遺産分割協議の進め方と各段階における注意事項を詳しく解説します!
ざっくりポイント
  • 遺言書によって遺産の分け方が決められていない場合は遺産分割協議をする必要がある
  • 協議には全ての相続人が参加する必要がある
  • 協議が成立した後に相続財産が新たに判明した場合には別途協議を行う必要がある
  • 協議が成立すれば遺産分割協議書を作成する
目次

【Cross Talk 】遺産分割はどう進めたらいいの?

遺産分割はどう進めたらいいの?

遺言書がある場合は基本的に遺言書どおりに遺産を分けることになります。遺言書がない場合は、相続人全員による話し合いで遺産の分け方を決める必要があります。これを遺産分割協議といいます。

遺言書はありません。遺産分割協議はどう進めればいいか教えてください。

遺産分割協議で注意すべきこととは?

遺言書によって遺産の分け方が決められていない場合、遺産分割協議をする必要があります。 ところが、遺産分割協議は、適切に進めないとせっかく協議が成立してもやり直しになるおそれがあります。 そこで今回は、遺産分割協議の進め方や注意点について、詳しく解説いたします。

遺産分割協議とは

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  • 相続人が複数いる場合に遺産の分け方を話し合うことを遺産分割協議という
  • 遺言書があっても遺言書と異なる遺産分割ができる場合がある

遺産分割協議とは具体的には何をするのですか?

遺産分割協議とは、相続人が複数いる場合に、相続人の間で話し合い、遺産の分け方を決めることをいいます。遺言書で遺産の分け方が決められている場合には基本的には遺産分割協議は必要ありません。もっとも、話し合いで遺言書と異なる遺産の分け方をすることは可能です。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、相続人が遺産の分け方を話し合いで決める手続をいいます。 民法は、共同相続人(相続人が複数いる場合)は、原則としていつでも遺産の全部または一部の分割をすることができると定めています(民法907条1項)。

遺産分割協議が必要な場合

相続人が複数いる場合でも、常に遺産分割協議が必要というわけではありません。 というのも、被相続人は、遺言書で、遺産の分割の方法を定めることや(民法908条)、遺産の全部または一部を処分(遺贈)することができるからです(同964条)。

したがって、遺産分割協議が必要になるのは、基本的には遺言書がない場合または遺言書に遺産の一部の指定しかない場合ということになります。 後者は、例えば遺言書に「自宅の土地・建物は長男に相続させる」とだけ書いてある場合を想像してください。遺言書で遺産の一部しか分割の方法が決められていないため、他の遺産の分割の方法を共同相続人の協議によって決める必要があるのです。

遺言書がある場合は基本的には遺産分割協議をする必要はありませんが、遺言書と異なる遺産分割をしたい場合は、例外的に遺産分割をする必要があります。

詳細については、「遺言書に納得できない!遺言書と異なる遺産分割はできる?」をご参照ください。

遺産分割協議の進めかた

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  • 相続人・相続財産を確定してから協議をする
  • 具体的相続分を話し合ったうえで誰がどの遺産を相続するかを決める
  • 協議が成立すれば遺産分割協議書を作成し、成立しなければ調停・審判を利用する

遺産分割協議はどうやって進めればいいですか?

まず、相続人や相続財産の調査をする必要があります。その上で、具体的な相続分と具体的な分割方法について相続人全員で協議し、合意ができれば遺産分割協議書を作成します。合意ができなければ家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用することになります。

相続人が誰かを確定する

遺産分割協議を進める前提として、相続人が誰かを確定する必要があります。 というのも、遺産分割協議は相続人全員でしなければならず、遺産分割協議が成立した後に新たな相続人が発覚した場合、遺産分割協議は無効となり、原則として遺産分割協議をやり直さなければならなくなるからです。

詳細については、「遺産分割協議成立後に新たな相続人が発覚!協議はやり直しになる?」をご参照ください。

相続人の確認は、亡くなった方(被相続人)の戸籍をもとに行います。 具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、改製原戸籍謄本(戸籍法改正前の古い戸籍)などを取り寄せて、相続人を特定します。 もし所在不明の相続人がいる場合には、その相続人の戸籍をたどり、戸籍の附票を取り寄せることで、住民票上の住所を特定することができます。

詳細については、「相続人調査」住所・連絡先を知らない相続人を探す方法」をご参照ください。

なお、相続人が確定できたとしても、協議に先立って手続が必要な人がいる場合があります。 例えば、被相続人の配偶者と、被相続人と配偶者との間の未成年の子どもが相続人となる場合を想像してください。 通常、配偶者は、未成年の子どもの親権者として法定代理人となり、未成年の子どもに代わって契約などの法律行為をすることができます。

