
- 遺産分割協議のやり直しができる場合
- 遺産分割協議をやり直した後に必要となる手続き
- 遺産分割協議をやり直した場合の税務の処理
【Cross Talk 】遺産分割協議をやり直したい!
先日父が亡くなり、母・私・弟で相続をして遺産分割協議は既に行われました。私が母と同居をすることを前提に遺産を多めに貰ったのですが、私が単身赴任をすることになったため、母の面倒を弟が見ることになりました。
原則はできないのですが、遺産分割を行った当事者全員の合意がある場合には可能です。
詳しく教えてください。
遺産分割協議をしたときに、原則としてはやり直しはできません。 しかし、当事者全員が同意しているときや、遺産分割協議が無効・取消原因があるときには例外的にやり直しが可能です。遺産分割協議をやり直す場合の手続きや税金関係について確認しましょう。
遺産分割のやり直しは原則できない

- 遺産分割のやり直しは原則できない
遺産分割のやり直しはできるのでしょうか。
一度合意したものを簡単に覆すことができるのは妥当ではなく、原則はできません。
遺産分割のやり直しは原則できないことを確認しましょう。 遺産分割協議は、合意により終了します。 協議の内容は遺産分割協議書に記載され、共同相続人が各自、自分が相続することになった遺産についての相続手続きを行います。 やっぱり自分が土地を相続したい!と思ったからといって、やり直しをしなければならないとなると、いつまでたっても遺産分割協議は終わりません。 原則、遺産分割協議は合意をしたら終了して確定します。
例外的に遺産分割のやり直しができる場合

- 遺産分割協議が無効・取消になってやり直す場合
- 遺産分割協議を全員の合意のもとでやり直す場合
- 新たな遺産がみつかった場合の遺産分割のやり直し
原則ということは例外があるのですね。
はい、遺産分割協議が無効・取消となる場合や、全員が同意をしている場合には可能です。
例外的に遺産分割協議のやり直しができる場合について確認しましょう。
遺産分割協議に無効・取消原因がある場合
遺産分割協議が無効・取消ができるような場合には、遺産分割協議がやり直しになります。 例えば、相続人全員が参加していないなど遺産分割協議が無効である場合には、遺産分割協議はやり直しとなります。 また、遺産分割協議にあたって詐欺や強迫が用いられた場合には取り消すことができ、遺産分割協議はやり直しとなります。
遺産分割協議について遺産分割協議を行った全員の合意がある場合
遺産分割協議をしたものの事情が変わって当事者全員が別の分け方がよかった、ということもあります。 この場合には再度の遺産分割協議を認めてもよく、やり直しをすることになります。
新たな遺産が見つかった場合
遺産分割協議をした後に、被相続人の遺産であった新たな財産が見つかる場合があります。 この場合、新たな遺産がどの程度のものか、事前にどのような取り決めをしているかによってケース分けして考える必要があります。
まず、新たな遺産がかなりの高額のもので、その遺産があることを知っていれば、従来の遺産分割協議をしていなかったような場合には、遺産分割協議は民法95条の錯誤無効となり、もう一度協議をやり直すことになります。 次に、新たな遺産が従来の遺産分割協議を覆す程度のものではない場合には、新たに見つかった遺産について遺産分割協議を行うことになります。 この場合でも、当事者が合意のうえで遺産分割協議を一からやり直すこと自体は可能です。 新たな遺産が見つかった場合については「遺産分割協議後に新たな財産が発覚!この場合どうすればいいの?」でお伝えしていますので参考にしてください。
遺産分割協議のやり直しをするのに期限はない

- 全員の合意で遺産分割協議をやり直すのに期限はない
- 取消権を行使する場合には5年の時効がある
遺産分割協議のやり直しはいつまでにしなければならないのでしょうか。
特に遺産分割協議はいつまでにやるということは定められていませんので、いつでも大丈夫です。ただし、取消権を行使してのやり直しである場合には、追認をすることができる時から5年の時効があるので注意をしましょう。なお、遺産分割から20年でも時効により取消権が消滅します。
遺産分割協議のやり直しをするのに期限はない
遺産分割協議をやり直す場合には期限はありません。 しかし、取消権を行使してやり直す場合には時効がありますので以下で解説いたします。取消権には時効(期限)がある
遺産分割協議が詐欺または強迫によっておこなわれて、取り消すことができる場合の取消権については、追認できる時から、5年の時効で消滅すると規定されています(民法126条)。 そのため、取り消すことができる場合には5年の期間制限があるといえます。遺産分割のやり直しをする場合の注意点

