
- 不動産があると揉めやすい
- 寄与分や特別受益を認めるかでもめる
- 遺族が揉めないように遺言書を作成する
- 揉めてしまったときは弁護士に相談する
【Cross Talk】遺産相続で揉めたくない!どうすればいい?
父が亡くなって、母や兄弟たちと相続することになりました。相続と言っても自宅と少しの預貯金がある程度でそれほどの財産はないので、揉めずにすんなり終わりますよね?
そううまくいくとは限りません。不動産のように分けにくいものがある場合には、相続人間で意見が合わず、揉めてしまう可能性があります。また、特定の相続人が多額の贈与を受けていた場合のように、法律で決められた割合(法定相続分)で分けるのは不公平だとしてもめることもあります。
財産がそれほどなくてももめることがあるんですね。どうすれば揉めずに済むか教えてください!
皆さんの中には、遺産相続について「うちには大した財産はないから揉めないだろう」とか、「法律で決められたとおり分ければ揉めないだろう」と考えている方が少なくないかもしれません。 しかし、統計によれば家庭裁判所で遺産分割調停が成立した事件のうち約4分の3は遺産の額が5000万円以下であり、相続でもめるのは資産家だけとは言えません。 また、特定の相続人が亡くなった方(被相続人といいます)から贈与を受けていたり、逆に相続人が被相続人に経済的援助をしていたりするケースもあり、単純に被相続人が亡くなった時点で保有していた財産を分けるだけでは不公平だとして揉めてしまうこともあります。 そこで今回は、遺産相続でもめるのはどのような場合かを紹介したうえで、遺産相続で揉めないための対処法などについて解説します。
どのような場合に遺産相続でもめるのか?

- 家庭裁判所の遺産分割事件の約4分の3が相続財産5000万円以下
- 相続財産に不動産が含まれるともめやすい
遺産相続でもめるというと、どうしても財産がたくさんある家の出来事ではないかと思ってしまうのですが、実際にはどのような場合にもめるのでしょうか?
そのようなイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、実態は違います。もめるというと裁判を連想する方もいらっしゃるでしょうが、遺族の話し合いだけでは解決せず、家庭裁判所の遺産分割事件で解決したケースの多くは、相続財産が5000万円以下の場合であるとされています。 また、相続財産に土地や建物といった不動産が含まれる場合、もめやすい傾向があるようです。
揉めているケースは相続財産が5000万円以下の割合が高い
裁判所がまとめた平成30年度司法統計 によると、家庭裁判所の遺産分割事件によって遺産が分割された総数は7,507件です。 そのうち、遺産の総額が1000万円以下の事件が2,467件、1000万円超5000万円以下の事件が3,249件であり、両者の合計は5,725件となり、遺産分割事件総数の約76%を占めることになります。家庭裁判所の遺産分割事件で遺産が分割されたということは、言い換えれば遺族の話し合いだけでは解決せず、事件が裁判所に持ち込まれたということですから、相続でもめた場合と言っていいでしょう。 上記の司法統計のデータからは、遺産相続でもめるのは資産家に限ったことではなく、一般的なサラリーマン家庭などでも遺産相続でもめる可能性が十分にあるということがいえます。
揉めているのは不動産があるケースが多い
また、前記の司法統計によれば、遺産に不動産(土地・建物)を含まないのは「現金等」1,203件、「動産その他」57件、「現金等・動産その他」124件の合計1,384件であり、全体の約18%にすぎず、残る事件は相続財産に土地または建物あるいは土地及び建物が含まれています。つまり、相続財産に土地や建物といった不動産がある場合、遺産相続でもめやすいということができます。 その理由としてまず考えられるのは、不動産は現金等と異なり、現物を分けることが難しいということがあります。 建物の現物を相続人で分けるわけにはいきませんし、土地を細分化することも現実的ではないでしょう。
そうなると、相続人の誰かが不動産を取得するか、売却してお金で分けることを考えざるを得なくなり、どのように分けるかで相続人間で意見が対立してしまうおそれがあるのです。 また、不動産は、現金等と異なり、金銭的評価が問題になります。 このような理由から、相続財産に不動産が含まれる場合、もめやすい傾向があるのです。遺産相続でもめたら長期化する

