相続財産の代償財産とは?相続財産・遺産分割対象財産になる?
ざっくりポイント
  • 相続開始後に相続財産に代わって取得した財産を「代償財産」という
  • 代償財産は相続財産ではない
  • 代償財産は原則として遺産分割対象財産ではないが、一定の場合には遺産分割対象財産となる
目次

【Cross Talk】遺産分割前に相続財産を売却したら売却代金はどうなる?

先日、父が亡くなりました。まだ遺産分割は終わっていませんが、父の家の管理ができないので、とりあえず家を売却することにし、手続を兄に任せました。 無事に売却できたので売却代金を分けようと提案したところ、兄は売却代金も遺産だからほかの遺産とあわせて遺産分割をすると言われました。兄の言い分が正しいのでしょうか?

いわゆる相続財産の代償財産の問題ですね。ご相談のような場合、売却代金は原則として遺産分割対象財産にならず、各相続人が持分に応じた代金債権を取得するとされています。 ただし、相続人間で遺産分割の対象とする合意がなされた場合は、例外的に遺産分割対象財産となります。

合意したかどうかがポイントなんですね。

代償財産も遺産分割協議が必要になる?

相続開始後、住む人のいなくなった不動産を売却する等、相続財産を処分することは珍しくありません。 相続財産を処分することで得た財産を代償財産といいますが、代償財産は相続においてどのように扱われるのでしょうか。今回は、相続財産の代償財産が相続財産、遺産分割対象財産になるかについて解説します。

相続財産の代償財産とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 代償財産とは相続財産の代わりに得た財産をいう
  • 相続財産の売却代金、保険金などが代償財産にあたる

代償財産というのは聞きなれない言葉ですが、どんなものをいうのですか?

相続財産の代わりに取得した財産のことを、代償財産といいます。ご相談のような相続財産を売却した場合の売却代金が典型的な代償財産です。

代償財産とは

代償財産とは、相続開始時に存在した財産が滅失等したことによって代わりに取得した財産をいいます。 相続開始時(被相続人の死亡時)から遺産分割が終わるまでにはそれなりの時間がかかることが多いので、相続開始時に存在した財産を処分等することは珍しくありません。 そのため、代償財産と遺産分割との関係をどのように考えるかが問題となるのです。

相続財産の代償財産の具体例

代償財産の具体例としてまず考えられるのが、相続開始時に存在した財産を売却した場合の代金債権です。 たとえば、相続人が遠方に居住しており、被相続人が単身生活していた建物の管理ができない場合などに、遺産分割に先行して建物を売却するといったことは珍しくないでしょう。 それ以外にも、相続開始時に存在した建物が火災で滅失した場合の損害賠償請求権や保険金請求権などが考えられます。

相続財産の代償財産は遺産分割対象財産となるか

知っておきたい相続問題のポイント
  • 代償財産は相続財産ではない
  • 代償財産が、売却代金などの相続人の意思に基づく相続財産の処分の場合、相続人の合意があるなど特別の事情のない限り遺産分割対象財産にもならない
  • 代償財産が、損害賠償請求権や保険金請求兼の場合、遺産分割協議の対象とはならない。

代償財産がどんなものかはわかりましたが、代償財産があるときはどうすればいいんですか?ほかの遺産と同じように遺産分割をしなくてもいいんですか?

代償財産は相続財産ではありませんし、原則として遺産分割対象財産にもなりません。ですから各相続人が持分に応じて代償財産を取得することになります。

相続財産の代償財産は相続財産ではない

相続財産とは、相続開始時に被相続人が有していた一切の権利義務のことをいいます。 相続財産の代償財産は、相続開始後に相続財産に代わって得られる財産ですから、相続財産そのものではありません。

原則として相続財産の代償財産は遺産分割対象財産とならない

相続財産の代償財産が遺産分割対象財産になるかについて、最高裁は、「共同相続人が全員の合意によって遺産分割前に遺産を構成する特定不動産を第三者に売却したときは、その不動産は遺産分割の対象から逸出し、各相続人は第三者に対し持分に応じた代金債権を取得し、これを個々に請求することができるものと解すべき」として、これを否定しています(最判昭和52・9・19判時868・29)。

相続人の一人が相続財産の売却手続きをし、すでに代金を受領していた場合、その相続人は共同相続人全員の合意に基づき、自己の持分については本人として、その他の共同相続人の持分については委任による代理人としてこれを売却し、遺産分割前に売却代金を受領したことになります。 したがって、他の相続人は、委任に基づき売却代金を受領した相続人に対し、その引渡を請求することができます(民法646条1項参照)。

代償財産が,売却代金などの相続人の意思に基づく相続財産の処分の場合、相続人間で遺産分割対象財産とする旨の合意があれば遺産分割対象財産となる

「原則として相続財産の代償財産は遺産分割対象財産とならない」で解説したとおり、代償財産は原則として遺産分割対象財産にはなりません。

しかし、代償財産たる売却代金は金銭(あるいは金銭債権)であることが多く、金銭(あるいは金銭債権)は遺産分割において各自の最終的な取得分を決めるうえで非常に有益な存在となります(たとえば、遺産に不動産が複数ある場合、金銭がないと相続分どおりに分割することは難しいでしょう)。 そこで、相続人の合意がある場合には、相続財産の代償財産も遺産分割対象財産とすることができるとされています。

最高裁も、「共有持分権を有する共同相続人全員によって他に売却された右各土地は遺産分割の対象たる相続財産から逸出するとともに、その売却代金は、これを一括して共同相続人の一人に保管させて遺産分割の対象に含める合意をするなどの特別の事情のない限り、相続財産には加えられず、共同相続人が各持分に応じて個々にこれを分割取得すべきものである」として、相続人が合意するなど特別の事情がある場合には代償財産が遺産分割対象財産になる余地を認めています(最判昭和54・2・22判時923・77)。

代償財産が損害賠償請求権や保険金請求兼の場合、遺産分割協議の対象とはならない

例外的に遺産分割の対象となるのは、その処分が相続人の意思に基づく処分である場合です。 そのため、相続財産である不動産が火災によって滅失した場合の、損害賠償請求権や保険金請求兼である場合には、相続人の合意によっても遺産分割の対象とすることはできません。この点に関しては、まだ最高裁判所の判例がないため、今後認められる可能性がまったくないというわけではありません。

まとめ

合意の有無によって相続財産の代償財産が遺産分割対象財産になるかどうかの結論が変わってしまいます。 遺産分割前の相続財産の売却等を検討している方は、この点に注意したうえで他の相続人と協議するようにしてください。

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この記事の監修者

弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
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