遺言に期限があるのか、遺言が古すぎて問題がある場合の処理について確認しましょう
ざっくりポイント
  • 遺言に有効期限はない
  • 遺言で指定した財産がすでに無いような場合の処理
  • 古い遺言で相続人が承諾できないようなものである場合に遺言と違う遺産分割をする場合の処理
目次

【Cross Talk】すごく古い遺言書が出てきたんだけどこれって期限があるの?

先日父がなくなり相続をすることになりました。遺品を整理していると遺言書を発見したんですが、遺言書を作った日付が15年も前で、もう父が所有していない不動産が含まれています。遺言書って作成後いつまで有効っていう期限のようなものはあるんでしょうか?この遺言は有効ですか?

普通方式で作成された遺言には特に期限はありませんので有効ですね。すでに手放した不動産の部分については遺言を撤回したものと見ることになっています。詳しい状況を教えてもらえますか?

古い遺言書でも期限はなく有効。遺言書作成後に事情が変わってきた場合についても確認。

昨今はいわゆる終活を積極的に行う方が増えその一環として遺言を作成する方が増えました。そのため遺言書を作成してから長期間経つということも珍しくなくなりました。 普通方式の遺言は作成してから何年で効力がなくなるという期限はなく、撤回されない限り有効です。遺言書を作成してから長期間経過後に、事情が変わって遺言書の内容が適切ではなくなったということも発生します。 状況に応じて法律の規定や対応方法について確認しましょう。

遺言書に有効期限はあるのか?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書に有効期限はない
  • 遺言が古くなって内容が合わなくなっているときの処理

まず、遺言には有効期限がないということと、遺言書の内容にある財産がもうないときの考え方について教えてください。

普通方式の遺言には有効期限に関する定めがないので、遺言として有効に成立しているものであれば何年前のものでも効果が発生します。ただ、その後に遺言の目的物を処分している場合や、別の遺言をしている場合などもあるでしょう。そのようなケースにおいて、法律がどうなっているかを知っておいてください。

遺言書に有効期限はあるのでしょうか。

普通方式の遺言に有効期限はない

まず、普通方式の遺言には有効期限はありません。 遺言には普通方式と特別方式があります。特別方式というのは、通常通りの遺言をしている余裕が無い時にする遺言で、要件を緩やかにしてする遺言をいい、普通方式の遺言をすることができるようになってから6カ月間生存すると当然に失効します(民法973条)。 このような特殊な遺言ではない普通方式による遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)の場合にはこのような期限を定めるものはありませんので、本件の相談者のケースのように15年前の遺言でも普通方式の遺言の要件を満たしている限り有効であるということになります。

現在持っていない財産についての記載をどう解釈するか

本件の相談者のケースでは遺言をしてから15年もの期間が経過しています。 たとえば、遺言では自宅は長男に相続させると記載してあったような場合に、15年の間に本人の体が不自由になり自宅を売却して施設に移る、ということがあったとします。遺言書は有効でも、目的物の不動産はもうないという状態なのですが、このような場合にはどのように処理されるのでしょうか。

遺言をした後に目的物を処分して手元にないような場合には、不動産についての遺言の部分は撤回したものと扱われます(民法1023条2項)。ですので、有効とされる遺言は処分された目的物以外の部分のみということになります。 仮に、自宅を売却して、別の住居を手に入れていたとしても、その別の住居を長男が相続する、といった扱いにはならないので注意をしましょう。

新しい遺言がある場合、古い遺言には効力があるのか

もう一つ検討しておきたいのが、遺言が複数ある場合です。 たとえば、一つ目の遺言でA銀行の銀行預金は妻に、二つ目の遺言でA銀行の銀行預金は長男にという、相反する規定がある場合には、どの遺言に従えばよいのでしょうか。 まず、遺言書が複数ある場合でも、それぞれは独立して有効です。

しかし、上記の事例のように、それぞれの内容が抵触するときには、古い遺言の内容については撤回されたものとして取り扱われ、新しい遺言のものが有効とされます(民法1023条1項)。 ですので、上記の例ですと、A銀行の銀行預金は長男が相続することになります。 財産の変動によって遺言の内容が必ずしも適切なままではないような場合もあるので、遺産に大きな変動がある場合には遺言の書きかえが必要か弁護士と相談するのが良いといえます。

遺言の内容が古すぎて相続人全員が納得できないような場合の対処法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言がある場合は法定相続分の規定に優先する
  • 利害関係人全員が納得していれば遺言と異なる遺産分割協議もできる

古い遺言が有効なのはわかりました。しかしその古い遺言のままで分けると、現状相続人である母が全財産を受け継ぐ形になってしまいます。母も私もこの遺言の通りにするのはちょっと…という意見で一致しています。遺言は絶対なのですか?

受遺者・遺言執行者などが居ない場合であれば、全員が納得していれば、遺言の内容と異なる遺産分割も可能です。受遺者・遺言執行者がいる場合にはそれらの人の了承もとりましょう。

では、古い遺言が有効であるとして、必ずその遺言どおりに行わなければならないのでしょうか。

遺言の効力の原則

ある人が亡くなると相続が始まります。 この場合の遺産の分配については民法が規定をしていますが、遺言がある場合には遺言が優先します。 もし遺言がすべての財産についての記載をしていない場合には、遺言による分配を行った上で、遺言に記載のない財産について遺産分割を行う形になります。

相続人全員で遺言と違う遺産分割協議ができる場合がある

しかし、相談者のケースのように、15年前にかかれた遺言書に基づいて遺産分配を行うと、結論として妥当ではないケースもあるでしょう。 このような場合、相続人側もそんな遺言内容は望んでいない、ということにもなりかねません。 遺言と異なる遺産分割協議に相続人全員が合意していれば、遺言と異なる内容の遺産分割協議もできるとされています。 ただし、遺贈を受けた受遺者や遺言執行者がいる場合には、その人たちの同意も必要となりますので注意が必要です。

まとめ

このページでは、遺言に期限があるのか、古い遺言の内容が妥当でない場合の処理についてお伝えしてきました。普通方式でされた遺言であれば期限はない、と考えていただいて良いでしょう。 その内容のせいで相続がうまくいかない、という場合には弁護士に相談するようにしましょう。

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この記事の監修者

弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
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