遺産分割協議はいつまでにやらなきゃいけない?あとからやり直しできる?
ざっくりポイント
  • 遺産分割協議の期限
  • 遺産分割協議のやり直しができる場合と必要な手続き
  • 遺産分割協議をやり直した場合の税務の処理
目次

【Cross Talk 】遺産分割協議の期限はいつまで?やり直しはできる?

先日父が亡くなり、母・私・弟で相続をしました。
これから相続の手続きを行うのですが、私と弟の仲が良くないので、ゆっくり様子を見ようと思っています。
遺産分割協議はいつまでにしなければならないのか期限みたいなものはありますか?
また一旦分割協議が終わった後にやり直しはできるのでしょうか。

遺産分割協議に法律上の期限はないのですが、相続税申告や新しく改正で義務とされた相続登記に必要となるのでなるべく早くやっておくべきですね。
やり直しは、遺産分割を行った当事者全員の合意があれば可能ですが、注意も必要です。

遺産分割協議の期限や、やり直しについての基礎知識を確認

遺言書なしに相続が開始すると遺産分割協議をすることになります。
遺産分割協議はいつまでに行わなければならない、という期限はありませんが、なるべく早めに行うべき理由もあります。
とはいえ遺産分割協議を急いでも、やり直すことは原則としてできません。
このページでは、遺産分割の期限と遺産分割のやり直しについてお伝えいたします。

遺産分割協議の期限

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議に期限はない

遺産分割協議に期限はないんですね。

おっしゃる通りで法律上の期限はないのですが、なるべく早くしないと後の手続きに差し支えることになります。

遺産分割協議には期限はありません。

遺産分割協議に期限はないが早めにするべき理由

相続に関する手続きとして、相続放棄は原則として相続開始を知ったときから3ヵ月以内に行うべきとされていたり、相続税申告が10ヵ月以内に行うべきとされていたりして、期限が定められているものがあります。

しかし、遺産分割協議自体については、いつまでに行わなければならないという期限はありません。

ただ、遺産分割協議は様々な手続きを行ううえでの前提になっています。

先延ばしにすると様々なリスクが発生しますので、次項で確認しましょう。

遺産分割協議を引き延ばした場合のリスク

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議を引き伸ばした場合のリスク
  • 特に相続税申告では様々な制度が使えないことがある

遺産分割協議を引き伸ばした場合にはどのようなリスクがあるのですか?

銀行預金を下ろせなかったり、特に相続税申告の場合に使える制度が使えないなどの不都合が生じます。

遺産分割協議を引き伸ばした場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか。

遺産に関する処分ができないリスク

遺産に関する各種処分ができないことが多いです。
例えば、被相続人の預金口座は、その方が亡くなったことを金融機関が確認すると凍結されます。
こうなった口座からお金を下ろすためには、基本的には遺産分割を行って遺産分割協議書を添付書類として解約の手続きを行います。

一部の預貯金を下ろすこともできますが、従来のようにカードを持っていってすぐにお金をおろせるわけではなく、銀行での所定の手続きや、裁判所での所定の手続きが必要です。
その他の資産についても、処分のためには遺産分割が終わって遺産分割協議書が必要なので、遺産分割協議を引き伸ばすと、基本的には処分をすることができません。

相続人が増えてしまい相続が複雑になるリスク

遺産分割を伸ばしていると、共同相続人の一人が亡くなるなどしてさらに相続が発生し、相続が複雑になることがあります。
例えば、父・母・子ども2名が相続人である場合で、その子どもも亡くなって孫が2名いる場合には、相続人はその時点で計4名となります。
手続きがより複雑になるのみならず、合意が得難くなる可能もあるというのはリスクです。

遺産を単独で処分されてしまうリスク

遺産を単独で処分されてしまうリスクがあります。
例えば、不動産がある場合に、いったん共有者名義としたうえで共有持分のみ売却することが可能です。
その結果、共有持分を買い取った会社などが遺産分割に入ってくることがあり、トラブルになることもあります。

