財産の取り分はどうやって決められる?まずは法定相続分を理解しよう!
ざっくりポイント
  • 遺言がなければ相続分は法律に従って決定される。
  • 配偶者は生きていれば相続人となるが、その他の親族には順位がある。
  • 配偶者以外は子ども、両親、兄弟の順で優先され、上の順位の人が1人でもいれば相続人にはならない。
目次

【Cross Talk】死亡したら財産はどうやって配分されるの?

還暦を過ぎ、自分がこの世を去ったときの財産の行方について考えるようになりました。私は現金や預貯金のほか、自宅の不動産や株券などの財産があります。これらの財産は、私が死亡したらどうなってしまうのでしょうか。

人が財産を残して死亡したときには相続が問題となります。生前に遺言書を作成していれば遺言書の内容が優先されますが、そうでなければ法律に基づいて各相続人の相続分が決定されます

相続人というのは、私の妻や息子たちのことですね。相続分というのは具体的にどのようにして決定されるのでしょうか。

遺言がなければ法定相続分に従って財産の取り分が決定される。

「遺言者の有する財産は妻と2人の子どもにそれぞれ3分の1ずつ相続させる。」 亡くなった方がこのような内容の遺言書を残していれば、財産は遺言に従って分割されるのが原則です。では、遺言がなかったらどうなるのでしょうか?日本の民法では遺言がなかったときのために「法定相続分」が定められており、これに従って財産が分割されることになります。

法定相続分とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 法定相続分は法律で決められた各相続人の取り分のこと。
  • 法定相続分は絶対的なものではなく、遺言や相続人同士の合意が優先される。

私には妻と2人の子どもがいます。遺産は3人で分けてもらいたいと考えていますが、もし私が遺言を書かずに死亡した場合、遺産はどのように配分されるのでしょうか。

亡くなった方の遺産をどのように分割するかは民法という法律で定められています。これを「法律で定められた相続分」という意味で「法定相続分」といいます。遺産を相続する方のことを「相続人」、亡くなった方のことを「被相続人」といいます。

法律で定められた相続分があるのですね。それでは、遺言書を書いた場合はどうなるのでしょうか。詳しく教えてください。

相続分とは、亡くなった方の財産を相続人が相続するときの各相続人の取り分のことをいいます。相続分について民法で定められたものが法定相続分です。たとえば妻と2人の子どもを残して死亡した場合、妻の法定相続分は2分の1、子どもの法定相続分は4分の1ずつとなります。 法定相続分は絶対的なものではなく、被相続人が自分の財産をどう分けるかについて遺言を残していた場合には遺言が優先されるのが原則です(ただし、「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分は保障されます。)

遺言書がないときには遺産分割の方法について相続人同士での話し合いが行われます。この話し合いのことを遺産分割協議といいます。遺産分割協議を行う際には法定相続分が基準となります。 もっとも、遺産分割協議において相続人同士の同意ができればどのような割合で遺産を分割しても問題ありません。先ほどの例でいうと、妻が自身の相続分を3分の1に減らすことに納得さえすれば、3人の相続人が3分の1ずつ遺産を相続することは問題ありません。

法定相続分の計算方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 法定相続分を計算する際には、まずは相続人を確定させる。
  • 相続の対象となる財産がどれだけあり、いくらになるのかを計算する。
  • 特別受益や寄与分を考慮したうえで相続分を計算する。

法定相続分についてはわかりました。では、具体的にどのような流れで法定相続分を計算するのでしょうか。私は両親がまだ健在なのですが、両親にも財産が相続されることになるのでしょうか。

法定相続分を計算する際には、まず相続人を確定する必要があります。誰が相続人になるかは民法で定められており、これを「法定相続人」といいます。父母が法定相続人となるのは子どもなど「第1順位」の相続人がいないときに限られます。 次に相続の対象となる財産(相続財産)の総額を確定させます。そこから「特別受益」や「寄与分」の調整を行い、具体的な相続分を算出します。

相続財産を算出するだけでも相当な労力がかかりそうですね。「特別受益」や「寄与分」という言葉にも馴染みがありませんので、簡単に教えていただけますでしょうか。

相続人を確定する

法定相続人とは、民法で定められた相続人をいいます。法定相続人になれるのは、配偶者と親族です。 被相続人の配偶者はどのような場合でも相続人になりますが,親族が相続をするには次のとおりに順位が定められており、自分より順位が高い人が1人でもいる場合には相続人にはなれません。 また、同じ順位の人が複数いるときには全員が相続人となります。

・第1順位:子および代襲相続人 ・第2順位:両親などの直系尊属 ・第3順位:兄弟姉妹および代襲相続人

第1順位のところで出てきた「代襲相続人」という言葉についてご説明します。 法定相続人である子が死亡している場合には、その子どもである孫が代わりに相続することができます。孫も死亡している場合はひ孫が代襲相続人となります。これが代襲相続人です。同様に、兄弟姉妹が死亡している場合には甥や姪が代襲相続人となります。ただし、甥や姪が死亡している場合、その甥や姪の子は代襲相続人となることはできません。

法定相続人に該当する場合でも、相続欠格に当たる場合や相続廃除、相続放棄が行われた場合には相続する権利が生じません。 相続欠格とは、相続人が相続について違法な行為を行ったときに相続権を失わせる制度です。たとえば被相続人の遺言書を偽造したような場合がこれに当たります。

