遺言で寄付をする場合の遺言の書き方・注意点
ざっくりポイント
  • 遺言で寄付を行うことはできる
  • 法律の形式としては「遺贈」となる
  • 遺言で寄付をする場合の注意点
目次

【Cross Talk】慈善団体に遺言で寄付をしたいのだけど…

私も高齢ですので終活をしています。私は結婚せずに一人で暮らしてきたのですが、兄弟とも疎遠であるので、私の遺産について慈善団体に寄付をして役立ててもらいたいと思っています。これは法律上は可能なのでしょうか。

遺贈という方式により可能です。ただ注意点も知っておいてください。

是非教えてください。

遺言で寄付をすることも可能だが注意点も知っておく

自分の財産について死後は慈善団体や自治体に寄付したい、という希望がある方もいるでしょう。遺言で誰かに遺産を寄付するような行為は、法律上は遺贈といい、自由に行うことができます。 とはいえ遺言で自分の財産の全部を寄付するような場合には、受遺者も困ってしまうようなこともあります。遺言で寄付をすることができる根拠と、遺言で遺産を寄付する場合の注意点について知っておきましょう。

遺言で寄付をすることはできる?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 寄付を遺言でする行為は法律上遺贈にあたり誰に対してもすることができる
  • 遺言書には遺贈すると記載する

遺言で寄付をすることができるとのことですが、もう一度きちんと教えていただいていいですか?

遺言で財産を譲り渡す行為は遺贈にあたり、遺言で記載をすれば誰でもできます。

自分の財産を死後誰に譲り渡すかは、遺言で定めることができます。 相続に関する本を読んでいると、跡を継ぐ長男に多めに渡す、孫に渡す、内縁の妻に渡す、といったように、家族に遺産を渡すことを前提とする記載を見かけることが多いと思います。 相談者様のように親しい親族や相続人が居ないような場合には、お世話になった団体や慈善団体などに寄付をしたい…と思う方もいらっしゃるでしょう。

相続人以外の第三者に寄付をする遺贈は可能

相続人以外の慈善団体のような法人や、個人で運営している方に対する寄付などは、遺贈として行うことが可能です。 相続に関する書籍やインターネットコンテンツでは、相続税対策として遺贈をする例をよく見かけるかもしれません。 しかし、家族的な繋がりがない場合でも、遺贈で財産を譲り渡すこと自体は可能です。

遺贈をする場合の遺言書の書き方

遺贈をする際の書き方については、対象になる財産と受け取る人を明確に特定して「遺贈する」という形で記載しましょう。 対象になる財産・法人について明確に記載するというのは何となくわかるかもしれませんが、「遺贈する」という文言で記載する、とお伝えした趣旨は、「相続させる」「寄付する」という表現をしないようにすべきということです。

相続させるのは相続人に対する表現であり、寄付というのは法律上の言葉ではないので、いずれもストレートにあてはまりません。 記載内容からは寄付する趣旨が伝わる場合であっても、遺言に関する争いを発生させないために、明確に記載するようにしましょう。 相手が法人である場合には、法人の種類(株式会社・社会福祉法人など)もきちんと記載するようにしましょう。 任意の団体の場合には、代表者の氏名・住所をきちんと記載するようにしましょう。

遺言で寄付をする場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言で寄付(遺贈)をする場合の注意点について

遺言で遺贈することができるのはわかりました。何か注意点はありますか?

いくつかあるので確認しておきましょう。

遺言で寄付をすることは遺贈としてできるのですが、この場合の注意点について確認しましょう。

相続人に遺言の無効を主張されないためには公正証書遺言にしておくことが望ましい

まず、相続人からすれば自分達の相続分をなくす・減らすような遺言があるような場合には、本当にそんな遺言書があったの?と疑問に思い、場合によってはそのような遺言書は無効だ!と主張してくる可能性があります。 遺言書の無効は、自筆証書遺言の場合に主張されることが多いため、公正証書遺言であれば、公証人が本人とやりとりをしながら作成することから、無効を主張されるおそれが少ないといえます。 そのため、可能な限りで公正証書遺言を作成しましょう。

相続人がいる場合の遺留分に注意する

兄弟姉妹以外の相続人がいる場合には遺留分があります。 遺留分とは、相続人が受遺者に対して主張することができる最低限の権利のことをいい、相続分の1/2(直系尊属のみが相続人である場合には1/3)にあたる金銭の請求を受遺者にすることができます(遺留分侵害額請求権)。 遺留分を侵害する遺言であっても遺言が無効になるわけではありませんが、受遺者として寄付を受けた人が遺留分侵害額請求を受けて金銭を支払うということになります。 金銭ではない遺産の割合が多いと(不動産など)、支払いきれないということになりかねません。 そのため、遺留分を考慮した遺贈をすることは必要不可欠といえます。

相続人との交渉などを必要とする「包括遺贈」はせずに「特定遺贈」を

遺贈には、特定の財産の遺贈をする「特定遺贈」と、割合を示して行う「包括遺贈」があります。 たとえばA不動産を寄付するという方法で行う場合が特定遺贈で、遺産のうち1/8を遺贈するという方法で行う場合が包括遺贈です。 包括遺贈をした場合には、相続人との間で、遺産に対する処遇について話し合いをしなければならなくなります。 寄付を受けた第三者が相続人と遺産の処遇について話し合う…というのはやはり負担であることが多いです。 そのため、遺贈を行う場合には、特定遺贈で行うことが望ましいといえるでしょう。

相続税との関係

遺贈で財産を受け取った場合に、遺産が相続税の基礎控除を超える場合には、受遺者は相続税の申告・納税をしなければいけなくなります。 相続税の申告は手続きが非常に面倒で、税理士に依頼する方も多くいらっしゃいます。

受け取る人のことも考え、場合によっては事前に相談を

以上のようなことを考えると、遺贈をするような場合には、受遺者に事前に相談をしておくことが望ましいといえます。 例えば、国境なき医師団の場合は
  • 換価が難しい山林や農地など
  • 換価が難しい地方のリゾートマンションなど
  • 権利関係が複雑な不動産
  • 未公開株・同族株
といったものは受け取ることができないとホームページに記載されています。 事前に受遺者の方と連絡をして、遺贈についての意向を聞いておくことが重要であるといえるでしょう。

まとめ

このページでは、遺言で寄付ができるのかについてお伝えしてきました。 遺言による寄付は、遺贈という法律形式となり可能であるということを確認いただいた上で、遺贈を受ける方に配慮した遺言を作成すべきであるといえます。 遺言の細かい文言については、専門家である弁護士に相談しながら作成することをお勧めします。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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