相続財産の調査方法を財産ごとに詳しく解説します!
ざっくりポイント
  • プラスの財産もマイナスの財産も相続の対象になる
  • 財産の有無をまとめて調査することはできない
  • 財産ごとの資料、調査先を把握する
目次

【Cross Talk】亡くなった人の財産はどうやって調べるの?

独身で子どももいなかった兄が死亡し、兄弟や甥、姪が相続することになりました。ただ、誰も兄と付き合いがなかったので、兄に財産があるかどうかもよくわかりません。これからどうしたらいいですか?

そもそも相続するかどうかを決める必要がありますから、まず相続財産の調査をしてください。 ここでいう相続財産とは、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。主な相続財産とその調査方法をご説明しますので、参考にしてください。

お願いします!

プラスの財産もマイナスの財産も調査が必要!

相続が開始すると、被相続人の財産は相続人に引き継がれます。 しかし、相続人が被相続人と疎遠であった場合など、被相続人にどのような財産があったかわからないというケースは少なくありません。 そのような場合に相続財産を正確に把握しないまま相続してしまうと、後で思わぬ不利益を被る可能性があります。 そこで今回は、相続財産の調査方法等について詳しく解説します。

相続財産とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続財産とは被相続人の一切の権利義務をいう
  • 相続税の申告のためにも相続財産の調査が必要になる

そもそもどういう財産が相続の対象になるのですか?

原則として、亡くなった方の一切の財産が相続の対象になります。 債務(マイナスの財産)も相続の対象ですから、マイナスの財産の方が多い場合には、そのまま相続するかどうかを検討しなければなりません。そのため、相続財産をきちんと調査することが必要になるのです。

相続財産とは何か

相続人は、相続開始の時から、被相続人の一身に属したものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。 権利(プラスの財産)だけでなく義務(マイナスの財産)も相続の対象ですから、両方の調査をする必要があります。

財産調査が必要な理由

相続財産の調査が必要な理由としてまず挙げられるのが,そもそも相続するかどうかを判断するためというものです。

相続人には、相続を単純承認する(被相続人の一切の権利義務を引き継ぐ)以外に、相続放棄する(相続を拒否して初めから相続人ではなかったことにする)、限定承認する(相続によって得た財産の限度で債務も引き継ぐ)といった選択肢があります。

しかし、どのようなプラスの財産またはマイナスの財産があるのかを把握しなければ、いずれを選択するか決めることはできません。そのため、相続財産をきちんと調査することが必要になるのです。

また、相続財産の調査は、遺産分割を正確に行うためにも必要になります。 遺産分割協議成立後に新たな相続財産が見つかった場合、その財産の分割について別途協議する必要がありますし、新たに見つかった財産の価値が大きく、その財産の存在を知っていれば遺産分割が成立しなかったと認められる場合には遺産分割全体が無効になる可能性があるからです。

さらに、ある程度まとまった相続財産がある場合、相続税の課税対象になり、相続税の申告をしなければなりませんが、そのためには相続財産がいくらあるのかを正確に把握する必要があります。 これらの理由から、相続財産の調査が必要になるのです。

プラス財産の財産調査方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • まずは自宅で関係書類を探す
  • 財産に応じて市町村役場、金融機関、証券会社などを確認する

プラスの相続財産はどのように調査すればいいのですか?

まず、亡くなった方の自宅をよく探してください。権利証、預貯金通帳、株式の取引報告書など、財産に関係のある書類が見つかったら、それを足掛かりに市町村役場、金融機関、証券会社などに出向き、財産があることを確認するのです。

不動産

財産の調査方法は、財産の種類によって異なりますが、被相続人の自宅で財産に関係する資料を探し、それをもとに関係機関に問い合わせるのが良いでしょう。

不動産の場合、まずは自宅で権利証(登記済権利証書)や固定資産税通知書がないか探しましょう。 これらの書類によって、被相続人が不動産を所有していたことがわかります。もっとも、これらの書類を紛失したということもありえるので、これらの書類が自宅になかったからといって、被相続人が不動産を所有していなかったとは限りません。

そこで、これらの書類が見つからなかった場合、市町村役場で被相続人の名寄帳を取り寄せます。名寄帳には、被相続人がその市町村において所有しているすべての不動産が記載されるので、これによって相続財産に不動産があるかを確認することができるのです。

