあたって気を付けておくべきことはどのようなことでしょうか。

    遺贈によって遺留分を侵害された相続人がいる場合には、遺留分侵害額請求を起こされ金銭の請求をされることになるため注意が必要です。

    遺贈を受けた方は遺留分に注意する必要がある

    遺贈をする場合に注意をしておくこととしては遺留分の関係があります。 どのような遺贈をするかは自由なのですが、一方で相続人にも被相続人の遺産について最低限主張することができる権利として遺留分という権利があります。

    この遺留分という権利を侵害するような遺贈をした場合、遺贈を受けた方は遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求というものを受け、遺留分として認められる額の支払いを強いられます。
    そのため、遺留分を侵害される方が出ないよう最低限以上の遺産は遺贈せずに残すか相続人全員に贈与しておいたり、請求に備えて受遺者に現金・預貯金も一緒に遺贈したり生命保険の受取人に指定して金銭の支払いに応じられるようにしておくべきといえます。

    遺留分の侵害は、専門家によるチェックを受けない自筆証書遺言を作成した場合に発生しやすいといえますので、専門家に相談をしながら進めるなど注意をしておきましょう。

    遺贈を承認・放棄した後は取消し・撤回はできない

    特定遺贈はいつでも放棄が可能です。
    その間、遺贈義務者となる相続人らは、遺贈を本当に受け取るのかどうかわからない状態になり、場合によっては遺産分割協議に支障をきたすこともあります。
    そのため、遺贈義務者は受遺者に対して遺贈を承認するか放棄するか相当の期間を定めて決めてもらうよう催告することができ(民法987条)、期間内に返答がなかった場合には承認したものとみなされます。
    そして、一度承認・放棄をしたあとは、撤回はできません(民法989条1項)。
    承認・放棄の判断は慎重に行うべきといえます。

    まとめ

    このページでは、遺贈についてお伝えしました。 遺贈を受けると、受ける方としては遺留分侵害額請求を受けたり、納税などの義務を負う場合があります。
    遺贈をしたい場合には弁護士などの専門家に相談しながら行うことをおすすめします。

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