遺言をしたつもりでも正式な遺言と認められない場合があることについて詳しく解説します!
ざっくりポイント
  • 民法の定める方式に従っていなければ正式な遺言と認められない
  • エンディングノートは正式な遺言ではない
  • ビデオ遺言も正式な遺言ではない
目次

【Cross Talk 】遺言をしたいけどエンディングノートに書いてもいい?

同世代の友人の間で終活が流行っていて、私もエンディングノートを書いておこうと思っています。子どもたちへの遺言も、エンディングノートに書いておけばいいですか?

正式な遺言として認められるのは、民法に規定された方法で作られたものだけです。エンディングノートは民法に規定された方法には当たらないので、正式な遺言として認められません。遺言をしたい場合には、別途遺言書を作成する必要があります。

そうですか。残念ですが、事前にわかってよかったです。

エンディングノートやビデオ遺言は遺言として認められない?

終活ブームの影響もあって、エンディングノートやビデオメッセージ等を利用して、自分の言葉で遺族に死後の希望を伝えることが流行っています。 このようなメッセージに法律上の遺言としての効力が認められるのでしょうか? 今回は、正式な遺言とは何かについて紹介したうえで、エンディングノートやビデオ遺言が正式な遺言と認められるかを解説します。

正式な遺言とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 民法の規定に従ってしたものだけが正式な遺言として認められる
  • 正式な遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がある

本人が残したものでも遺言と認められないものがあるのですか?

正式な遺言と認められるには、民法に規定された通りの方法でしなければなりません。たとえ本人が書いたものでも、民法の方式に違反していれば法律上は遺言としての効力が認められないのです。

遺言は民法に規定された方法でしなければならない

民法は、「遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない」とし(民法967条本文)、それぞれの遺言を作成する際に守らなければならない方式を詳細に定めています。 つまり、民法が定めた方式通りの自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言でなければ、正式な遺言とは認められない(遺言の効力が認められない)のです。

このように遺言について厳格な方式が定められたのは、遺言の効力が発生するのは遺言者の死亡の時から、と規定されている(民法985条1項)ため、効力発生時に遺言の内容である意思表示が遺言者の真意によるものであることを確証できるようにするためであるとされています。

自筆証書遺言

それでは、それぞれの遺言の意味と方式などを確認しましょう。 自筆証書遺言とは、遺言者自身が書く遺言書のことです。

自筆証書遺言は、原則として遺言者が全文、日付、氏名を書き、印鑑を押さなければならないとされています(民法968条1項)。

自筆証書遺言については、近年、大きな法改正が2つありました。
1.相続財産の目録は自書する必要がなくなったことです。 これまではどれだけたくさん財産があっても手書きを要求されたのですが、パソコン等を使用して目録を作ってもいいことになったのです(目録に署名押印することは必要です)。
2.自筆証書遺言の保管制度ができたことです。 これまで自筆証書遺言には、相続人が遺言書を発見できない、一部の相続人が遺言書を破棄・隠匿する、火災などによって滅失する、といったリスクがありました。 法務局が自筆証書遺言を保管する制度ができたことで、このようなリスクを回避することができるようになったのです。

自筆証書遺言には、方式が簡単である、費用がかからない、遺言の存在や内容を秘密にすることができるといったメリットがあります。 他方で、専門家の関与なしに作成することができるため、方式を欠いており遺言としての効力が認められない場合があるというデメリットがあります。また、保管制度の利用はあくまで任意ですから、保管制度を利用していない場合には、依然として遺言を発見できない、相続人による遺言の破棄隠匿、焼失などのリスクは残ります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公正証書(公証人という公務員が作成する文書)による遺言をいいます。 公正証書遺言については、
  • 証人2人以上の立会いがあること
  • 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  • 公証人が遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること
  • 遺言者及び証人が、筆記が正確であることを承認した後、各自署名押印すること
  • 公証人が、その証書は上記4つの方式に従って作ったものであることを付記し、署名押印すること
という厳格な方式が定められています。

公正証書遺言には、公証人という専門家が関与するため、方式を欠いて遺言の効力が認められないという事態を防ぐことができる、公証役場で原本を保管するため滅失等のおそれがないなどのメリットがあります。

他方、手続が複雑であり費用も掛かること、証人に遺言の内容を知られることになるので遺言の存在や内容を秘密にすることができないといったデメリットもあります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしたまま公証人及び証人に遺言書の存在を証明してもらう遺言をいいます。 秘密証書遺言には、
  • 遺言者が証書に署名押印すること
  • 遺言者が証書を封じ、証書に押した印鑑で封印すること
  • 遺言者が公証人一人及び証人二人以上の前に証書を提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述すること
  • 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印すること
という方式が定められています。