- 遺産相続でもめると長期化しやすい
- 家庭裁判所に持ち込まれると1~2年かかることも多い
相続財産がそれほどなくてももめてしまう可能性があるんですね。身内といつまでももめていたくないので早く終わらせたいのですが…
もめごとを抱えるだけで精神的な負担になりますから、みなさんそうおっしゃいますね。ただ、遺産分割でもめると長期化しやすい傾向にあります。家庭裁判所では審理期間が1~2年に及ぶことも珍しくありません。
先ほども引用した平成30年司法統計 によれば、家庭裁判所の遺産分割事件の総数13,040件(取下げ等を含む)のうち、審理期間が6ヶ月超1年以下のものが4,403件と最も多く、1年超2年以下のものも2,920件あります。 しかもこの期間はあくまで家庭裁判所における審理期間です。 通常、相続人間で遺産分割協議をしてもまとまらない場合に家庭裁判所に遺産分割事件が持ち込まれますから、相続について協議を始めてからの期間はさらに長くなるはずです。 このように、遺産分割でもめてしまうと長期化しやすいということがいえます。
遺産相続でもめるのはなぜか?

- 子どもが複数いる場合に相続割合でもめる
- 寄与分や特別受益でもめる
- 使途不明金でもめる
遺産相続でもめるのはどういう理由が多いのですか?
多いのは、子どもが複数いる場合に相続割合でもめるケースでしょうか。そのほかにも、亡くなった方を介護した相続人や、亡くなった方から生前に贈与を受けた相続人がいた場合に、死亡時の財産をそのまま分けるだけでは不公平だと言ってもめるケースもあります。いくつか代表的なケースを紹介しましょう。
子どもの遺産分割割合でもめる
亡くなった方に子どもが複数いる場合、子の相続分を子どもの人数で平等に分ければいいだけではないかと思われるかもしれませんが、実際にはそう簡単にはいきません。 たとえば、亡くなった方に農業などの家業があり、長男が家業を継いでいた場合に、長男が他の兄弟に対し相続放棄を求めるということがあります。 また、配偶者との間の子どものほかに、前の配偶者との間に子どもがいたり、認知した子がいたりする場合、きょうだいといっても全く交流がないことも珍しくないので、もめやすいといえるでしょう。死亡した方に対する介護などによる寄与分でもめる
遺産相続の割合は、法律で決められています(法定相続分といいます)。 しかし、たとえば一部の相続人が長年にわたって亡くなった方の介護をしたり、家業を手伝ったりしていた場合、遺産相続にあたってその貢献を一切考慮しないのは不公平ではないかと考えられます。 そこで作られた制度が、「寄与分」です。 寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人に対し、その貢献に応じて法定相続分に寄与分を加えて財産を取得させるというものです。寄与分の趣旨自体はわかりやすく、公平の理念にかなうものと思われるかもしれません。 しかし、どの程度の貢献をすれば「特別の」寄与と言えるのか、仮に「特別の」寄与にあたるとしてもそれをどのように金銭的に評価するかといった問題は、簡単に答えが出るものではありません。 そのため、一部の相続人が寄与分を主張すると、もめる原因となることが多いのです。
結婚式費用を払ってくれたなどの特別受益でもめる
寄与分は、相続人が亡くなった方に貢献した場合に相続人間の公平を図るための制度ですが、逆に相続人が亡くなった方から贈与などの利益を受けていた場合に相続人間の公平を図るための制度が、「特別受益」です。特別受益とは、相続人が亡くなった方から遺贈を受けたり、婚姻・養子縁組・生計の資本として贈与を受けたりすることをいいます。 特別受益がある場合、亡くなった方の財産にその贈与の額を加えたものを相続財産とみなして相続分を計算し、相続人はその相続分から特別受益の価額を差し引いた額を取得することになります。
一部の相続人が他の相続人に特別受益があると主張した場合、そもそも贈与を受けてないとか、特別受益にあたらないなどと反論されることが考えられますので、もめることが多いでしょう。
使途不明な遺産がある
一部の相続人が、亡くなった方の預貯金を引き出し、葬儀費用や入院費、施設代などに充てることは珍しくありません。 使途を明らかにできれば他の相続人も納得するでしょうが、使途が不明な場合、相続人自身が使い込んだなどと言われ、もめる可能性があります。遺産相続で揉めないためには