相続廃除とは、相続人が被相続人に対して虐待をしたり重大な侮辱を加えたりしたときに他の相続人の請求により裁判所が相続権を剥奪する制度です。 相続放棄とは、相続人が自ら相続する権利を放棄するもので、相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述を行うことにより成立します。

法律上で婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子どもを非嫡出子といいますが、非嫡出子も嫡出子と同じ割合で財産を相続する権利があります。 養子縁組した子(養子)も実子と同じように相続することができます。

相続財産を確定する

相続財産とは、相続の対象となる財産のことです。現金、不動産、株式などプラスの財産はもちろん、借金などマイナスの財産も含まれます。 相続財産を確定するためには、被相続人が残したメモなどから調査を行ったり、銀行に預金残高を照会したりする必要があります。

相続財産の評価額を算出する

相続財産には現金や預貯金のように金額が明らかなものだけではなく、不動産や非上場株式など評価額を算出する必要があるものが含まれることがあります。不動産の評価額を算出するための方法には、国税庁が年に一度定める路線価という指標を用いる「路線価方式」や、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて相続税の評価額を求める「倍率方式」、不動産会社に査定を依頼する等,様々な方法があります。

相続財産の総額を算出する

相続財産を確定して評価額を求めることで初めて被相続人が残した相続財産の総額を算出することができます。相続財産の数、種類、評価額等は相続財産一覧表と呼ばれる表にまとめられます。

特別受益を相続財産に含める

特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前に贈与を受けたり相続開始後に遺贈を受けるなど利益を得ることをいいます。特別受益を考慮せずに遺産分割をしてしまうと贈与や遺贈を受けた一部の相続人が有利になってしまいますので、特別受益は相続財産に含めたうえで遺産を分配します。

寄与分を相続財産から控除する

寄与分とは、一部の相続人が被相続人の介護や生活支援を行っていた場合により多く相続財産を受け取れるようにする制度です。寄与分は寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して算定されます。 寄与分は介護や生活支援を行った一部の相続人に認められる権利ですので、相続財産からは控除されます。

具体的相続分の算出

以上の手続を経て相続人と相続財産を確定したら、各相続人が相続する取り分を算出します。法定相続分の具体的な計算方法についてはこの後の項目で具体的に説明いたします。

法定相続分の計算の具体例

知っておきたい相続問題のポイント
  • 法定相続分は具体例で理解する。
  • 配偶者の取り分を確定させ、残りを他の相続人で分けるのが基本的な考え方。

法定相続分を計算する際の流れについてはわかりました。ただ、誰がどれくらいの割合を相続できるのか、まだ具体的にイメージできません。

法定相続分は民法に規定されていますが、少々複雑で難しいので、事例ごとにご説明するのがよいでしょう。配偶者は生きていれば常に相続人になりますので、まず配偶者の取り分を確定させ、残りを他の相続人で分けるのが基本的な考え方になります。

では、まず私のように妻と2人の子どもがいるケースについてご説明いただけますでしょうか。

妻と2人の子どもがいるケース

配偶者は常に相続人となり、子どもは第1順位の法定相続人となります。配偶者と第1順位の法定相続人がいる場合には妻が財産の2分の1を相続し、残りを第1順位の相続人で分けます。すなわちこの場合の法定相続人は、妻が2分の1、子がそれぞれ4分の1となります。 子どもは実子だけでなく養子や非嫡出子も含まれます。胎児は生きて生まれたときに限り財産を相続する権利を有します。

妻がおり、子どもはいないが両親が健在のケース

被相続人の父母は第2順位の法定相続人となります。配偶者と第2順位の法定相続人がいる場合、妻が財産の3分の2を相続し、残りの3分の1を第2順位の相続人で分割します。したがって、両親がどちらも健在の場合の法定相続分は、妻が3分の2、父が6分の1、母が6分の1となります。 

妻がおり、子どもと両親は死亡している(代襲相続もない)が兄弟が3人いるケース

被相続人の兄弟は第3順位の法定相続人となります。配偶者と第3順位の法定相続人がいる場合、妻が財産の4分の3を相続し、残りを第3順位の法定相続人で分割します。したがって、この場合の法定相続分は、妻が4分の3、3人の兄弟がそれぞれ12分の1となります。

妻がおらず、子どもが3人いるが、そのうち1人が相続放棄しているケース

この場合は配偶者がいませんので、本来は3人の子どもで財産を分けることになります。ところが3人の子どものうち1人が相続放棄をしていますので、相続人からは除外され、相続放棄をしていない2人の子どもで財産を2分の1ずつ分割することになります。

まとめ

法定相続分の計算方法についてご理解いただけたでしょうか。 法定相続分は被相続人が遺言を残さなかった場合の相続分について、各相続人の平等の観点から定めたものです。ところが実際には遺言の効力が問題となったり、特別受益や寄与分について相続人同士で争いになることが多々あります。仲の良かった兄弟や親戚同士で争いになってしまうことも少なくありません。 相続についてお困り事があれば、早めに法律の専門家である弁護士に相談するようにしましょう。

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この記事の監修者

弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
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