遺言の内容が不明瞭な場合に解釈を巡って争いになることがあるので、その予防策を知っておこう
ざっくりポイント
  • 遺言の記載内容が不明瞭であったとしても、ただちに遺言は無効にならない
  • 遺言の記載内容から遺言者の意思を解釈するので、解釈方法を巡って争いになることも
  • 遺言書の解釈を巡って争いが起きないようにするためのコツ
目次

【Cross Talk 】遺言の解釈を巡って争いになった事例があるって本当?

私は終活の一環として、自分の相続について遺言を残しておきたいと思っています。いろいろ調べていたのですが、遺言書の内容は明確に書かないと、死後に遺言書の解釈を巡って相続人が争います、ということを目にしたのですが、イメージがつかないので教えてもらえますか?

主に自筆証書遺言や秘密証書遺言など、文書内容を専門家が見ない遺言において、遺言書に書かれている内容が不明瞭な場合があり、遺言をどのように解釈するか争ったという事例があります。中には最高裁判所まで争いつづけたものもあるので、実際の事例と対応策についてみてみましょう。

遺言の内容が不明瞭な場合に関係者が争うことがあるので、きちんとした対応策を知っておこう。

遺言は、遺言者の最後の意思を示すものですが、その内容が不明瞭だと相続人同士でトラブルになることがあります。 公正証書遺言を作成した場合、公証人が作成するのでトラブルになることは少ないですが、ご自身だけで自筆証書遺言や秘密証書遺言を作成した場合に、内容が不明瞭になる場合があります。 このような場合、遺言者の最後の意思表示であることを尊重し、解釈によって遺言書の内容を確定して、遺言書を有効なものとして取り扱います。解釈をするということは当然誰かにとって有利・不利という状態も発生しうるので、当事者で争いになることもあります。 実際に最高裁判所まで争われた事例をはじめ、遺言書の解釈を巡って争われた事例を見ながら、どのような対応策をとればこのような争いが生じないで済むのかを確認しましょう。

遺言の解釈を巡る争いって何?最高裁判例を読み解こう

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言の解釈を巡って争われたケース

最高裁判所に行くまで争った事例があるのですね…どのような事例なのでしょうか。

いくつかのケースで最高裁判所まで争われています。ポイントとなる点をいくつか解説しますね。

遺言書の内容が不明瞭な時に問題になるのが、どのように解釈をするか?ということです。 遺言書は、遺言書の内容が不明瞭である場合でも、通常、遺言者の最後の意思表示であることが多いです。そのため、なるべく内容を尊重すべきであり、内容が不明瞭であることだけで直ちに無効となるわけではありません。 そこで、遺言書の内容が不明瞭な場合、遺言者がどのような趣旨で遺言書を作成したのかについて解釈することになります。解釈ということになると、いくつかの考え方を想定できる場合があり、どの考え方を採用するかによって、利害関係者に有利・不利という状況が生じかねません。その結果、争いになることがあります。 実際にその実例として、最高裁判所まで争われた事例を詳しくみてみましょう。

「後継遺贈」の解釈が争われたケース(昭和58年3月18日最高裁判決)

ア 概要 事件の概要は次の通りです。

遺言書を残したAさんには妻Bさん子C・Dさんが居ました。

Aさんはある不動産について ・妻Bに遺贈する ・妻Bの死亡後は子C・Dが分割所有する という遺言をしました(いわゆる「後継ぎ遺贈」)

妻Bは、「妻Bに遺贈する。」旨の記載があったため、単純遺贈があったものと解釈して、不動産の登記をしました。 これに対して子C・Dは、妻Bが死亡することを条件に(停止条件と言われます)、子C・Dに不動産の所有権が移転するという、特殊な遺言だと解釈し、Bさんの不動産登記の抹消を求めたのです。

イ 裁判所の判断 最高裁は「遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたっても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである」と、遺言の解釈方法について説明しています。