- 遺言書を作成するのが最善の対策
- 遺言書を作成してももめ事を完全に防止することはできない
遺産相続で揉めないようにするにどうしたらいいですか?
生前に遺言書を作成しておくことが一番です。ただし、遺言書の効力が争いになることもあるので、遺言書を作成しても、もめる可能性をゼロにすることはできません。
遺産相続で揉めないようにするためには、生前に遺言書を作成しておくことが最善と言えます。
寄与分や特別受益の解説で、相続人間の公平といいましたが、それはあくまで遺言書がない場合のことです。 遺言者は、遺言によって自分の財産の全部または一部を自由に処分することができます(ただし、後述する遺留分の問題は残ります)。 そのため、遺言書ですべての財産について誰がどのように取得するかを決めておけば、相続財産を遺言書通りに分けるだけですから、相続人がもめることは基本的になくなります。
もっとも、これはあくまで遺言書が有効である場合の話です。 遺言書がある場合でも、偽造されたものであるとか、遺言作成時には認知症で判断能力がなかったなどとして、遺言の効力自体が争いになることもあるので、もめごとを完全に防ぐことはできません。
また、兄弟姉妹以外の相続人には、「遺留分」という法律で保障された最低限の相続分があります。 ですから、遺言書を作成してもその内容が遺留分に配慮していないもの(たとえば、一部の相続人に全財産を相続させるなど)であった場合、もめる可能性があります。
遺産相続を弁護士に相談するメリット

- 感情的対立を避けることができる
- 面倒な手続きを全て任せることができる
遺産相続を弁護士さんに依頼したら、どんなメリットがあるのでしょうか?
感情論ではなく法的根拠に則った主張ができるということが挙げられます。また、弁護士にすべての手続を任せることができるということもメリットの一つでしょう。
感情ではなく法に則った解決策を主張してくれる
当事者だけで話し合いをすると、ついつい感情的になりがちです。そうなると、遺産相続と関係のないことで相手を非難したり、過去のことを蒸し返したりして、話し合いが一向に進展しないという事態に陥りかねません。 これに対し、弁護士に相談・依頼をすれば、弁護士が依頼者に代わり、感情ではなく法に則った主張をしてくれます。 そのため、当事者だけで協議する場合と比べて、話し合いが円滑に進むことを期待できますし、専門的な知識の不足のために損をしてしまうことも防げます。弁護士が手続をやってくれる
遺産相続をするには、その前提として相続人や相続財産などを調査することが必要で、役所で戸籍等を取り寄せたり、銀行や証券会社、法務局などを回って資料を集めたりしなければなりません。 また、相続人間の協議が整わなかった場合、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てることになりますが、そのためには裁判所に提出する書類を作成したり、取り寄せたりする必要があります。 これらの作業には手間と時間がかかるので相続人には大きな負担になりますし、専門的な知識が必要になる場面もありますから、相続人自身では難しいこともあるでしょう。 弁護士に相談・依頼をすれば、これらの手続を全て弁護士に任せることができます。まとめ
これまで解説したとおり、相続でもめることは決して他人事ではありません。 相続で揉めないための事前の対策や、揉めてしまった場合に早期の解決を目指すには、相続に詳しい弁護士に依頼するといいでしょう。

この記事の監修者

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