
- 遺産分割調停に欠席したらどうなるのか
- 遺産分割調停に欠席せずに済む方法を知る
【Cross Talk】遺産分割調停や審判に欠席した場合にはどうなるのか
先日、父が亡くなり、私と母と弟が相続人になりました。父は、母と私と一緒に飲食店を自宅兼店舗で営んでおり、父が亡くなった今では、私と母と私の妻で店舗を営業しています。 今回、弟が、自宅兼店舗を売ってでも遺産分割をしてほしいと遺産分割調停を申し立ててきたのですが、指定された期日には大事な団体の予約があり、応じることができません。遺産分割調停に欠席した場合にはどうなるのでしょうか。
正当な理由なく遺産分割調停に欠席した場合には、罰則の規定があります。対応方法を知っておきましょう。
遺産分割協議が上手くいかない場合には、調停や審判を利用しての解決が図られます。調停は裁判所で行われ、当事者は期日に出頭する必要があります。 正当な理由なく欠席した場合には罰則の規定もあり、また、調停は不成立となります。 どのような場合に正当な理由がないといえるのか、欠席が手続にどのような影響があるのかを知っておきましょう。
遺産分割調停を欠席した場合はどうなるか

- 遺産分割調停に欠席した場合にはどうなるのかを知りましょう
遺産分割調停に欠席した場合にはどうなるのですか?
調停は不成立となるとともに、場合によっては欠席者に罰則が科せられることもあります。
調停が不成立となる
遺産分割調停の期日では、交互に調停委員に呼ばれて事情を話し、調停委員に解決案をもらう形になるのですが、欠席すると、調停委員が当事者から事情を聞けないという事になります。
調停はあくまでも当事者による話し合いを中心とするので、当事者が欠席して意見を調整できない場合には、調停は不成立とせざるを得ません。
正当な理由なく欠席した場合には過料に処せられる
また、裁判所から呼び出しを受けた事件の関係人が正当な理由なく欠席した場合には5万円以下の過料に処するという罰則が定められているのですが(民事調停法34条)、仕事が忙しいなどの正当な理由があれば、過料が科されることはありません。
実際にも、この条文を根拠に過料が科せられることはまずありません。
遺産分割調停を欠席した場合のデメリット

- 遺産分割調停を欠席した場合のデメリット
遺産分割調停を欠席するとどうなるのでしょうか?
裁判官・調停委員がその欠席する相続人の主張に真剣味がないと判断したりするなど悪い心証を持つことはあるでしょうし、欠席が続いて調停が成立しない見込みが高い場合には審判に移行することになります。
裁判官・調停委員に悪い心証を持たれる
調停では当事者双方の言い分を聞いてすり合わせながら合意に導きます。
そのため、出席をしない場合には出席している一方の言い分しか聞くことができず、出席当事者の主張次第では、裁判官・調停委員に悪い心証を持たれる可能性があります。
遺産分割調停の欠席が続くと遺産分割審判に移行する
遺産分割調停は当事者の合意によって遺産分割紛争を解決するものです。
そのため、欠席が続いてその当事者に合意の意思がない場合にはそれ以上続けても仕方ありません。
この場合、遺産分割調停は終了し、裁判所の審判によって強制的に解決する遺産分割審判に移行します。
遺産分割調停を延期してもらう方法

- 遺産分割調停を延期してもらう方法
調停が不成立になるのはわかったのですが、とはいえ、きちんと調停手続をするべきではないか、とも思っています。延期にしてもらうことはできないのでしょうか?
期日変更申立てによって、別の期日にしてもらうことはできます。
期日に欠席しても調停が不成立になるだけとはいえ、調停を利用すれば、調停委員が専門家の立場で解決策を提示してくれますので、紛争解決のための一つの視点を得ることができます。
そのため、調停による解決を希望する場合には、裁判所に対して期日変更申立てを行うことにより、期日の延期を検討しましょう。
遺産分割調停に出席できない場合の対応

- 遺産分割調停の期日に出席できない場合でも手続きを進める方法がある。
調停期日に裁判所に出席できない場合でも、調停を進める方法はないのでしょうか?
電話会議システムを利用する方法、弁護士に手続きの代理をしてもらう方法があります。
電話会議システムの利用申請をする
遠方に居住していて、期日への出張が困難であるなどの事情がある場合、裁判所の許可が得られれば電話会議によって調停を行うことが可能です(家事事件手続法第258条1項、第54条)。
弁護士に依頼する
その他には、弁護士に遺産分割調停の代理を依頼すれば、本人が裁判所に出頭しなくても弁護士が代わりに出頭してくれます。遺産分割調停を欠席しても支障がない場合

- 遺産分割調停の期日に出頭できない場合、欠席をしても手続上支障がない場合を知る
遺産分割調停に欠席をしたら、調停手続は進まないのでしょうか?調停手続を進めることが可能な場合はありませんか?
どんな調停案が出ても合意するような書面を提出したり、極端な場合だと、遺産分割調停において自身の取り分はいらないと放棄をする方法であれば、調停期日に欠席をしても問題ないです。
遺産分割調停に欠席すると絶対に手続きが進まないわけではなく、欠席しても問題なく手続きを進められる場合を知っておきましょう。
遺産分割調停条項案に合意する書面を提出する
争いが他の相続人の間でのみ存在しており、自分はどのような分割内容でも構わないというような場合には、遺産分割調停条項案に合意する旨を書面で裁判所に提出することによって、欠席した場合でも、調停委員が意図を組み、遺産分割調停期日の出席者として取り扱ってくれることもあります。
相続分の譲渡・放棄をして裁判所に遺産分割調停手続から除外してもらう
その他、相続分を譲渡・放棄をすれば、そもそも遺産分割協議の当事者からは除外されますので、遺産分割調停手続からも除外され、欠席しても問題はなくなります。
もっとも、最初から相続人ではなかったことになる相続放棄ではなく、相続はするけれども持分はいらない、という相続分の譲渡・放棄を行う場合には、被相続人の債権者との関係で借金がなくなることはないので、注意が必要です。
遺産分割審判を欠席した場合のデメリット

- 調停後に移行する可能性がある遺産分割審判に欠席した場合にはどうなるか
遺産分割審判に欠席した場合も調停と欠席した場合と同じように考えて良いですか?
いいえ。遺産分割審判では、欠席をすると不成立ではなく、欠席をした方に不利な審判がされる可能性が高いので注意をしましょう。
遺産分割調停が成立しなかった場合には、遺産分割審判に移行することがあります。 審判も調停と同様に、裁判所で期日が開かれて手続が進んでいくので、欠席した場合にどのような効果が生じるかについても知っておきましょう。
審判は、調停のように当事者の話し合いの延長というものではなく、裁判所が主導で行っていく手続です。 そして、当事者が欠席をした場合であっても、裁判所は、審判という形で判断を示すことになります(判決をイメージしてもらえばわかりやすいかと思います)。
もし審判期日に欠席をして、期日でこちら側に有利な主張・立証ができない場合には、欠席した当事者に不利な事実認定・法的判断が下される可能性が高くなります。 そのため、審判期日には欠席しないようにすべきといえます。
まとめ
このページでは、遺産分割調停や遺産分割審判の期日に欠席をした場合に生じる効果などについてお伝えしてきました。
遺産分割調停や遺産分割審判は、裁判所で期日が開かれる形で進行する手続きなので、あらかじめ決まっている予定がある場合など、欠席せざるを得ない場合があります。
やむを得ず欠席した場合の効果を知ったうえで、期日に欠席することで不利になりたくないという場合には、いち早く弁護士に相談するようにしましょう。

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