そして、最高裁は、本件遺言の文言を単純遺贈(妻Bの死後、子C・Dが分割所有するという条項は、Aの希望でしかない)と解釈する余地もあれば、B死亡時にBが不動産を所有しているのであれば、その所有権が子C・Dに移転する趣旨の遺言と解釈する余地もあるので、その判断のために福岡高裁に差し戻しを行いました。

同様に遺言の解釈を巡って争いになった事例

ほかにも、

・相続人以外の人に「遺言者は法的に定められたる相續人を以って相續を与へる」と記載したものについて、大阪高裁が法定相続人である被相続人の兄弟姉妹に相続させると判断したものを、最高裁が遺贈と解釈する余地があるとして差し戻しをしたもの(最高裁平成17年7月22日判決)

・「財産については私の世話をしてくれた長女のAに全て任せます。」という記載が、遺贈なのか、遺産分割の手続きを長女Aに任せるのか、について争われたケースで、遺贈であると認定したもの(大阪高裁判決平成25年9月5日) などの訴訟があります。

遺言の解釈を巡る争いを生じさせないコツ

知っておきたい相続問題のポイント
  • あいまいな記載は争いのもとになる
  • 遺産の一部のみの遺言は争いのもとになる
  • 自筆証書遺言・秘密証書遺言は弁護士にチェックしてもらおう

最高裁判所まで争われるのはさすがに遺言をした意味が…となりますね。そんな争いは避けたいのですが…。

文言があいまいであったり、遺産の全部を対象にしていなかったりすると争いになりやすいようです。特に自筆証書遺言・秘密証書遺言については、弁護士にチェックしてもらうのが良いといえます。

「せっかく遺言をしたのにそれで争いになるのは嫌だ…」と思う方も多いと思います。 どうすれば、遺言の解釈をめぐって争いになる事態を防げるかについてポイントを知っておきましょう。

主な遺産についてはすべて記載する

まず、遺言書に遺産を誰にどのくらい与えるかを記載する場合は、主な遺産についてはすべて記載するようにしましょう。

財産の一部についてのみ遺言書に記載した場合、相続全体から見てこのような遺産分配をする以上どのような趣旨の遺言なのか?という争いが生じることに繋がります。 また、遺留分など他の争いが発生する可能性があることも遺言書作成の中で検討することができるようになります。

主な遺産についてはすべて記載をし、「その他の遺産については」と網羅をしておくと、はっきりした分配を示すことができます。

不明瞭な書き方をしない

上記の判例ように、争いになる案件の多くは記載の内容が不明瞭な場合です。 例えば、上記平成25年9月5日大阪高裁判決では、「財産については…Aにすべて任せます」との記載しかなく、Aにすべての遺産を遺贈する趣旨なのか、Aに今後の遺産分割手続を主導して行うように委ねた趣旨なのか不明瞭で争いになりました。 遺言書に関する書籍等を参考にし、できるだけ不明瞭な内容にならないように注意をしましょう。

自筆証書遺言を記載する際には弁護士に見てもらうのが良い

普通方式の遺言には公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言があります。

公正証書遺言は作成するのが公証人で、不明瞭な記載はしません。 しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言を作成する場合、自分だけで作成してしまうと、誰かにチェックしてもらう機会がなくなり、記載内容に問題が生じる場合があります。

遺言が不明瞭ではないか、遺言の内容以外にも遺留分や相続税などの問題が生じないかなども含め、弁護士にチェックしてもらうことは重要なことだといえるでしょう。

まとめ

このページでは、遺言の解釈を巡って生じた争いについて知っていただいた上で、そのような遺言にならないためのコツについてお伝えしました。 場合によっては最高裁まで争うことになる不明瞭な遺言をしてしまわないように、弁護士にチェックしてもらうことをお勧めします。

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この記事の監修者

弁護士 水本 佑冬第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 消費者委員会幹事
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