ただし、名寄帳に記載されるのはあくまでその市町村内の不動産のみで、他の市町村に不動産を所有しているかどうかまで確認することはできません。ですから、被相続人の自宅がある市町村以外の市町村に不動産を所有している可能性がある場合は、別の市町村でも名寄帳を取り寄せる必要があります。

預貯金

銀行、信用金庫など様々な金融機関がありますが、すべての金融機関の預貯金の情報をまとめて管理する組織などはありません。各金融機関が預貯金の情報を管理していますので、預貯金の有無は各金融機関で調べる必要があります。

全ての金融機関を調査することは現実的に難しいので、まずは被相続人の自宅を探し、預貯金の通帳、キャッシュカード、利用明細、口座開設時の書類、金融機関名入りのタオルやカレンダーなどから、預貯金のありそうな金融機関をピックアップしましょう。

候補となる金融機関に出向き、被相続人名義の全ての口座の残高証明書を申請します。残高証明書によって、預貯金口座の有無や残高等を確認することができます。

株式

現在、株券は発行されないことになっているので、株券の有無で株式を保有していたかどうかを断定することはできません。 通常、株式は証券会社や信託銀行などを窓口として取引しているので、まずは被相続人の自宅で取引口座開設に関する書類、証券会社からの取引報告書等の郵便物、配当が振り込まれた預貯金通帳などがないかを確認しましょう。関係がありそうな証券会社等を特定出来たら、その証券会社に連絡し、残高証明書を発行してもらいましょう。

なお、上記のような書類が見つからないため証券会社を特定できないが、被相続人が株式の取引をしていたはずだと思われる場合には、「証券保管振替機構」(「ほふり」と呼ばれています)に「登録済み加入者情報の開示請求」をすることで、被相続人の口座の開設先を特定することができます。開設先が特定できた後の流れは、先ほどと同じです。

マイナス財産の財産調査方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 自宅で資料を探す
  • 信用情報機関に確認する

ではマイナスの財産はどうやって調査したらいいですか?

プラスの財産と同じように、まずは自宅で預金通帳、督促状などの郵便物、契約書といった書類を探します。また、金融機関や消費者金融、クレジットカード等に対する債務は、信用情報機関で調べることができます。

借金

預金通帳に返済や引き落としの形跡がないか、債権者から返済計画、督促状などの郵便物が届いていないか、契約書、融資の申込書など借入に関する書類がないか、消費者金融のカードやクレジットカードがないかなどを確認し、借金の手掛かりを探します。 債権者を特定できれば、債権者に問い合わせることで借金の詳細を把握することができます。 なお、住宅ローンがある場合、団体信用生命保険(いわゆる団信)に加入しているかどうかも確認しましょう。

団信に加入していれば、住宅ローンの債務者がローン返済中に死亡したときは、保険で残金を支払ってもらえるからです。

それ以外に、銀行などの金融機関や消費者金融、クレジットカード会社などへの債務がないかは、これらの業者が加入する信用情報機関で確認することができます。 信用情報機関とは、会員会社から送られてくる信用情報(他の債務の有無、返済状況、債務の残高、事故などの情報)を収集・管理し、会員会社に提供する事業を行っている機関です。銀行や消費者金融が個人に貸付等を行うかどうかを決めるにあたって、個人の信用情報は非常に重要な判断材料となります。 そのため、信用情報機関が個人の信用情報の収集・管理・提供を行っているのです。

抵当権

被相続人の所有する不動産について、被相続人自身あるいは第三者の債務を担保するために、抵当権が設定されていることがあります。 不動産に抵当権が設定されているかどうかは、法務局で不動産の登記簿(全部事項証明書)を取得すれば確認することができます。

連帯保証

被相続人自身は借金をしていなくても、第三者の債務を連帯保証している場合がありえます。 連帯保証の場合、主債務者が約定通りの返済を続けている限り債権者から請求を受けることがないので、被相続人の自宅を探しても、督促状など連帯保証の形跡を見つけるのは難しいでしょう。

ただし、債権者が銀行等の場合、連帯保証人となったことが信用情報機関に登録される場合があるので、気になる方は信用情報機関に確認するといいでしょう。

まとめ

相続財産の調査方法について解説しました。 相続財産の調査が不十分だと、取得できるはずの財産を取得できなかったり、思わぬ債務を背負わされたり、遺産分割をやり直すことになったりと、様々な不利益を被るおそれがあります。 そのようなことがないように、相続財産の調査はしっかりと行ってください。 自分で調査する場合、見落としがあるおそれもあるため、専門家である弁護士に相談するのが安心でしょう。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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