一度作成した遺言書の内容を変更したいときには、遺言書の種類に応じて適切な方法をとる必要があります。
ざっくりポイント
  • 遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類がある。
  • 自筆証書遺言は内容の訂正が比較的容易だが、公正証書遺言は法的な効果が強い分、修正には手間がかかる。
  • 新たに遺言書を作成した方がいい場合もあるが、古い遺言書の効力が一部分残ることもあるので注意が必要。
目次

【Cross Talk 】遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がある。

私は70代の男性です。数年前、いわゆる「終活」の一環として遺言書を作成しました。遺言の内容は全て自分で書き、日付を入れて、署名・押印をして保管しています。しかし最近になって気が変わり、遺言書の内容を変更したいと考えています。どのように手続すればよいのでしょうか?

遺言には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があることをご存知でしょうか。ご相談者様が作成されたのは自筆証書遺言です。この場合、既に作成した遺言書に書き込むことで修正が可能ですが、修正の箇所が多い場合には新たに作成した方がいい場合もあります。

遺言書に2種類あるとは知りませんでした。詳しく教えていただけますでしょうか。

遺言書の修正には所定の手続があり、どの方法をとるかはケースバイケース。

一度遺言書を作成したものの、後で内容を変更する必要性が生じることは珍しくありません。遺言書の修正には所定の手続があり、どのような方法で修正を行うかは遺言書の種類や修正の内容によって異なります。 修正の方法を誤ると、遺言書に意図したとおりの効力が生じないこともありますので注意が必要です。

自筆証書遺言の記載を訂正するには

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  • 自筆証書遺言を追加、削除、変更するときの方法は法律で定められている。
  • 追加、削除、変更を行う際は、その都度署名と押印を行う必要がある。

まず、私が作成した自筆証書遺言を訂正する方法を教えてください。

訂正は追加、削除、変更の3つに分けられます。追加とは文字を付け足すこと、削除とは文字を削ることをいい、変更とは文字を削り、さらに付け足すことをいいます。いずれの場合であっても所定の方法で修正を行った後に署名・押印を行う必要がありますので注意が必要です。

単に修正するだけでなく、改めて署名・押印をする必要があるのですね。早速修正を行いたいと思いますので、具体的な方法を教えてください。

遺言書を作成した後に内容を修正する必要が生じることは珍しくありません。例えば誤字・脱字をしてしまった場合や、遺言書の内容そのものを変更したい場合です。

遺言書は自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類に分かれます。 自筆証書遺言とは、遺言者(すなわち被相続人になる者)が自ら作成し、署名・押印する遺言書です。 では、自筆証書遺言の場合、一度作成した遺言書に変更を加えたいときはどうすれば良いのでしょうか。

自筆証書遺言に変更を加える際には、法律上、遺言者が変更の場所と内容を示し、署名・押印する必要があるとされています(民法第968条3項)。黒く塗りつぶしたり、修正ペン、修正テープ等を使用するなど誤った方法で変更すると無効となりますので注意が必要です。

なぜこのように遺言書の訂正方法に厳格な決まりが設けられているかというと、変造や偽造を避けるためです。つまり一度作成された遺言書の内容を変更することが容易に認められてしまうと、被相続人が死亡した後に相続人などの利害関係者が遺言書の内容を自分に有利なように変更することが起こり得ます。そこで遺言書の内容を変更する際には決まった形式で行うことが求められており、署名や押印などにより遺言書に遺言者本人の意思が反映されていることを担保しているのです。

次に、具体的な変更の方法についてご説明します。

追加をする方法

すでに作成した遺言書に文字を追加する場合には、遺言書の追加したい箇所に「<」や「{」など加入の記号を記入し、追加したい文言を加え、遺言書に押印したのと同じ印鑑を押印します。さらに、追加した行の欄外に「本行○字加入」と書き入れて署名します。

例えば、「東京都新宿区西新宿」と書くべきところを「東京都西新宿」と書いてしまった場合は、「東京都」と「西新宿」の間に加入の記号を記して「新宿区」と書いて押印し、欄外に「本行3字加入」と書き入れて署名することになります。

削除をする方法

すでに作成した遺言書の文字を削除したい場合には、削除したい部分を二重線で消し、遺言書に押印したのと同じ印鑑を押印します。さらに、削除した行の欄外に「本行○字削除」と書き入れて署名します。削除したい部分を二重線で消す際には原文が読めるようにする必要があります。