- 遺産分割をやり直しても相続人から財産を取得している第三者がいる場合には取り戻せない
- 不動産の所有者が変わった場合には費用がかかる
遺産分割をやり直す場合に注意しておくことはありますか?
やり直す前に相続人が第三者に遺産を譲渡していたような場合には第三者から取り戻すことができません。
遺産分割をやり直す前に相続人が第三者に遺産を譲渡していた場合
遺産分割をやり直す場合に注意すべきなのが、やり直し前に第三者に財産を譲渡してしまっているような場合です。 最初に遺産分割をして遺産をもらった方は、その遺産を第三者に譲渡することがあります。
遺産分割をやり直すからといって、第三者に譲渡された遺産は基本的には取り戻せません。 例外的に、やり直しの原因が詐欺の場合で遺産分割を取消すときは、第三者が取消しを知っているような場合には、民法96条3項によって取り戻せる可能性はあります。 例えば、第三者が、被相続人が保有していた遺産を譲り受けたくて、相続人に入れ知恵をして遺産分割において詐欺を行った場合です。 このようなケースは珍しいので、既に第三者に譲渡されている遺産がある場合には、基本的には取り戻せないと考えておきましょう。
不動産を譲渡するときに費用がかかる
不動産の持ち主が変わる場合には、不動産の登記を変更することになります。 不動産登記にかかる登録免許税や、登記を司法書士に依頼した場合には司法書士に対する費用の支払いもあることを確認しておきましょう。
遺産分割協議をやり直した場合には不動産登記の名義変更が必要

- 遺産分割協議のやり直しで不動産の名義人に変更があった場合には不動産登記の名義変更を行いましょう
遺産に不動産があるのですが何に注意をすべきでしょうか?
不動産がある場合には不動産登記の名義変更をしておきましょう。
遺産分割協議をやり直す場合、遺産の中に家・土地・マンションなどの不動産がある場合には、不動産登記の名義変更を行いましょう。 法定相続分に基づく相続登記がされている場合には、遺産分割を原因とする不動産登記をします。 最初の遺産分割協議によって決められた内容で登記をしている場合には、一度その登記を抹消したうえで、遺産分割後の相続登記を行います。
遺産分割協議をやり直した場合には課税される

- 遺産分割協議をやり直した場合の課税関係
ちなみに遺産分割協議をやり直すときに、大きなお金が動くと税金がかかったりしますか?
はい、遺産分割協議のやり直しによって遺産の移動が譲渡・交換・贈与にあたると判断される場合、課税の対象となる可能性があります。
遺産分割協議をやり直した場合には、課税の問題は発生するのでしょうか。 この点について、遺産分割協議のやり直しがあった場合の課税は、譲渡・交換・贈与があったものと判断されることがあります。 そのため、相続する遺産が減った方から相続する遺産が増えた方に対する贈与等にあたると評価されれば贈与税が、譲渡・交換と評価できる場合には所得税等がかかることになります。
最初の遺産分割協議から新しく財産が移転したものと評価をする以上、既に相続税を申告・納付している部分については影響ありません。 なお、最初の相続が無効・取消ができる場合には、遺産分割後に財産を移転したという評価をすることはできないため、このような税金はかかりません。
まとめ
このページでは、遺産分割協議をやり直すことについてお伝えしました。 基本的に遺産分割協議のやり直しはできないのですが、例外的にできるケースもあります。 不動産登記や課税といった問題もあるので、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。 遺産分割協議に関しては「東京新宿法律事務所|遺産分割協議」で詳しい解説をしていますので、参照してください。

この記事の監修者

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