受遺者が遺言者の死亡以前に死亡していた場合の遺言書の効力について解説します!
ざっくりポイント
  • 遺言者の死亡以前に受遺者が死亡していた場合、遺贈は無効になる
  • 無効になった遺贈の対象とされた財産は法定相続になる
  • 無効になる事態を避けるには予備的遺言をする
目次

【Cross Talk 】遺言で遺産をもらうはずだった人が亡くなったらどうなる?その人の相続人がもらうことになる?

私には妻と3人の子どもがいまして、私の死後に遺産でもめないように遺言を残しておこうと思っています。 妻には私の死後も安心して暮らせるように、住み慣れた自宅や預貯金を相続させたいのですが、万が一、私より先に妻が亡くなった場合、遺言はどうなるのでしょうか?

遺言によって財産を譲り受けるはずの方が、遺言をした方より先に亡くなった場合、その部分の遺言は無効になります。 もし奥様が先に亡くなった場合に財産を承継させたい方がいるのであれば、そのことも遺言で定めておく必要があります。

無効になるのですね。妻が先に亡くなった場合にどうするかも考えるようにします。

受遺者が死亡した場合の遺贈の効力とリスクを避ける方法とは?

「終活」という言葉が定着したように、自分の死後のことを自分で決めておきたいと考える方が増えています。自分の財産を誰にどのように承継させるかについて遺言を残すことも、その一環です。

近年の民法改正によって、遺言者自身が手書きで作成する遺言(自筆証書遺言といいます)の一部にパソコン・ワープロ等が使用できるようになったり、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度ができたりしたことから、今後、遺言を遺される方はますます増えていくものと考えられます。 ただ、遺言は将来(遺言者が死亡したとき)に効力を生じるもので、将来のことは誰にもわかりませんから、遺言で財産を譲ろうとした相手(受遺者といいます)が先に亡くなってしまうこともあります。

今回は、そのような場合に遺言の効力がどうなるかなど、受遺者が先に死亡した場合のリスクを避ける方法について解説します。

遺言者が死亡する以前に受遺者が死亡している場合にはどうなるのか

知っておきたい相続問題のポイント
  • 受遺者が遺言者の死亡以前に死亡している場合の遺贈は無効となる
  • 遺贈の対象であった財産は法定相続となる

私より先に妻が亡くなった場合に遺言が無効になるのなら、自宅や預貯金はどうなるのですか。

遺言のうち奥様への遺贈の部分だけが無効になり、奥様に遺贈するはずだった自宅や預貯金は法定相続の対象になります。 遺言に他の方への遺贈も含まれる場合、その遺贈の効力は奥様が亡くなられたとしても影響を受けません。

受遺者が死亡している場合にはその範囲で遺言の効力はない

遺言者は、遺言をすることで、自分の死後、自分の財産を誰にどのように承継させるかを決めることができます。 このような、遺言によって財産を譲ることを、「遺贈」といいます。 遺言をする方は、遺贈を受ける方(受遺者)が自分よりも長生きすることを想定して遺贈をするはずです。 しかし、遺言の効力が発生するのは、遺言書を作成した時ではなく、「遺言者の死亡の時」とされています(民法985条1項)。

将来のことは誰にもわかりませんから、たとえ受遺者が遺言者の子世代、孫世代の方であったとしても、病気、事故、天災などによって、受遺者が遺言者より先に亡くなる可能性は否定できません。 そこで、受遺者が遺言者より先に死亡した場合、遺贈の効力がどうなるかが問題になるのです。 この点について民法は、「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」と定めています(民法994条1項)。死亡「以前」とありますから、遺言者と受遺者が同時に死亡したときを含みます。

したがって、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡していた場合、その遺贈は無効ということになります。

遺言自体は無効になるわけではない

民法994条1項は、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡していた場合にその遺贈を無効とするもので、遺言自体が無効になるわけではありません。

一つの遺言書で、複数の遺贈がなされることは珍しくありません。たとえば、Aには甲不動産を、Bには乙不動産を、Cには預貯金をそれぞれ遺贈するというような遺言です。 このような遺言がなされた場合にAが遺言者の死亡以前に死亡したとすると、Aへの甲不動産の遺贈のみが無効となり、Bへの乙不動産、Cへの預貯金の遺贈は有効のままです。

亡くなった人の分は法定相続となる

では、Aへ遺贈されるはずだった甲不動産は誰が取得することになるのでしょうか。 この点については、Aが亡くなったのだからAの相続人が取得するのではないかと考えている方が少なくないかもしれません。しかし、これは完全に誤解です。 Aへの甲不動産の遺贈が無効になるということは、甲不動産については遺言で何も決められていないということになります。そうなると、甲不動産は法定相続の対象ということになるのです。

受遺者が亡くなった場合に備えた予備的遺言とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 受遺者が亡くなった場合に法定相続と異なる承継をさせたい場合がある
  • 遺言書に予備的遺言を盛り込んでおく

亡くなった人の分は法定相続になるということですが、法定相続と違う分け方はできないのですか?

遺言書に、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡していたときは、別の人に遺贈するという条項を入れておくことで、法定相続にせずに自分の希望する人に財産を承継させることができます。

先ほどの例で説明した通り、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したことにより遺贈が無効になった場合、無効になった遺贈の対象とされた財産は法定相続の対象になります。 しかし、遺言者が、法定相続を希望しないケースもあります。

たとえば、遺言者が、事業用の財産や先祖代々の土地を後継者である長男に承継させたい、しかし万が一長男が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、長男の子に上記財産を承継させたいと考えている場合などが考えられます。

このような場合に長男を受遺者とする遺贈をするだけでは、長男が遺言者の死亡以前に死亡したときは、長男以外の子を含めた法定相続になってしまいます。 そのような事態を避けるには、受遺者に対する遺贈の条項に加えて、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、その財産を別の者に遺贈するという趣旨の条項を設けておくのが効果的です。 このように、本来の遺言が無効になった場合に備えてあらかじめ本来の遺言と異なる内容の取り決めをしておくことを、予備的遺言と言います。 上記の孫に承継させたい場合であれば、遺言書に次のように記載します。

第〇条 遺言者は、遺言者が有する○○の財産を、長男A(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。 第〇条 万が一、遺言者より前にまたは遺言者と同時に長男Aが死亡した場合、前条記載の財産は孫B(平成○○年○○月○○日生)に相続させる。

これによって、遺言者は、自分の財産を第一次的には長男に、長男が死亡している場合には長男の子に、承継させることができるのです。

まとめ

受遺者が遺言者の死亡以前に死亡することは決して珍しいことではありません。 自分の財産を希望する通りの方に承継させたいのであれば、予備的遺言を活用して受遺者が先に、あるいは同時に死亡した場合のリスクを避ける方策を取っておくといいでしょう。 自分の希望を実現する遺言書が書けるか不安だという方には、相続問題に詳しい弁護士に遺言書の作成を依頼することをお勧めします。

この記事の監修者

弁護士 手柴 正行
弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
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