例えば、「東京都新宿区西新宿」と書くべきところを「東京都内新宿区西新宿」と書いてしまったとします。この場合、「内」を二重線で消して押印し、欄外に「本行1字削除」と書き入れて署名をします。

訂正をする方法

訂正をしたい場合には、訂正したい箇所の文字を二重線で削除して訂正後の文言を書き入れ、遺言書に押印したのと同じ印鑑を押印します。さらに、訂正した行の欄外に「本行○字削除 ○字加入」と書き入れて署名します。

例えば、「東京都新宿区西新宿」と書くべきところを「東京都千代田区西新宿」と書いてしまったとします。この場合、「千代田区」を二重線で消し、その脇に「新宿区」と書いて押印します。さらに欄外に「本行4字削除 3字加入」と書き入れて署名をします。

以上がすでに作成した遺言書を訂正する方法です。軽微な変更の場合には以上の方法で修正するのがおすすめです。 もっとも、変更すべき箇所が多い場合は、1か所ずつ変更するより新たに遺言書を作成した方が早いことがあります。

公正証書遺言の記載自体を修正することはできない

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  • 公証人が作成する公正証書遺言は自筆証書遺言と比べると信用性が高いが、その分修正は手間がかかる。
  • 公正証書遺言を修正する手段として、「誤記証明書」の発行、「更正」、「補充」がある。

先ほど自筆証書遺言の他に「公正証書遺言」というものがあると仰っていましたね。公正証書遺言とはどのようなものなのでしょうか。

公正証書遺言は公正役場で公証人が作成するもので、作成には手数料がかかりますが、一般的に遺言者本人が作成する自筆証書遺言よりも信頼性が高いのが特徴です。

それなら相続手続のことを考えたら公正証書遺言を作成した方がよさそうですね。では、一度作成した公正証書遺言を修正したいときにはどうすれば良いのでしょうか?

公正証書遺言は公証人を通じて作成されるもの

 公正証書遺言とは、遺言者が公正役場で公証人に遺言の内容を伝え、公証人を通じて作成される遺言書です。公証人は、裁判官、検察官、弁護士などの職業を長年務めた人の中から専任される法律の専門家です。 公正証書遺言には自筆証書遺言に比べていくつかの特徴があります。 まず、公正証書遺言は相続手続の際に家庭裁判所の検認手続が不要となります。検認とは、相続人に対して遺言書の存在と内容を知らせ、遺言書の日付や署名などを確認する手続です。したがって、公正証書遺言があると自筆証書遺言がある場合よりもスムーズに相続手続を進めることができます。また、公証人を通じて作成されるため、自筆証書遺言のように形式面で遺言書としての要件を満たしておらず無効となる可能性はほとんどありません。 また、公正証書遺言は遺言者が公証人に口頭で遺言の内容を伝え、書面に残す手続ですので、遺言者本人が高齢で文字を書くことが難しい場合であっても作成が可能です。

そして、公正証書遺言は原本が公証役場で厳重に保管されます。 自筆証書遺言の場合、追加・削除・訂正の手続が法律で定められているとはいえ、第三者が勝手に押印をしたり筆跡を真似て署名するなどして偽造・変造されてしまうリスクがゼロではありません。 他方、公正証書遺言の原本が公証役場から持ち出されることは原則としてなく、遺言者本人に交付されるのは謄本と呼ばれる原本の写しですので、原本の紛失や、その作成後に偽造・変造されるリスクはありません。 なお、公証役場における公正証書遺言の保存期間は、原則20年とされています(公証人法施行規則第27条1項1号)。また,一般的に、公正証書遺言の場合、遺言者が亡くなるまでの間は「保存の必要があるとき」(同条3項)にあたると考えられておりますので、20年の保存期間が満了した後でも,遺言者が亡くなるまでの間、引き続き保管されることになります。

このように公正証書遺言は自筆証書遺言と比べて法律的に信頼性が高い遺言書で、偽造・変造のリスクがないという点でもメリットがあります。 他方で、遺産の価額に応じて数千円~数万円の手数料がかかる、またこの後にご説明するように作成後に訂正ができないというデメリットもあります。 しかし、早期かつ確実に相続手続を進めるために、できる限り公正証書遺言を作成することをおすすめいたします。

