遺留分の放棄という制度について、相続放棄との違い
ざっくりポイント
  • 遺留分の放棄とは
  • 相続放棄とはどう違うか
  • 遺留分の放棄をした場合の問題点
目次

【Cross Talk 】遺留分の放棄って何でしょうか?

自分の相続について質問があります。自分には子どもが3人いるのですが、子どもの1人が浪費家で仕事もせずに親である私の遺産を食いつぶしてきたので、相続をさせたくないです。遺言でこの子どもの相続分を0とすると遺留分侵害額請求権を行使されるようなのですが、遺留分は放棄できるということもわかりました。これは使えませんか?

遺留分の放棄は遺留分権利者が自主的に放棄する必要があり、生前である場合には家庭裁判所の許可も必要です。場合によっては相続人の廃除などの制度の利用も検討しましょう。

なるほど、詳しく教えてもらっても良いですか?

遺留分も放棄ができる。要件や似たような制度、遺留分の放棄によってどのような影響が生じるかを確認。

相続人に最低限保障されている取り分である遺留分は放棄をすることが可能です。 ただし、相続人の生活保障の観点から定められているのが遺留分なので、その放棄については慎重に判断されます。遺留分放棄と似ている相続放棄と一緒に、どのような制度か、遺留分の放棄によってどのような影響が生じるか、などを確認しましょう。

遺留分の放棄とはどのような制度か

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺留分放棄の制度
  • 相続放棄との違い

遺留分の放棄とはどのような制度なのでしょうか。

遺留分のみを放棄する制度のことです。相続人ではなくなる相続放棄とは異なります。

遺留分の放棄とはどのような制度なのでしょうか。

遺留分とは

前提となる遺留分について確認しておきましょう。 遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障されている取り分のことをいいます。 遺贈や生前贈与によって、相続人が全く相続できない、極めて少ない遺産しか相続できないということがあります。 これによって、生活ができないということを防ぐために、遺留分が規定されています。 遺留分は、相続分の1/2(相続人が親・祖父母のみの場合には1/3)とされています(民法1042条1項)。 遺留分を侵害する遺贈・生前贈与がされた場合には、遺留分侵害額請求権を行使することができます(民法1046条)。

遺留分の放棄とは

遺留分の放棄とは、遺留分の権利を行使しないことです。 民法では1049条に規定されており、これをすることによって遺留分侵害額請求権を行使することができるようになります。

相続開始前の遺留分の放棄

遺留分の放棄については、相続が開始する生前においてもすることができますが、家庭裁判所の許可が必要です(民法1049条)。 家庭裁判所は、本人が望んでいるからという理由だけで遺留分の放棄を認めるわけではなく、被相続人などが遺留分の放棄を申立てた人に生前贈与をした・借金の肩代わりをしたなど、なんらかの代償がある必要があります。

相続開始後の遺留分の放棄

相続開始後には家庭裁判所の許可がなくても遺留分の放棄は可能です。 具体的な方法としては、遺留分を侵害したとされる、生前贈与を受けた人・遺贈を受けた人に対して、遺留分を放棄する旨を伝えます。 なお、遺留分侵害額請求権は、相続の開始・遺留分の侵害があったことを知ったときから1年を超えると時効にかかりますので、以後は遺留分を放棄しなくても行使をすることができません。

相続放棄との違い

似たような制度として相続放棄があります。 相続放棄とは、相続人が相続をする権利を放棄することを言います。 相続放棄によって、相続について最初から相続人ではなかったという扱いとなります(民法939条)。 家庭裁判所に申述をして行うので、被相続人が生きている間に行う遺留分の放棄と同様といえます。

しかし相続放棄は、被相続人の生前に行うことができません。 相続放棄によって相続人ではなくなるので、相続人に保障されている遺留分もまた同時に消滅します。 遺留分の放棄をしただけでは、相続人としての地位は存続するので、例えば被相続人に債務があった場合に、債務の負担をする必要があります。

