
- 遺産分割審判とは何か
- 遺産分割審判のすすめかた
- 遺産分割審判を弁護士に依頼するメリット
【Cross Talk 】遺産分割審判とはどのようなものでしょうか。
先日父が亡くなり、母・同居している長男の私・次男で相続をしました。 現在遺産分割についての話し合いをしているのですが、どうしても次男と私たちの間で折り合いがつきません。 そこで裁判所での手続きが必要ということで調べていたのですが、遺産分割調停と遺産分割審判というものがあるようです。これはどのようなものなのでしょうか。
調停が当事者の意見の調整を図るものであるのに対して、審判は当事者の意見と裁判所の調査によって客観的な意見を出すものだと考えるとよいと思います。
くわしく教えてください。
遺産分割協議がうまくいかない場合、裁判所での手続きを利用することになります。 裁判所での手続きとして遺産分割調停のほかに遺産分割審判というものがあります。 遺産分割審判とはどのようなものなのかを確認しましょう。
遺産分割審判とは?

- 遺産分割審判の概要
遺産分割審判とはどのようなものですか?
遺産分割が争いになったときに、紛争解決のために裁判所でする手続きの中でも「審判」という形式で行われるものです。
遺産分割審判とはどのようなものなのでしょうか。
遺産分割審判について
遺産分割について当事者の協議で決められないような場合には、裁判所で紛争の解決をしてもらうことになります。
遺産分割については、裁判所での紛争解決処理手続きとして、調停と審判があります。 調停は裁判官1名と相続について詳しい調停委員2名によって構成された調停委員会が双方の主張を聞きながら、調停委員が調停案という形で意見をだして紛争解決を目指すものです。
これに対して審判は、裁判所が当事者の主張をもとに、裁判所独自に調査も併せて、審判という形で紛争解決をはかります。
裁判と審判の違い
実は裁判の仕組みが、遺産分割事件の解決のためには適さないことから、遺産分割については裁判(訴訟)ができないとされています。
訴訟は、当事者が主張してその証拠を出し、証拠によって主張している内容が裏付けられ、主張が認められるという構造になっています。 しかし、遺産分割は遺産をどう分けるかという家族間の問題について、個別の事情に則した柔軟な審理と判断を行うことが重要になります。 そのため、遺産分割の紛争を解決するには、当事者が主張していない事実でも裁判所が調査、証拠調べを行うことができる、審判手続きの方が適しており、審判手続きが利用されることになります。
遺産分割審判の期間
遺産分割審判はどのくらいの期間がかかるのでしょうか。 令和2年度司法統計によりますと、次のような報告がされています。審理期間 | 件数 |
---|---|
1ヶ月以内 | 242 |
3ヶ月以内 | 917 |
6ヶ月以内 | 2,235 |
1年以内 | 3,849 |
2年以内 | 3,016 |
3年以内 | 709 |
3年以内を超える | 335 |
紛争内容については遺産の内容や当事者の人数など様々な要因がありますので、一概にどれくらいの期間がかかるとは言い難いのですが、この統計によれば、全体の60%以上の紛争が1年以内に、全体の90%程度の紛争は2年以内に終了していることになります。 1年を目安に、遺産の内容や当事者の主張がどのくらい対立しているかによって、遺産分割審判で終わる期間の目安を知ることが可能といえるでしょう。
遺産分割審判で審理できること

- 遺産分割審判の審理の対象となる争い
- 遺産分割審判で争えないもの
相続に関する争いであれば遺産分割審判をしても良いイメージですか?
いいえ、あくまで遺産分割に関するもので、遺産分割に直接関係のないものについては遺産分割審判では争いません。
遺産分割審判で争われるのは、遺産分割の内容についてのみです。 ですので、
- 遺産をどのように分割するか
- 特定の相続人の寄与分をどの程度にするか
- 特定の相続人の特別受益をどの程度にするか
一方で下記のようなものについては遺産分割審判では争えません。
- 遺言書の無効を主張したい…遺言無効確認の訴え(訴訟)を起こします。
- 遺産分割協議の無効・やり直しを主張したい…遺産分割協議の無効確認の訴え(訴訟)を起こします。 遺産分割協議のやり直しは当事者全員が承諾しなければできません。
- 他の相続人が、相続人として遺産を受け取る権利はないと主張したい…相続人の地位不存在確認の訴え(訴訟)を起こします。
- ある財産が相続財産にあたることを主張したい…遺産確認の訴え(訴訟)を起こします。
遺産分割審判の手続き