記載内容を変更する場合には作り直す必要がある

一般的な公正証書の修正方法として、軽微な誤記の修正であればその公証役場の公証人から「誤記証明書」という書類を発行してもらう方法、軽微な誤記に留まらず内容を一部変更する必要がある場合には、「更正」または「補充」という方法があります。なお、「更正」または「補充」は、「更正証書」または「補充証書」という公正証書を新たに作成するもので、公正証書遺言を作成したときと同じように公証役場に書類を提出し、所定の手続を行い、必要な手数料を支払う必要があります。

もっとも、公正証書遺言の「更正」または「補充」という手続は、遺言を残すという法律行為の本体の内容を変更しない限度で認められます。 したがって、遺言の内容そのものを変更する場合には、新たに公正証書を作り直す必要があります。

遺言の内容を訂正する場合

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  • 古い遺言書と新しい遺言書がある場合は新しい遺言書が優先されるのが原則。
  • ただし、新しい遺言書が優先されるのは前の遺言と新しい遺言が抵触する部分に限られる。

一度作成した遺言書を修正する方法はわかりましたが、案外手間がかかるものなのですね。では、一度遺言書を作成した後に、新たに遺言書を作成し直した場合はどうなるのでしょうか?

自筆証書遺言の場合も公正証書遺言の場合も、基本的には新たに作成した遺言書が効力を有します。ただし、新たに遺言書を作成しても古い遺言書の効力が部分的に残ってしまうこともありますので、注意が必要です。

古い遺言書の効力が残る場合とは、具体的にどのような場合なのでしょうか。

遺言の撤回をして新しい遺言をつくる

自筆証書遺言の場合であっても、変更すべき箇所が多い場合は1か所ずつ変更するより新たに遺言書を作成した方が早いことがあります。

民法には「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と規定されています(民法第1023条)。 「後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」というのは、古い遺言書と新しい遺言書が併存し、その内容に抵触がある場合には、その抵触する部分は作成の日付が新しい遺言書が優先され、古い遺言書は自動的に効力を失うという意味です。これは自筆証書遺言の場合であっても公正証書遺言の場合であっても同様です。

自筆証書遺言を作り直す場合には必ず日付を記載するようにしましょう。日付を記載が漏れていると、どれが新しい遺言書か判断ができないばかりか、そもそも遺言書として無効とされる可能性が高くなります。

抵触する遺言を作成する

民法第1023条の規定は、「前の遺言が後の遺言と抵触するとき」に、「その抵触する部分について」遺言を撤回したものとみなすというものです。 「抵触する」とは「矛盾する」ということを意味します。 逆に言えば、前の遺言と後の遺言が矛盾しない(両立する)場合には、その限りにおいて前の遺言の効果が残ることになります。

例えば、前の遺言に「甲不動産はAに相続させる」と記載されており、後から作成された遺言に「預貯金はBに相続させる」という記載がされていた場合、前の遺言と後の遺言は抵触しません。 したがってこの場合、後から遺言書を作成したとしても「甲不動産はAに相続させる」という前の遺言書の内容と「預貯金はBに相続させる」の後の遺言書の内容の両方が生きることになります。

したがって、新たに作り直す遺言書の内容のみを適用させたい場合には、遺言の内容全てについて、前の遺言と抵触するような内容にする必要があります。例えば、新たに作成する遺言書に「これまでに作成した遺言書は全て取り消す」という文言を記載することにより、新たに作成した遺言書と前に作成した遺言書が抵触することになり、新たに作成した遺言書の内容が適用されます。

まとめ

このページでは、遺言書の訂正をする際の方法を解説いたしました。 自筆証書遺言は手軽に作成でき、修正も比較的容易であるというメリットがある一方で、信頼性という面では公正証書遺言に劣ります。一方の公正証書遺言は、作成に費用や手間がかかり、一度作成すると修正も面倒ですが、一般的に信頼性が高く、また相続手続をスピーディかつ安定的に進めることができます。 いずれの場合であっても、遺言書の内容は専門家のアドバイスの下で慎重に検討し、その後の修正が必要ないようにすることが重要です。 遺言書の作成や一度作成した遺言書の内容の変更についてお困りのことがありましたら、是非弁護士にご相談ください。

この記事の監修者

弁護士 城田 喜朗
弁護士 城田 喜朗第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 犯罪被害者支援委員会委員
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