他の手続きに影響する

遺産分割協議には期限がなくても、相続税申告には相続開始を知った日から10ヵ月の期間制限があります。
相続税申告をする際によく利用される制度として、小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減がありますが、これらは遺産分割を終えていることが適用の条件です。
遺産分割が終わっていないからといって申告期限を伸ばすことはできないので、いったんこれらの制度の利用をしないで相続税申告・納税を行い、遺産分割が終わってから更正の請求という形で申告をやりなおして還付をしてもらうことになります。
税理士に依頼する場合には別途の依頼が必要になるなど、余分な手間や費用がかかることになります。

遺産分割のやり直しは原則できない

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割のやり直しは原則できない

遺産分割のやり直しはすぐにできるのでしょうか。

一度合意したものを簡単に覆すことができるのは妥当ではなく、原則はできません。

遺産分割のやり直しは原則できないことを確認しましょう。

遺産分割協議は、合意により終了します。協議の内容は遺産分割協議書に記載され、共同相続人が各自で、自分が相続することになった遺産についての相続手続きを行います。
誰かが「やっぱり自分が土地を相続したい!」と思ったからといって、やり直しをしなければならないとなると、いつまでたっても遺産分割協議は終わりません。
原則、遺産分割協議は合意をしたら終了して確定します。

例外的に遺産分割のやり直しができる場合

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議が無効・取消になってやり直す場合
  • 遺産分割協議を全員の合意のもとでやり直す場合
  • 新たな遺産がみつかった場合の遺産分割のやり直し

原則ということは例外があるのですね。

はい、遺産分割協議が無効・取消となる場合や、全員が同意をしている場合には可能です。

例外的に遺産分割協議のやり直しができる場合について確認しましょう。

遺産分割協議に無効・取消原因がある場合

遺産分割協議が無効・取消ができるような場合には、遺産分割協議がやり直しになります。

例えば、相続人全員が参加していないなど遺産分割協議が無効である場合には、遺産分割協議はやり直しとなります。
また、遺産分割協議にあたって詐欺や強迫が用いられた場合には取り消すことができ、遺産分割協議はやり直しとなります。

遺産分割協議を行った相続人全員の合意がある場合

遺産分割協議をしたものの、その後事情が変わって当事者全員が別の分け方がよかった、となることもあります。
この場合には再度の遺産分割協議を認めてもよく、全員の合意のもとやり直しをすることになります。

新たな遺産が見つかった場合

遺産分割協議をした後に、被相続人の新たな遺産が見つかる場合があります。
この場合、新たな遺産がどの程度のものか、事前にどのような取り決めをしているかによって場合分けして考える必要があります。

まず、新たな遺産がかなり高額のもので、その遺産があることを知っていれば、従前の遺産分割協議はしていなかったと一般的にも言える程の場合には、遺産分割協議は民法95条の錯誤取消の対象となり、取り消したうえで、もう一度協議をやり直すことになります。

他方、新たな遺産が従来の遺産分割協議を覆す程度のものではない場合には、新たに見つかった遺産について遺産分割協議を行うことになります。 この場合でも、当事者が合意のうえで遺産分割協議を一からやり直すこと自体は可能です。
新たな遺産が見つかった場合については「遺産分割協議後に新たな財産が発覚!この場合どうすればいいの?」でお伝えしていますので気になる方は参考にしてください。

遺産分割協議のやり直しをするのに期限はない

知っておきたい相続問題のポイント
  • 全員の合意で遺産分割協議をやり直すのに期限はない
  • 取消権を行使する場合には5年の時効がある

遺産分割協議のやり直しはいつまでにしなければならないのでしょうか。

特に遺産分割協議はいつまでにやるということは定められていませんので、いつでも大丈夫です。
ただし、取消権を行使してのやり直しである場合には、追認をすることができるときから5年の時効があるので注意をしましょう。なお、遺産分割から20年でも時効により取消権が消滅します。