ところが、相続の場面では、配偶者の取り分が増えれば未成年の子どもの取り分が減る(逆も同様)という関係になりますから、配偶者に未成年の子どもの代理をさせるわけにはいきません。 そこで、このような場合には、未成年の子どもの特別代理人を選任する必要があるのです。

詳細については、「未成年者が相続する場合の利益相反って?親が代理人になれないの?」をご参照ください。

また、相続人が遺産分割協議に参加するには、遺産分割の意味をきちんと理解する能力を有していなければなりません。 相続人が認知症等によってそのような能力を欠いている場合には、成年後見人等の選任が必要になるのです。

詳細については、「相続人に認知症の方がいる場合どうするの?成年後見人制度とは?」をご参照ください。

さらに、相続人の調査をしても、相続人が住民票上の住所に居住しておらず所在が分からない、あるいは生きているかどうかもわからないという場合もあるでしょう。 前者の場合にはその相続人を「不在者」として不在者財産管理人を選任してもらう、後者の場合には失踪宣告の請求をする(失踪宣告によって死亡したものとみなされます)という手続きが必要になります。

詳細については、「遺産分割協議をしたいのに相続人の1人が行方知れず…協議できる?」をご参照ください。

相続財産を確定する

遺産分割協議に先立ち相続人を確定させるほか、相続財産を確定する必要があります。

新たに相続人が発覚した場合と異なり、遺産分割協議後に新たな遺産が発覚した場合、原則として遺産分割協議そのものは無効になりません。 とはいえ、新たに発覚した遺産について、改めて遺産分割協議をする必要はあります。 遠隔地に居住しているなど、何度も話し合いをすることが難しい場合もあるでしょうから、キチンと相続財産を調査したうえで遺産分割協議に入るべきと言えます。

詳細については、「遺産分割協議後に新たな財産が発覚!この場合どうすればいいの?」をご参照ください。

具体的相続分についての話し合い

相続人と相続財産を確定できれば、相続人全員で具体的相続分について話し合いをします。

民法は、遺言書がない場合に、被相続人と一定の身分関係のある者について相続する割合を定めています。これを法定相続分といいます。 遺産分割協議は、この法定相続分を目安にするのが一般的ですが、法定相続分は身分関係をもとに割合を定めただけで、個別の事情は一切考慮されていません。

しかし、例えば一部の相続人が被相続人の介護をしたことで被相続人の遺産を維持できた場合、あるいは一部の相続人が被相続人から不動産の取得費用を援助してもらった場合など、法定相続分どおりに相続することが不公平と考えられるケースがあります。 これらの場合に、具体的事情を考慮して相続分を修正したものが、具体的相続分です。

具体的相続分を決めるには、相続人に寄与分(上の例の介護)や特別受益(上の例の不動産の取得費用の贈与)などが認められるかについて話し合いをする必要があります。

具体的相続分や寄与分、特別受益の詳細については、以下のコラムをご参照ください。

「相続人の具体的相続分と法定相続分・指定相続分の違いは?」

「寄与分とは?親の介護をしたら相続分が増える?嫁が介護していたら?」

「相続の特別受益とその持ち戻しとは?学費や生命保険は含まれる?」

どの遺産を誰が相続するかについて話し合う

具体的相続分は、各相続人の相続分を具体的な金額で表したものです。 そのため、現金・預貯金以外にも遺産がある場合、具体的相続分が決まったとしても、だれがどの遺産を取得するかまでは自動的に決まりません。 そこで、どの遺産を誰が相続するかについて話し合いをする必要があるのです。

遺産の分け方には、遺産そのものを分ける現物分割のほか、売却して売却代金を分ける換価分割、特定の相続人が遺産を取得して他の相続人には持分に相当する金銭を支払う代償分割があります。

協議の内容を遺産分割協議書に記載をする

協議の結果、相続人全員でどの遺産を誰が相続するかについて合意ができれば、合意内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。 遺産分割協議書は、後日の紛争を防ぐため、相続人全員が署名し、実印で押印するのが一般的です。

遺産分割協議書の記載内容や作成方法については、 「遺産分割協議書とは?文例集から提出先まで解説!作成は弁護士へ!」をご参照ください。

話し合いがすすまない場合には調停・審判を利用する

話し合いをしても合意ができない場合、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用することになります。 調停は、裁判所の調停委員を介して話し合いを行う手続で、まずは調停によって合意ができないかを模索するのが一般的です。 調停でも合意ができない場合は審判に移行し、裁判所(審判官)が遺産の分け方を決めることになります。

まとめ

このページでは、遺産分割協議の進め方について解説しました。 相続人及び相続財産の調査や具体的相続分の計算は専門的な知識が必要になるので、早めに専門家である弁護士に相談することを検討してもいいでしょう。

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この記事の監修者

弁護士 鈴木 奏子
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