夫婦が連名で遺言書を作成できるかを解説
ざっくりポイント
  • 民法は夫婦などによる共同遺言を禁止している
  • 共同遺言をした場合は遺言書が無効になってしまう
  • 子どもがいない場合は遺言書を作成しておくべき
目次

【Cross Talk 】夫婦が連名で遺言書を作成することは可能?

夫婦で遺言書を作成しておこうと思っています。夫婦が連名で遺言書を作成することはできますか?

同じ遺言書を使って夫婦が遺言書を作成した場合は、遺言書が無効になってしまうので注意しましょう。

夫婦でも連名で遺言書を作成することはできないんですね。夫婦が遺言書を作成する場合の注意点も教えてください!

夫婦が連名で遺言書を作成できないことや、夫婦が遺言書を作成する場合の注意点を解説。

仲の良い夫婦などが、一つの遺言書に連名で遺言書を作成しようと考える場合があります。 しかし、民法は共同遺言を禁止しているので、夫婦であっても一つの遺言書に連名で遺言書を作成することはできません。 そこで今回は、夫婦が連名で遺言書を作成できないことや、夫婦が遺言書を作成する場合の注意点などを解説します。

夫婦連名で遺言書を作成することはできない

知っておきたい相続問題のポイント
  • 民法は夫婦などによる共同遺言を禁止している
  • 共同遺言をした場合は遺言書が無効になってしまう

夫婦連名で遺言書を作成しようと思うのですが、問題はありますか?

民法は共同遺言を禁止しているので、夫婦が同じ遺言書を使って遺言書を作成した場合は、原則として遺言書が無効になってしまいます。

民法975条は共同遺言を禁止している

民法第975条は、2人以上の者が同じ遺言書を用いて遺言書を作成すること(共同遺言)はできない旨を規定しています。 遺言は要式行為(法が定める一定の方式を満たさないと法的な効果が生じない行為)であり、民法が定める方式に従わなければ、遺言としての効果が生じません(民法第960条)。 民法が定める方式を満たさない場合や、民法が禁止する方法で作成した場合は、せっかく遺言書を作成しても、遺言書としての効力が認められないのです。

民法は複数人による共同遺言を禁止しているので、もし共同遺言をした場合は、遺言書としての効力が認められません。 例えば、仲の良い兄と弟がそれぞれの子どもたちに向けて、同一の遺言書を用いて遺言書を作成した場合、共同遺言にあたるので無効になってしまいます。 夫婦仲が良い場合、共同で遺言書を作成しようと思われるかもしれませんが、夫婦であっても共同遺言は禁止されています。

共同遺言が禁止される主な理由は、遺言者(遺言をする人)が遺言書を自由に撤回できるようにするためです。 民法の規定では、遺言者は原則として遺言書を自由に撤回できるとしています(民法第1022条)。

もし共同遺言を有効とすると、各遺言者が遺言書を自由に撤回できなくなる(共同遺言をした他の遺言者の同意が必要になる可能性がある)ので、共同遺言を禁止しているのです。

共同遺言かどうかが問題になった場合

共同遺言かどうかが問題になった場合として、以下のものがあります。

  • 複数の用紙が一体となって閉じられている遺言書(1〜3枚目までが夫名義・4枚目が妻名義など)
  • 内容が独立しており、容易に切り離すことができる場合は、共同遺言に該当しない

  • 複数の遺言書が同じ封筒に入れられている場合
  • 遺言書自体は独立しているので共同遺言にあたらない

  • 同じ証書に書かれた遺言書のうち、一つが要式を欠き無効である場合
  • 要式を欠いていない遺言書についても無効になる

同じ時期に別々に遺言書を作成することは可能

夫婦が共同遺言をすることはできませんが、同じ時期に別々の遺言書を作成することは可能です。 同じ時期に別々の遺言書を作成した場合には、民法が禁止する同一の遺言書には該当しないからです。

例えば、令和4年10月8日に夫と妻がそれぞれ別の遺言書を作成した場合、単に時期が同一なだけであり、遺言書自体は別々なので、同一の遺言書には該当しません。 ただし、令和4年10月8日に夫婦が同一の遺言書を用いて遺言書を作成した場合は、時期だけでなく遺言書も同一なので、原則として同一の遺言書に該当し無効になってしまいます。

夫婦で遺言書を作る場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 子どもがいない場合は遺言書を作成しておくべき
  • 遺言書を作成すると相続トラブルを防止しやすい

私たち夫婦は子どもがいないのですが、遺言書を作成しておくべきでしょうか?

子どもがいない夫婦の場合、父母や兄弟姉妹が相続人になって相続トラブルが発生する可能性があるので、遺言書を作成しておくことをおすすめします。

子どもがいない場合には作っておくべき

子どもがいない夫婦の場合、遺言書を作成しておくことをおすすめします。

遺言書を作成せずに夫婦の一方が亡くなった場合、相手の親族と相続をめぐるトラブルになる可能性があるからです。

子どもがいない夫婦の一方が亡くなると、相続が開始して配偶者(残された夫または妻)が相続人になります。 配偶者以外の相続人には順位があり(1位子ども・2位父母・3位兄弟姉妹)、順位が高い人が優先して相続人になります。 もし夫婦に子どもがいる場合は、配偶者とともに子どもが相続人になります。 この場合、相手の親や兄弟姉妹は相続人にならないので、相手の親族と相続トラブルになる可能性はあまり高くありません。

ところが、夫婦に子どもがいない場合は、子どもが相続人にならないので、夫婦の一方だけでなく、相手の親や兄弟姉妹が相続人になるのです。 例えば、子どものいない夫婦の夫が亡くなって、夫の母が健在な場合は、夫の遺産の相続人になるのは夫の妻と母です。

遺言書がない場合、相続人が遺産分割協議をして遺産の分割方法を決めますが、親族と疎遠だったり、仲が悪かったりした場合は、遺産分割協議でトラブルが生じる可能性があります。 遺言書を作成して、誰に遺産を相続させるかを指定しておけば、相続トラブルを防止しやすくなります。

どちらが先に亡くなるかによって遺産の行き先が異なる

子どもがいない夫婦が遺言書を作成せずに亡くなった場合、どちらが先に亡くなるかによって、遺産の行き先が異なります。

夫が先に亡くなった場合、夫の遺産は妻と、夫の父母または兄弟姉妹が相続します。 妻が先に亡くなった場合、妻の遺産は夫と、妻の父母または兄弟姉妹が相続します。

つまり、夫が先に亡くなると夫の親族が遺産を相続し、妻が先に亡くなると妻の親族が遺産を相続するのです。 遺産の行き先が変わることで、親族との間に相続トラブルが生じる可能性があります。

例えば、長年世話をしてくれた夫の父母に遺産を相続させたいと思っていたところ、妻が先に亡くなったことで、疎遠だった妻の父母が相続人になってしまうなどです。

どちらが先に亡くなるかによって遺産の行き先が変わってしまうので、特定の人に遺産を譲りたい場合は、遺言書で指定しておくことをおすすめします。

まとめ

民法は共同遺言を禁止しているので、夫婦が一つの遺言書に連名で遺言書を作成した場合は、無効になってしまいます。 共同遺言かどうかが問題になった状況として、複数の用紙が一つに閉じられている場合や、同一の遺言書に書かれた遺言書の一つが要式を欠く場合などがあります。 共同遺言に該当すると遺言書が無効になってしまうので、夫婦が共同で遺言書を作成したい場合は、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

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