秘密証書遺言には、遺言の内容を秘密にすることができる、署名以外は自筆でなくてもよい、変造(改ざん)をふせぐことができるといったメリットがあります。 他方、手続が複雑で費用もかかること、遺言の内容については専門家の関与がないため不明確なものとなるおそれがあること、公証役場が原本を保管してくれるわけではないので滅失のおそれがあることなどのデメリットがあります。

エンディングノートは正式な遺言として認められない

知っておきたい相続問題のポイント
  • エンディングノートは自筆証書遺言、公正証書遺言にはならない
  • 秘密証書遺言になる可能性はあるが内容に問題があるおそれも

遺言の種類はわかりました。エンディングノートに書いただけでは遺言として認められそうにないですね…

そのとおりです。公正証書遺言ではないことは明らかですし、自筆証書遺言にもあたりません。 秘密証書遺言にあたる可能性はないとはいえませんが、内容に問題があるおそれがあります。 遺言をしたい場合は、エンディングノートとは別に遺言書を作成するようにしてください。

エンディングノートとは

エンディングノートとは、自分の判断能力が低下した場合や死亡した場合に備えて、自分の希望を予めまとめておくノートです。 介護の方法や延命治療の希望の有無、葬儀の方法などを記載するのが一般的ですが、自分の財産について記載することも少なくありません。

自分の死後に自分の財産をどうしてほしいかエンディングノートに記載した場合、正式な遺言として認められるでしょうか。

自筆証書遺言にはならない

エンディングノートを書く方の大半が、市販のエンディングノートを購入したり、インターネットで公開されているテンプレートをダウンロードしたりして使用しています。 書くべき項目を整理してくれているので、誰でも手軽に書くことができますし、重要な項目を書き漏らすことを防ぐことができるというメリットがあります。

ただし、何らかのひな形を利用する方法では、(財産目録は別として)全文を自書しなければならないという自筆証書遺言の方式に反することになってしまいます。 そのため、エンディングノートは自筆証書遺言として認められません。

公正証書遺言にはならない

エンディングノートの作成に公証人が関与することはありませんので、公正証書遺言にあたらないことは明らかです。

秘密証書遺言として認められる可能性があるが危険である

秘密証書遺言は、署名以外は自書でなくてもかまわないので、エンディングノートに記載したものであっても署名押印や公証人への申述などの条件を満たせば、秘密証書遺言と認められる余地はあります。 ただし、秘密証書遺言のデメリットでも触れましたが、内容に専門家が関与していないため、遺言の内容が不明確であるとか、法律に違反しているなどの理由で効力が認められない危険があります。

このようにみると、エンディングノートは正式名遺言として認められないものと考え、別途遺言書作成すべきといえます。

ビデオ遺言は正式な遺言として認められない

知っておきたい相続問題のポイント
  • ビデオ遺言は証書とはいえない
  • ビデオ遺言は遺言として認められない

子どもたちへのメッセージをビデオで記録して残そうと思っているのですが、遺言として認められますか?

いわゆるビデオ遺言は正式な遺言と認められません。民法で定める正式な遺言は、いずれも証書、つまり文書で作成することとされているからです。

ビデオ遺言

スマートフォンが普及したこと等によって、誰でも気軽にビデオ(動画)を撮ることができるようになりました。 そのため、残された家族に対するメッセージをビデオで残す方が増えてきました。

ビデオによるメッセージには、家族への感謝の想いや自分の死後どうあってほしいかといった希望を、自分の言葉で語りかけることができ、家族にもその想いが伝わりやすいというメリットがあります。 では、ビデオの中で死後の財産の分け方について言及した場合、そのビデオは正式な遺言として認められるのでしょうか?

自筆証書遺言にはならない

自筆証書遺言と認められるには、証書であること、わかりやすく言えば文書であることが必要です。 ビデオは文書とはいえないので、ビデオ遺言は自筆証書遺言にはなりません。

公正証書遺言にはならない

ビデオ遺言は、公証人が作成する公正証書ではないので、公正証書遺言にはなりません。

秘密諸所遺言にもならない

秘密証書遺言も、証書に署名押印することなど文書を作成することを前提とする方式が定められていますので、ビデオ遺言は秘密証書遺言にもなりません。

まとめ

エンディングノートやビデオメッセージには、手軽であるとか、遺言をした人の思いが直接伝わりやすいといったメリットもありますが、法律上の遺言としての効力は認められません。 正式な遺言をしたい方は、事前に専門家に相談し、民法に規定された方法を確認したうえで、遺言書を作成するようにしてください。

この記事の監修者

弁護士 鎌田 隆博
弁護士 鎌田 隆博東京弁護士会
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