- 遺産分割審判の手続きの概要
遺産分割審判の手続きについて教えてください。
手続きの始まりから、終結までを確認しましょう。
遺産分割審判の手続きの流れについて確認しましょう。
遺産分割調停の不成立または遺産分割審判の申立て
遺産分割審判が始まるきっかけは2つあります。 まず、遺産分割調停を行っていて、調停員が出した調停案に賛成できなかった場合、遺産分割調停によって解決をすることになっています。 一方、最初から遺産分割調停を利用せずに、遺産分割審判を申し立てることも可能です。 ただし、調停を利用せず遺産分割審判を申し立てても、裁判所の判断で調停に付されることが多いため、まずは遺産分割調停を申し立て、調停が不調になった場合に審判となるのが一般的です。遺産分割審判の審理
遺産分割審判について審理を行います。 遺産分割調停においては別々に呼ばれて主張をしますが、遺産分割審判では当事者は同じ法廷に立つことになります。遺産分割審判の期日では、事実の主張をする・証拠の提出を行うなどの行為がおこなわれ、裁判所から次回までにどのようなことを行うかを伝えられます。 次回期日が1ヶ月~1ヶ月半後くらいの期間で指定されますので、主張・立証を順番にしていくことになります。
期日の最中に裁判所が和解を勧めてくることもあります。遺産分割審判の終結
裁判所が判断をするための主張・証拠の提出が行われたと判断できると、審理が終結します。 最後に審判を下す旨の期日審判が下され、1~2ヶ月くらいで審判書が届けられます。遺産分割審判の効果

- 遺産分割審判が出るとどうなるのか
遺産分割審判が出ると、どのような効果があるのでしょうか。
遺産分割審判どおりの遺産分割をすることになります。遺産を占有している人がいるような場合には強制執行をすることも可能です。
遺産分割審判で審判がでた場合にはどのような効果があるのでしょうか。
遺産分割審判の内容通りの分割を行う義務が生じる
当然ですが、遺産分割審判の内容どおりの遺産分割を行う義務が生じます。 といっても、銀行預金の場合には、協力しない人がいても、審判書で手続きが可能です。不動産の相続登記についても、添付書類としての遺産分割協議書のかわりに、審判書を提出して手続きを行います。 もし、審判でAさんに帰属するとした自動車を、いまだBさんが占有しているような場合には、Aさんに引き渡さなければなりません。
強制執行が可能になる
遺産分割審判に従わないような場合には、確定した遺産分割審判に基づいて強制執行が可能となります。遺産分割審判に対する即時抗告

- 遺産分割審判への不服申し立て手段は即時抗告
遺産分割審判の結果に納得がいかない場合には争うことはできないのでしょうか。
いいえ、即時抗告という手段によって上級の裁判所に審理をしてもらうことが可能です。
裁判をする場合には、控訴・上告といった不服申し立て方法があります。 遺産分割審判については、「審判」という判断方式に対応する「即時抗告」という不服申し立て方法があります。
審判の告知があった日から2週間以内に、抗告状を家庭裁判所に提出します。 即時抗告がされると、一度提出された家庭裁判所で審判の内容を見直す「再度の考案」を行い、家庭裁判所から高等裁判所に送られます。 抗告の審理は基本書面審査ですが、場合によっては審尋という当事者の立ち会いをしてもらうことも可能です。
即時抗告に対しては、審判を取り消す決定か、抗告を棄却する棄却決定を行います。 即時抗告の決定内容に不服があり、過去の裁判に違反していたなどの、法令の解釈への違反がある場合には、最高裁判所に対して許可抗告をすることが可能です。
遺産分割審判を弁護士に依頼するメリット

- 遺産分割審判を弁護士に依頼するメリット
遺産分割審判ともなると弁護士に依頼をしたほうがよさそうですね…。
法律知識という面でもそうですが、自分達が過度な主張をしすぎてないか主張を冷静に見つめなおすこととなり、弁護士が相手とのクッション役にもなることで、紛争解決に大いに役に立ちます。
遺産分割審判を弁護士に依頼すると、お金がかかるのがデメリットであるといえます。 その反面
- 法律知識によるサポートを受けることができる
- 遺産分割審判という手続きに関するサポートを受けることができる
相手のみならず、自分も過大すぎる主張をしていないかといった観点からアドバイスを受けたり、直接相手方と顏をつきあわせなくてよくなるのでクッションのような役割を果たしてくれることもあります。 その結果解決が早くなるというメリットもあります。
まとめ
このページでは遺産分割審判についてお伝えしてきました。 遺産分割がうまくいかない場合にする裁判所での手続きで、相続に関する法律知識の他にも、裁判所での手続きに関する知識も必要です。 弁護士に相談をしながらすすめるようにしましょう。

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