遺産分割協議のやり直しをするのに期限はない

遺産分割協議をやり直す場合には期限はありません。 しかし、取消権を行使してやり直す場合には時効がありますので以下で解説いたします。

取消権には時効(期限)がある

遺産分割協議が錯誤、詐欺または強迫によって行なわれて取り消すことができる場合、取消権については、追認できるときから、5年の時効で消滅すると規定されています(民法126条)。

そのため、取り消すことができる場合には5年の期間制限があるといえます。

遺産分割のやり直しをする場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割をやり直しても相続人から遺産を取得している第三者がいる場合には取り戻せない
  • 不動産の所有者が変わった場合には費用がかかる

遺産分割をやり直す場合に注意しておくことはありますか?

やり直す前に相続人が第三者に遺産を譲渡していたような場合には第三者から取り戻すことができません。

遺産分割をやり直す前に相続人が第三者に遺産を譲渡していた場合

遺産分割をやり直す場合に注意すべきなのが、やり直し前に当初の取得者が第三者に遺産を譲渡してしまっているような場合です。

遺産分割をやり直すからといって、第三者に譲渡された遺産は基本的には取り戻せません。

例外的に、やり直しの原因が詐欺の場合で遺産分割を取消すとき、第三者が詐欺を知っていたような場合には、民法96条3項によって取り戻せる可能性はあります。

例えば、第三者が、被相続人が保有していた遺産を譲り受けたくて、入れ知恵をした相続人が遺産分割において詐欺を行った場合です。
もっとも、このような場合は珍しいので、既に第三者に譲渡されている遺産がある場合には、基本的には取り戻せないと考えておきましょう。

不動産を譲渡するときに費用がかかる

不動産の持ち主が変わる場合には、不動産の登記を変更することになります。 不動産登記にかかる登録免許税や、登記を司法書士に依頼した場合には司法書士に対する費用の支払いもあることを確認しておきましょう。

遺産分割協議をやり直した場合には不動産登記の名義変更が必要

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議のやり直しで不動産の名義人に変更があった場合には不動産登記の名義変更を行いましょう

遺産に不動産があるのですが何に注意をすべきでしょうか?

不動産がある場合には不動産登記の名義変更をしておきましょう。

遺産分割協議をやり直す場合、遺産の中に家・土地・マンションなどの不動産がある場合には、不動産登記の名義変更を行いましょう。 法定相続分に基づく相続登記がされている場合には、遺産分割を原因とする不動産登記をします。 最初の遺産分割協議によって決められた内容で登記をしている場合には、一度その登記を抹消したうえで、遺産分割後の相続登記を行います。

遺産分割協議をやり直した場合には課税される

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議をやり直した場合の課税関係

ちなみに遺産分割協議をやり直すときに、大きなお金が動くと税金がかかったりしますか?

はい、遺産分割協議のやり直しによって遺産の移動が譲渡・交換・贈与にあたると判断される場合、課税の対象となる可能性があります。

遺産分割協議をやり直した場合には、課税の問題は発生するのでしょうか。

この点について、遺産分割協議のやり直しがあった場合の課税は、譲渡・交換・贈与があったものと判断されることがあります。
そのため、相続する遺産が減った方から相続する遺産が増えた方に対する贈与等にあたると評価されれば贈与税が、譲渡・交換と評価できる場合には所得税等がかかることになります。

最初の遺産分割協議から新しく遺産が移転したものと評価をする以上、既に相続税を申告・納付している部分については影響ありません。
なお、最初の相続が無効・取消ができる場合には、遺産分割後に遺産を移転したという評価をすることはできないため、このような税金はかかりません。

まとめ

このページでは、遺産分割協議をやり直すことについてお伝えしました。 基本的に遺産分割協議のやり直しはできないのですが、例外的にできる場合もあります。
不動産登記や課税といった問題もあるので、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。
遺産分割協議に関しては「東京新宿法律事務所|遺産分割協議」で詳しい解説をしていますので、気になる方はご参照ください。

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