遺言で受取人を変更することってできるの?遺産と保険金についての処理を確認

- 遺産の受取人の変更は遺言の変更で行う
- 保険金の受取人を遺言上で変更しておくことができる
目次
【Cross Talk】遺産と保険金の受取人って変更できる?
ずいぶん前に公正証書遺言で遺言書を作成しておいたのですが、その後遺産を受け取る相続人に随分と生前贈与をしました。ちょっと不公平かな?と思うので、一部財産の受取人を変更したいのですが、それってできるのでしょうか?
遺産の受け取りでしたら遺言の内容を撤回・変更することが可能です。保険金の受取人の変更も遺言ですることが可能です。どちらも変更の際、注意点がありますので気をつけましょう。
詳しく教えてもらえますか?
遺産・保険金の受取人を変更する場合の法律の規定を知ろう。
相続対策のために遺言書を作成したり、保険金を利用したりすることはよくあります。ただし、相談者様のように、遺言作成後に事情が変わることもあります。そのような場合、遺産や保険金の受取人を変更することが可能です。遺産の場合は遺言書の内容を変更する必要があるので、法律の規定に則って遺言を変更します。保険金の場合は遺言で受取人の変更することが可能になっています。注意点などと併せてみてみましょう。
遺言の内容の変更することはできるか?

- 一度した遺言の内容を変更することは可能
- 民法の規定に沿って遺言の撤回・取消を行う
まず、遺言で受取人を変更するにはどうすれば良いのでしょうか?
遺言の変更に関する規定に沿って、新しく遺言をし直すことが適切な方法になります。
遺言の変更(撤回・取消)をする方法
遺言の変更する方法として、遺言に関する法律である民法1022条以降で、次のように規定しています。 ・ あらたに遺言をして前の遺言を撤回する(1022条) ・ 前の遺言と抵触する遺言・法律行為をする(1023条) ・ 遺言書・遺言の目的となっているものを破棄する(1024条) これらの条文に従うと、たとえばある物の所有権を遺言で相続人の一人に指定していた場合には、次のような措置を取ることになります。 ・ その人に相続させないことだけを決めているならば前の遺言を撤回する遺言をする ・ 別の人に相続させることにする場合、その旨を内容とした前の遺言と抵触する遺言をする ・ 別の人に取得させたい場合、その人に生前に贈与をする ・ 作成した遺言書を破棄する ・ 目的物を売却してしまう、壊す・捨てるなどする なお、遺言は前にした遺言と同じ方式でなくても良いので、たとえば最初にした遺言が公正証書遺言である場合でも、後に自筆証書遺言で撤回することも可能です。遺言の内容を変更する場合にする遺言の例
遺言で前回の遺言を取り消す場合にはどのように記載すれば良いでしょうか。 遺言書を作成する場合には、どの様式によるものであってもきちんと日付が付されているので、変更される遺言を特定するために、いつ作成した遺言書かをきちんと記載します。 公正証書遺言の場合には、作成した公証人、公正証書の番号などがあるので、それをきちんと記載します。 例)自筆証書遺言を取り消す場合 第1条 遺言者は、令和◯◯年○◯月◯◯日付けで作成した自筆証書遺言の全部を撤回する。 例)公正証書遺言を取り消す場合 第1条 遺言者は、令和〇〇年〇〇月〇〇日〇〇法務局所属公証人〇〇作成令和〇〇年第〇〇号の公正証書遺言の全部を撤回する。遺言を破棄することで遺言の内容を撤回する場合の注意点
前述した通り、該当する遺言書を破棄してしまえば遺言の内容を撤回することも可能です。 この時に注意をして欲しいのは、公正証書遺言を作成した際に、謄本として受け取ったものを破棄しても、遺言書の撤回にならないということです。 公正証書遺言の原本は公証役場に保管されており、これを破棄することはできないとされています。 そのため、公正証書遺言を作成した場合には、必ず新しい遺言で公正証書遺言を撤回することになるということを知っておきましょう。遺言で保険金の受取人を変更することができる

- 遺言で保険金の受取人を変更することが可能
- タイミング次第では変更されない場合や、相続税との関係での注意が必要
相続対策で保険に加入したのですが、受取人の変更は保険会社と話し合う必要がありますか?
そちらのほうが望ましいとは言えますが、遺言で変更することも可能です。この場合の注意点も知っておきましょう。
保険法第44条の規定
保険金の受取人の変更は、基本的には保険契約の変更で行うのが望ましいといえますが、たとえば受取人の知り合いの保険会社に加入した場合など、表立って受取人の変更が難しい場合もあるでしょう。 そのため、保険法44条は受取人の変更を遺言ですることも認めています。 ただし、本規定は平成22年4月1日より施行されており、それ以前に加入した保険については適用はありません。保険会社によってはこの方法を認めている場合もあるので、問い合わせて確認してみましょう。遺言で保険金の受取人を変更する場合の記載例
遺言では、どの保険契約かを特定するために、保険契約者・被保険者・保険会社の種類・契約締結をした日時・保険に関する証券の番号などを記載します。 例) 第1条 遺言者は、遺言者を保険契約者及び被保険者として、〇〇生命保険株式会社と令和〇年〇月〇日に締結した生命保険契約(保険証書番号〇〇〇〇〇〇〇〇)の受取人を、長男◯◯◯◯から、次男◇◇◇◇に変更する。タイミング次第で元の受取人に保険金が支払われる可能性がある
この遺言による保険金の受取人の変更については、遺言で新しく受取人に指定された人の行動が遅いと、元の受取人に支払われることになるため注意が必要です。 保険法44条2項で、遺言による保険金の受取人の変更は、相続人が保険会社に通知をしなければ、保険者に対抗することができないと規定しています。 「対抗することができない」ということの意味は、元の受取人に保険金が支払われてしまった後に、保険会社に「あらためて遺言通りの受取人に支払ってください」と言っても保険会社側はすでに支払い済みのため拒否をすることができるということです。 遺言で受取人の変更する場合には、遺言を見つけてもらえるようにしておき、相続人・受取人はすみやかに保険会社に通知を行う必要があるといえます。相続税との関係での注意点
相続税との関係で注意をしておくべきことも知っておきましょう。 保険金は保険契約に基づく金銭の支払ですので、遺産ではないというのが法律における建前なのですが、相続税との関係では「みなし相続財産」として課税の対象になります。 たとえば、保険金の受取人を孫に変更したというような場合で、相続税の基礎控除額を超える遺産があるような場合、受取人となった孫も相続税の申告・納税義務が発生するということを知っておきましょう。まとめ
このページでは、遺産・保険金の受取人の変更を遺言でする方法、注意点についてお伝えしました。 遺産の受取人の変更、保険金の受取人の変更は、法律上の規定に沿って遺言書の内容を変更することで可能です。とはいえ、遺言の記載方法など慎重な対応が必要ですので、弁護士に相談しながら行うのが適切であるといえます。
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