遺留分の放棄をさせたいという希望がある場合の他の対応方法

本件のご相談者様のように、相続にあたって遺留分すらあげたくない、という希望がある場合があります。 この場合に、生前贈与などの利益を与えて、生前に遺留分を放棄してもらうことが可能です。 しかし、生前贈与などをしたくないため、家庭裁判所の遺留分の放棄の許可が下りない見込みであるような場合や、相続人が遺留分の放棄をしないという場合には、遺留分の放棄はできません。 このような場合には、相続人の廃除を申立てることや、相続欠格に該当するようなことをしている場合には、それを証明できるようにしておくなどして、遺留分の基礎となる相続権を奪う仕組みを利用することを検討しましょう。

相続人の廃除・相続欠格については、 「遺産を相続させたくない!推定相続人の廃除とは?」 「相続欠格とは?確認方法や相続廃除の違いについてわかりやすく解説!」 で詳しく解説していますので参照してください。

相続人の廃除や相続欠格に該当するようなことがない場合には、遺留分侵害額請求を受ける人に、現金を多めに準備できるように調整しましょう。 これは、遺留分侵害額請求権は、遺留分に相当する金銭を請求する権利ですので、これに応じられるようにするためです。

遺留分の放棄についての諸問題

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺留分を放棄した場合に他の相続人の遺留分には影響しない
  • 遺留分の放棄は遺留分権利者の自由なので遺留分を放棄してもらえない場合を想定して遺言書を残しておく

遺留分を放棄した場合には、ほかの人の遺留分が増えたりするんでしょうか。

いいえ、遺留分が放棄されても他の相続人の遺留分には影響を及ぼさないとされています。

遺留分の放棄について知っておくべきことを確認しましょう。

遺留分を放棄した場合には他の相続人の遺留分に影響を与えるか

遺留分の放棄をした場合、他の相続人の遺留分には影響を与えません。 これは民法1049条2項で、遺留分の放棄をしても他の共同相続人の遺留分に影響を与えない旨が規定されています。 つまり、相続人の1人が遺留分を放棄した場合でも、他の共同相続人の遺留分が増えるわけではありません。

これは、相続放棄をした場合には、相続人ではなかったものとして扱われるため、他の相続人の相続分が増え、相続分に応じて額が増える遺留分も増えることと対比すべきです。

例えば、遺産が1,000万円で、相続人が子ども2人だとして(遺留分は250万円)
・子どもの一人が遺留分の放棄をした場合には、もう一方の子どもの遺留分は増えないので遺留分は250万円のままです。

・一方で子どもの一人が相続放棄をした場合には、もう一方の子どもが単独で相続することになり、遺留分はその1/2なので、遺留分は500万円ということになります。

遺留分を放棄してもらえない場合を想定した遺言書を作成する

遺留分の放棄はあくまで、遺留分権利者が申立てを行ってするもので、第三者が申立てて無理矢理遺留分を奪う制度ではありません。 そのため、遺留分を放棄しない、という場合には第三者からではどうしようもないことがあります。

遺言書を作成する際に、遺留分を侵害するような遺言をすることが原因なのですが、何らの説明もなく遺留分の侵害をされるような遺言書があった場合には、納得がいかないというのが本音でしょう。 しかし、理由次第では、遺留分権利者も遺留分がないことについて納得がいくかもしれません。 遺言書には、附言事項という項目があり、遺言の本文とは違うことを記載する欄があります。

ここにこのような遺言をした趣旨や、争わないでもらいたい旨のお願いをすることで、遺留分侵害額請求権を行使しない(あるいは遺留分の放棄に応じる)ということが期待できます。

まとめ

このページでは遺留分の放棄についてお伝えしました。 遺贈で遺留分侵害額請求をされる可能性があるような場合には、適切な対処法などを検討する意味も含めて、弁護士に相談しておくのが望ましいといえるでしょう。

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